※高城未来研究所【Future Report】Vol.518(2021年5月21日発行)より
今週は、石垣島→黒島→与那国島→沖縄本島→鹿児島と移動しています。
あまり知られていませんが、琉球諸島には全部で6つの言語(奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語)がありまして、例えば、「美しい」のことを沖縄本島では「ちゅら」と言いますが、与那国では「あーびゃん」となりますので、いわゆる「方言」ではなく、まったく「別の言語」として言語学の世界では考えられています。
「ありがとう」を沖縄本島では「(いっぺー)にふぇーでーびる」、石垣島では「にーふあいゆー」、与那国では「あらーぐふがらっさ」、鹿児島県に属する奄美大島では「ありがっさまりょーたー」となり、別の国の言語といっても差し支えないほど異なりますが、いまや日常生活で聞くことは滅多にありません。
2009年のユネスコの発表によれば、世界に存在するおよそ6000の言語のうち2500言語が消滅の危機に瀕しており、琉球諸島の6つの言語は、遠くない先に消滅してしまう「重大な危険」、「危険」な状態にある言語に区分されました。
しかし、政府はわずかな予算を「文化保全」に割かず、「離島防衛」の基地増設だけに執心しているのを強く感じます。
領土とは、目に見える土地だけではありません。
さて、今週もレンズの話しをもう少し続けます。
レンズは第二次世界大戦中の「国家の眼」からコンシューマーへと標準を合わせ直し、カメラは日本の高度経済成長の代表的な製品へと成長していきます。
朝鮮戦争特需でニコンが躍進し、それにキヤノン、オリンパスやコニカが追従して、日本製カメラが世界を席巻しました。
そして1985年、「αショック」が起きます。
当時、市場で先頭を走っていたニコンが取り組んでいたのは、オートフォーカスです。「オートフォーカスニッコール80mmF4.5」などの試作レンズを発表し話題を呼びましたが、結局、技術的な課題が残り、市販されることはありませんでした。
その隙をついて、オートフォーカスカメラの完成品として登場したのが、市場シェアをほとんど持っていなかったたミノルタの「α-7000」です。
ミノルタ「α-7000」は、あまり語られることはありませんが、太平洋戦争の軍事技術を転換して成功した三菱グループのニコンに対し、三井グループである東芝のセンサー技術と、戦闘機を作っていた石川島播磨灘のロータリーエンコーダーによって出来上がったカメラです。
これら三井グループの技術提供により、レンズ駆動用のモーターや電源をカメラボディ内に搭載することが可能となり、交換レンズの外径や価格を同スペックのマニュアルフォーカスシステムと遜色ないカメラとレンズが出来上がりました。
この「ミノルタα-7000」が大ヒット。
第1回ヨーロピアン・カメラ・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、日本のみならず世界中で大評価を受ける製品となります。
実は日本にはあまり表に出ない「親睦会」がありまして、三菱グループの「金曜会」に対し、東芝や石川島播磨灘、のちに加盟するミノルタは、三井グループの「月曜会」に属します。
つまり、ニコンFシリーズが「金曜会」のカメラだとしたら、ミノルタの「α-7000」は、「月曜会」が威信をかけたカメラだったのです。
ところが、米国の軍需企業「ハネウェル」社から、ミノルタの保有するオートフォーカス技術が特許侵害にあたると訴訟を起こされ、約1億ドルもの和解金を支払います。
この背景には、米国と昵懇だった自民党中曽根康弘総理大臣の政治的決着があったと思われますが、これ以降、ミノルタは徐々に表舞台から姿を消していくことになります。
そして経営難から2003年コニカと統合し、カメラ事業は同じ「月曜会」のソニーへと引き継がれます。
こうして、大日本帝国軍の技術を集めた世界初の実用的なオートフォーカス一眼レフカメラ「α」シリーズは、「ミノルタα-7000」から連なる汎用機に与えられるナンバー「α7xx」と、プロ機のナンバー「α9xx」と共に、ソニーから「月曜会」を代表するカメラとして再スタートを切ることになるのです。
(次号に続きます)
高城未来研究所「Future Report」
Vol.518 2021年5月21日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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