高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

本来ハロウィーンが意味していた由来を考える

高城未来研究所【Future Report】Vol.594(11月4日)より

今週は、東京にいます。

いまから1万2000年ほど前、北米に隕石が衝突しました。
これが原因で温暖期だったベーリング/アレレード期が突如終わり、1000年間に渡る寒冷期ヤンガードリアス期がはじまります。

当時、メキシコにあった村々は壊滅し、北欧の森林はツンドラへと変貌。
大津波が世界中を襲い、地域によっては、ある日突然マイナス20度近く気温が下落し、大きな気候変動がおきました。

この隕石が衝突した日が、今週10月31日です。

古代ケルト人はこの「ジャイアント・インパクト」を区切りとし、11月1日を新年と定め、長年ケルト人の祭司ドゥルイドによって「戒めの日」として語り継がれてきました。
その後、ケルト人はカトリックに侵略されドゥルイドも習合されますが、11月1日は「諸聖人の日」(All Hallows Day)、翌11月2日は「万霊節」と名を変え、弔いの日は続きます。

当時、多くの死者を出したメキシコでも、毎年11月1日と2日は、いまも「死者の日」として盛大な鎮魂祭が行われています。
なかでも先住民族が半数近くを占めるオアハカでは、前夜から死者を迎入れる壮大な儀式が行われます。

この「ジャイアント・インパクト」があった前夜10月31日が「Hallows Even」、つまりハロウィーン(「Hallow’en」)なのです。
本来ハロウィーンは、鎮魂の時であり死者の魂をお迎えする踊りはあっても、無闇矢鱈に騒ぐ時ではありません。

ところが、プロテスタントでは異なります。
宗教改革者たちによってプロテスタントでは聖人への崇敬が廃止されたため、プロテスタント諸国では形式上11月1日を「聖徒の日」と位置づけていますが、重んじません。
これにより、英米では「Hallows Eve」が形骸化し、新自由主義下における近年はパーティ需要を喚起するビジネスチャンスに変貌。
英米人が大騒ぎする韓国の梨泰院や東京の六本木、そしてテーマパークの集客マーケティングの材料として扱われ、この十年、単なる「仮装の日」としてアジア各国全土に急速に広がります。
もはや死者への弔いは、どこにもありません。

また、「ジャイアント・インパクト」は、アジアに新たな文明をもたらした区切りでもありました。
急激な気候変動により、豊富だった自然の恵みが手に入らなくなった人々は、自ら食料を生産することをはじめます。
それが、西アジアではじまった稲作です。
ここから有史における最古の文明であるシュメールへと連なり、世界で農地革命がスタートし、村を中心とした社会が出来上がるのです。

農暦と同じように、古くから「謂れのある日」は、表層ではなく本質的な意味が必ず潜みます。
それを忘れないために「古い暦」や「祭り」があるのだろうな、とオレンジ色に飾り付けられた街並みを歩きながら考える今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.594 11月4日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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