やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

現代日本の結婚観と現実の夫婦の姿



 先日、文春オンラインの連載で、婚活市場のミスマッチについて触れたところ大変ご反響をいただいて、「まあ、連載だしこのぐらいの浅堀がちょうどいいんじゃないか」と思って面白おかしく書き流したら、みんな結婚観についてはかなり一家言あるようで興味深かったわけです。

育児に労働に駆り出され疲れ果てる女性と、所得が低いと怒られ馬鹿にされる男性

 当たり前ですが、いくら最近離婚が増えてきたとは言え、結婚をするにあたっては「この人となら」と思える人であってほしい、そういう人と一生添い遂げたい、良い家庭を築きたい、子供は何人欲しい、一緒に墓に入りたいと思っているわけです。もうかなり昔ですが、幸せな結婚像とはなんですかという問において、結婚願望のある男女は実のところ戦後の恋愛結婚も見合い婚も「夫婦仲良く」とか「お互いに尊敬できる関係を」などの人間の内面性を重視する回答がほぼ大多数なのであります。そりゃ嫌いな人とは家庭生活を送っていくことなどできませんから、相手の良いところを見つけて愛し合って生きることの大事さは、結婚までは重く考える傾向が強いのだろうと思います。

 一方、現実はなかなか厳しく、男性の稼ぎが足りないとか、育児がうまくいかないとか、様々な家庭内の危機に直面したときに現在の核家族の形態ででは夫婦の衝突の際の「バッファ」がないため、ちょっとした喧嘩が譲れない一戦となり、そのまま性格のすれ違いを表出させて離婚に至ってしまうケースは後を絶ちません。

 この結婚前の幸福と結婚生活の惨状の落差というのは、夫婦関係を考える上でどのような協力関係を事前に承知していたかで大きく変わることが分かってきています。単純な話、結婚前に家事分担についての話し合いや、対外的な付き合いについての簡単な合意があった夫婦は長続きする傾向が高くあります。これは所得の大小に関係はありません。

 逆にそういうすれ違いを結婚後に夫婦で生む理由は、もちろん直接的にはコミュニケーション不足であり、性格の不一致などが挙げられるのですが、大元の離婚原因を追跡調査してみると、実は所与の結婚相手選びの条件出しのところからボタンをかけちがっているケースが多く見られます。特に、結婚相談所で幸運にも成立したカップルが5年以内に離婚するケースでは、男性は女性の「年齢」「顔と胸」「愛嬌のあるなし」という属性が上位に来るのに対し、女性は男性の「年齢」「所得や社会的地位」を上位にした人が離婚しやすい傾向があります。

 逆に、男女ともに結婚できる属性としては「子供がほしいか」「優しさ」「良好な家族関係」を求める人は、10歳以上の年の差婚でも再婚連れ子ありでも継続して夫婦関係をやっていける属性です。相手の人間性を見て選びたいという人ほど長く結婚生活が送れる可能性が高まるというのは、ストレス耐性も含む精神の安定を家庭に求められる状況にするのに努力を惜しまないというのは頷けます。

 私の同年代や少し上で、いまなお婚活をやっている45歳から50歳前後の紳士がたくさんいるのですが、みなそれなりに収入も資産もある悠々自適な面々ばかりです。女性が希望の上位に掲げる「年収や所得」「社会的地位」という点では申し分ない人たちなのに、なぜか結婚相手に恵まれないのは、男性の側が「俺ぐらいの所得があるんだから、20代中盤ぐらいの若い女と結婚したい。そういう女がなびかないなら、もう一生独身で良い」と割り切る傾向が強いのです。そういう魚のいない漁場でずっと針を垂れて「世の中にはいい女がいないなあ」とぼやいている彼らを横目で見ながら子育てや介護に奔走している身からすると、結婚適齢期というのはたとえ人間の平均寿命が100歳になっても変わらずあるものなのだろうなあと強く感じます。

 もちろん、女性の側にもオールドミスの高望みという部分で、男性側の根強いニーズである「若い女であって欲しい」というところからいきなりこぼれ落ちると、妥協して良い家庭を築ける女性と結婚したいと考える、低所得のいけてない男性しか残っていません。

 どうもこの世の中というのはうまくマッチングしないようにできているんじゃないかと思うぐらいに、弱い男性と行き遅れた女性があぶれるようにできているようです。そういう状況で「婚姻率を増やさないと日本の少子化は解決しない」とか「広い家の持てる経済力を若者につけさせないと結婚に踏み切らない(晩婚化して、夫婦が産む子供の数が減る)」などと言われても、まあなかなかむつかしいんじゃないかと思います。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.208 理想の結婚・夫婦とはなんぞやということを語りつつ、社会的に問われつつあるゲーム内ガチャの在り方やスマートスピーカーのあれこれを取り上げる回
2017年11月29日発行号 目次
187A8796sm

【0. 序文】現代日本の結婚観と現実の夫婦の姿
【1. インシデント1】海外のガチャ禁止議論とゲーム環境の変遷
【2. インシデント2】今後もしかしたら流行りそうなスマートスピーカーで気になること
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」のご購読はこちらから

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。サイバーインテリジェンス研究所統計技術主幹など歴任。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

これからの日本のビジネスを変える!? 「類人猿分類」は<立ち位置>の心理学(名越康文)
トランスフォーマー:ロストエイジを生き延びた、日本ものづくりを継ぐ者 ――デザイナー・大西裕弥インタビュー(宇野常寛)
イビサで夕日のインフレを考える(高城剛)
人生に一発逆転はない–心の洗濯のススメ(名越康文)
玄米食が無理なら肉食という選択(高城剛)
『声の文化と文字の文化』ウォルター・オング著(森田真生)
追悼・鶴ひろみさん/再生の水の秘密を知る少女=ブルマとともに(武田梵声)
改めて考える「ヘッドホンの音漏れ」問題(西田宗千佳)
ネットも電気もない東アフリカのマダガスカルで享受する「圏外力」の楽しみ(高城剛)
11月に降り積もる東京の雪を見ながら(高城剛)
音声で原稿を書くとき「頭」で起きていること(西田宗千佳)
「海賊版サイト」対策は、旧作まんがやアニメの無料化から進めるべきでは(やまもといちろう)
インタラクションデザイン時代の到来ーー Appleの新製品にみる「オレンジよりオレンジ味」の革命(西田宗千佳)
メディアの死、死とメディア(その1/全3回)(内田樹)
人事制度で解く 「織田信長の天下布武」(城繁幸)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 756円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ