※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2019年2月15日 Vol.209 <増幅するキモチ号>より

1月末、SNS上で「WANNA KICKS」というiPhoneアプリがバズった。開発元はWannabyという企業。ショッピング市場を見据えたARアプリである。
内容は簡単。スニーカーの「試着」アプリである。ARKitに対応したiOSデバイスで動作する。使い方は簡単だ。アプリを開くとカメラが動き出す。それで自分の足を写すと、選んだスニーカーを「足に履いた」映像が表示される仕組みである。もちろん、スニーカーはすべて実在のものだ。実際に試着した時のように、足を動かせば側面や底面も見える。要は、足の形を画像認識し、そこに3Dモデルのスニーカーを重ねることで、こういう映像を実現しているのだ。
・WANNA KICKSを使っている時の画面。足にそのスニーカーを履いている様子がARで再現される。

アプリダウンロードリンク(無料)
https://itunes.apple.com/jp/app/wanna-kicks/id1444049305?mt=8
現状はデモのようなもので、ここから直接スニーカーを買えるわけではない。アプリ内のリンクも、スニーカーのメーカーへのリンクになっている。だが、これがショッピングサイトやオークションサイトと直結したらどうなるだろう? もしくは、この機能を各スニーカーメーカーが自社のアプリに組み込んでいったら?
実際、同社はスニーカーだけにこだわっているわけではない。すでに、アクセサリーやジュエリーで同じことをするアプリを開発中である、と公表している。
・Wannaby社ウェブより。ジュエリーを試着するアプリもすでに開発中

同社は昨年夏、マニキュアのチェックをする「WANNA NAIL」というアプリを公表済みで、ORLYというネイルブランドと提携し、アプリからネイルを試して買う、というアプローチを実現している。
・WANNA NAIL。おじさんの指でも一瞬でネイルが塗られる。

ここで冷静になるべき点がひとつある。実際には、このアプリはARでうまく重ねてはいるものの、「実際のサイズに合わせている」わけではない、ということだ。実際の靴は、足のサイズに完璧に合うことは少ない。出来合いのサイズから選ぶからだ。だがこのARアプリでは、足のサイズにあわせて映像を出しているので、実際には、ここまでピッタリとサイズが合うわけではないだろう。ネイルの場合には自分で塗るからそれでもいいが、スニーカーの場合、「仮想の靴が自分の足のサイズに合わせて表示されている」ので、実際に試着した場合とはちょっと違い、履き心地の点は保証できない。
だが、それでもいいのだ。
衣服にとってサイズは重要だ。一方で、サイズよりも「実際につけてみるとどうなのか」がまず重要なものもある。靴やアクセサリーは、画像認識による位置合わせも比較的簡単だし、「今の自分に合わせて、感じを確かめる」だけでも大きな価値がある。スマホで全身を撮るのは意外と大変だが、足や手を撮るだけならすぐに、誰でもできる。
すなわち、「人の体の末端につけるものの試着」は、現在のスマホARがもっとも向いたものなのだ。帽子などもいけそうに思うが、帽子の場合、髪が重ねた映像からはみ出る可能性が高く、試着としてはイマイチ、というオチになるだろう。あとはメガネくらいだろうか。こちらは、メガネ店向けにそうしたソリューション提案はすでにあるので、似たことをアプリでやるのも難しくないはずだ。
画像認識もARも、まだ理想には程遠い。そのために、ビジネスとしてうまく生かすには工夫も必要だ。Wannabyは、ARの理想と現実をうまく使い、立ち回っている印象を受ける。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
2019年2月15日 Vol.209 <増幅するキモチ号> 目次
01 論壇【小寺】
「がっかり発言」に見る、暴走する正義
02 余談【西田】
「試着はAR」の時代は来るか
03 対談【西田】
石川温さんに聞く「4G→5G時代の虚実」(1)
04 過去記事【小寺】
さよならiPod
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。 ご購読・詳細はこちらから!
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