高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

インドのバンガロール成長の秘密は「地の利」にあり

高城未来研究所【Future Report】Vol.385(2018年11月2日発行)より

今週は、インドのバンガロールにいます。

2028年には中国を抜く人口大国インドのなかでも第三の規模を誇る巨大都市バンガロールは、近年、IT産業が活況なことから「インドのシリコンバレー」と呼ばれていますが、カリフォルニアとインドでは、実態が大きくかけ離れているのは、言うまでもありません。

風光明媚なシリコンバレーに対して、バンガロールは、南アジア有数の大渋滞が有名で(逆走行車が日常です)、環境汚染も相当ひどい、まだまだカオスな街です。
しかし、世界有数のITオフショアであるのは紛れもない事実で、世界全体を見たソフトウェア輸出でも、バンガロールのシェアはダントツです。

いったい、なぜ、バンガロールで、これほどIT産業が盛んになったのでしょうか?

その理由の第一は、インドでは英語が通じることががあげられます。
EU全体より、やや小さい程度の国土を誇る巨大なインドは、国家が正式に認めた指定言語だけでも20以上あります(方言を入れると2000を超えます)。
全土ではヒンドゥーを話す人たちが大半を占めますが、バンガロールでは、カンナダ語が標準語のため、首都デリーから来たビジネスマン同士との会話は、英語です。
このため、インド人の大半が、準公用語として英語を話すことから、米国のコールセンターの下請け業務を長年続けてきました。
米国のカスタマーがサポートに電話すると、「地の利」を使った時差をうまく利用しながら、実はインドに転送されていました。

このコールセンターからIT都市へと発展したのが、バンガロールです。

バンガロールには、もともと海軍などの開発拠点があり、この背景には、パキスタンや中国といったインドと緊張関係のある国々から地理的に離れているから選ばれた「地の利」がありました。

また、灼熱で知られるインドですが、バンガロールは標高が1000メートル近くと高く、インドの中では気温が温暖です。
この温暖な気候を求めて、優秀なプログラマーがバンガロールにやってきやすい「地の利」もあります。

そして、首都であるデリーから離れているので、政府の目が届きづらく、結果、若者が自由にのびのびと過ごせる空気感がありました。

つまり、バンガロールがIT都市として成功したのは、「地の利」なのです。

同じように、近年急速に発展した中国の深センも、北京から遠く、また温暖な気候で、香港に隣接して自由な空気がある「地の利」が大きな要因でした。

このようなことから、産業集積地を作るのは「企画」や「土地への思い」、そして「予算」ではなく、実は「地の利」こそが大事である、と理解できます。
インターネットが世界中に行き渡り、「どこでもフラット」になった結果、残ったのは「地の利」だったのです。

バンガロールは、21世紀に入ってからの成長が目覚ましく、インドを代表するIT企業インフォシスの2000年当時の従業員数は5000人でしたが、いまは20万人規模まで急速に膨らんでいます。
現在、バンガロールは、赤ちゃんからお年寄りまで入れた人口の5%がプログラマーで、世界最大数のIT従事者を誇るまで成長。
いまも人件費が安いため、コードを米国で書いてもインドで書いても、所要時間はほぼ同じで、時間あたりの支払額はインドのほうがずっと安いので、当面企業はインドに発注するでしょうから、まだまだ勢いが止まりそうにありません。
実は、ハリウッド映画のVFXも、クレジットは米国の製作会社でも、大半はインドで作られていることが少なくありません。
アメリカの反対側にあるため、双方でソフトウェア開発を24時間行えるのも特徴です。

また、IT産業は、インド特有のカースト制度の外側にあることから、下層カーストからプログラマーを目指す人が多いのも事実です。
インドでは、「一応」カースト制度は廃止されていますが、民間に根強く残っているのは、社会的事実だと思います。

さて、久しぶりにバンガーロールを訪れましたが、驚くのは、料金交渉が必要なアジア特有の三輪タクシー「リクシャー」(昔の人力車)が、UBERで呼べるようになったことです!

以前、シェアライドで、その都市の10年後がわかるとお話ししましたように、ここには、まだまだ成長する未来が見えます。
ただ、いまと同じように、未来もカオスだと思いますね、インド人はインド人ですから。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.385 2018年11月2日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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