※高城未来研究所【Future Report】Vol.539(2021年10月15日発行)より
今週は、金沢、京都、東京と移動しています。
週の後半は少し肌寒くなりましたが、先週今週と秋晴れというより夏日が続きました。
気象庁による秋の区分は9月から11月まで、天文学的な区分では秋分(9/23頃)から秋だと言われていますが、まだまだ残暑厳しい日も多く「秋冷の候」と書くには忍びありません(撮影時に好天なのは助かりますが)。
今年、10月に入ってから30度を超える真夏日が3日間続くのは観測史上初めてのことで、日本で観測がはじまった1870年代の10月平均は15度前後でしたが、近年は20度を超えることも珍しくなくなってきました。
自著にも書きましたように、日本は徐々に四季を失っています。
衣替えの習慣は、平安時代の宮中行事から始まり、中国の風習に倣って旧暦の4月1日および10月1日に夏服と冬服を着替えると定め、これを「更衣(こうい)」と呼びました。
その後、明治政府が新暦(太陽暦)に変えたことをきっかけに、太陽暦6月1日〜9月30日が夏服、10月1日〜翌年5月31日が冬服と定められ、官公庁・企業・学校が、毎年一斉に6月1日と10月1日に衣替えを行うようになります。
一般的に温暖化といえば気温ばかり注視されますが、実は湿度が大問題です。
大気中でもっとも温室効果が大きい水蒸気は、広い波長の赤外線を吸収するため温室効果が大きく温暖化が進み、地表の気温が上昇すれば海面から発生する水蒸気量が増加し、四方を海に囲まれた日本では著しく上昇します。
湿度が上がれば体感気温も著しくあがり、仮に湿度100%のときに気温32度であれば体感温度は55度まで高まります。
地球の温度が上がった場合、気候モデルでは「相対湿度」(=天気予報で言うところの湿度。飽和水蒸気量に対する水蒸気量)は変化せず、クラウジウス・クラペイロンの式を用いれば「絶対湿度」(=単位体積当たりの水蒸気量)が温度の1度上昇に対して7%も上昇することによって、不快感が高まるどころか、疲労、そして過労へと向かうのです。
また、絶対湿度はウイルスの流行と関係があり、7.0g/m³以下になると流行しやすくなることが判明しています。
イェール大学の研究によれば、空気が乾燥しすぎていたり湿度が高すぎる場合、感染リスクが高くなり、相対湿度40%以下、もしくは60%以上を「リスクゾーン」と定め注意を呼びかけています。
乾燥した空気は室内でのウイルスの移動を容易にし、肺がウイルスの粒子を除去するのをより困難にします。
また、免疫システムの病原体への反応は乾燥した空気の条件の下ではより弱くなりますが、非常に高湿度な場合もウイルスを助けることになり、湿った環境ではウイルスの粒子は表面への付着が一層容易になってしまうこともわかっています。
まるでSF映画のようですが、激しく移り変わる気温と湿度にあわせて、HEPAフィルターなどと組み合わせ、身を守るように徹底して環境をコントロールする。
エアロゾル感染が激しくなるのは、これからです。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.539 2021年10月15日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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