高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

これからの時代にふさわしい正月らしさとは

高城未来研究所【Future Report】Vol.551(2022年1月7日発行)より

今週も東京にいます。

ここ数年、年末年始は普段と変わらない日々を過ごしておりまして、(糖質過多の)お正月らしい料理を食べることもなければ、レコード大賞や紅白歌合戦などを見ることもなく、また、初詣に行くこともなければ、一年の計を立てることもしていません。

子供の頃には、テレビで放送される隠し芸大会などの年末特番を楽しみにしてまして、おせち料理やお餅、また、お書き初めに凧揚げまでたっぷりと楽しんだもので、スーパーやデパートなども休業していましたので買い物に出ることもありません。
それゆえ、冷蔵庫いっぱいの買い出しが年末の恒例行事でした。

しかし、いまではコンビニに限らず、スーパーやデパートも営業どころか元旦から新春大売り出し。寒い冬に外で遊ぶより中でテレビゲームに勤しんだほうが愉しいのも事実で、正月ならではの「不便」を一切感じなくなりました。
もはや「風物詩」という言葉自体が使われることも少なくなりましたが、もしかしたら「新型ウィルス感染拡大が正月らしさ」と言われる時が来るかもしれません。
それほど十年前とは全く違う未来に生きていると感じます。

正月らしさが失われた理由は、コンビニエンス・ストアの普及や各デパートが凌ぎを削って元旦オープンに踏み切った「新自由主義による競争社会」、買収できることが発覚したレコード大賞や芸能事務所の力学で変わる紅白歌合戦の裏側などが暴露された「テレビの凋落」など環境の大きな変化もありますが、個人的に思うのは、お正月がなにかのキャンペーンになってしまったように感じることです。

単なる記念日的意味合いのように渋谷のスクランブル交差点に集まり、イベント同様に参拝する初詣客も後を立ちません。
サッカー戦で日本が勝つのも、いつからか賑わうようになったハロウィーンやお正月すらも、いまやすっかり広告主の意向に沿ったキャンペーン・イベントの一環のようです。
オリンピックもインターネット検索も、すべて広告費で運用されていることからわかるように、資本主義も民主主義も基本的には広告に支配されたキャンペーンによって、人々の動向が決まります。

かつて、SF映画でAIによって人類が支配されるような表現をよく見かけていましたが、すでにアルゴリズムによって提供されるオンライン広告を通じて、人々は動向を決定づけられているように思えてなりません。

SNSや果てしないリンク、そしてガチャと言われるゲームが脳の報酬系に刺激を与え続け、その隙を縫って次々と飛び込んでくる広告アリゴリズム。
現在は動画が広告の大半を握っていますが、次に来るのはいよいよ対話型広告。
人は、気がつかずアルゴリズムと話して、動向を決めるようになるのです。
いま、まさに検索窓の結果で動向、いや人生を左右されているように。

果たして、人類は「アルゴリズムの支配」から逃げられるのでしょうか?

しかし、本質的問題はビッグ・テックではなく、各人の脳の中で日に日に大きくなっている欲望の権化「ゴリアテ」を倒す、小さな「ダビデ」を育てていないことにあるのではないかと考え、今年は年末から数日オフラインで過ごしました。

今後、僕にとっての正月らしさとは、きっとオフライン生活になるでしょう。
良い機会です。

どうか皆様、本年もよろしくお願いいたします。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.551 2022年1月7日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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