高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

遊んだり住むには最高だけど働くのは割りに合わない日本

高城未来研究所【Future Report】Vol.670(4月19日)より

今週は、東京にいます。

すっかり気候も春めいてきて、例年ならいち早く海外に出る時期ですが、今年はヘルスケアサービスの立ち上げもあって東京で多くの時間を過ごしています。

ただし、理由はこれだけではありません。

過去20年にわたって、僕は物価が安く面白い街に移り住んできました。
今からちょうど15年前にバルセロナへ移住したときには、体感で物価が東京の半分から三分の一程度で、銀座のような一等地にあるホテルで朝食をとっても500円もしませんでしたが、現在は3000円をはるかに超えています。

同じように、この1年で世界中の友人たちが安価な東京に訪れるようになりました。
実際、僕も毎週のように海外から来た友人たちと東京で会い、彼らは口々になぜ東京はこれほど安いのか!と話します。

実際に東京へ移住しようと考えている人たちも少なくなく、すでに数ヶ月デジタルノマドとして短期移住してる人たちもそれなりにいます。
特に荒廃しつつある米国西海岸や英国から数ヶ月滞在する人たちが多く、生活費や家賃が高騰したサンフランシスコやロンドンで暮らすより、同じ質を担保しながら日本で暮らす方がはるかに安いのは事実です。

今月から日本政府も約50カ国・地域の年収1000万円以上を対象に滞在期間を6ヶ月以内に限定した「デジタルノマド」ビザ制度を開始しました。
僕の友人たちも応募しようと目論んでいる人たちが相当数います。

世界最大の旅行プラットフォーム「トリップアドバイザー」が今年1月に発表した「2024 トラベラーズチョイス ベスト・オブ・ザ・ベスト 観光地」では、東京が「注目の観光地」世界1位。
街を歩くとパンデミック前のアジア人ばかりの状況とは明らかに異なり、いわゆる欧米人が増えています。

ある意味、東京が本当のグローバル都市になったと感慨深く思うと同時に、確かに為替安と物価安はこの国の価値を毀損し、明らかに価格と内容が不釣り合いであり、また、世界的な成長からは完全に外れてしまったことを考えると、少し複雑な気持ちです。
現在、旅行者から見るとバンコクやジャカルタより安く、マニラより東京は安価なのです。

また、世界最大の飲食軒数を誇ることもあって食のコストパフォーマンスも高く、一方、ヴィーガンの店やグルテンフリーの店は、東京ではほとんど見られないと友人たちは悲しそうに話します。

そこで、本当にグローバル化したかどうかをみる指標として世界の金融都市ランキングを参考にすると、残念ながら東京の価値は圏外だとわかります(https://www.visualcapitalist.com/top-global-financial-centers-in-2023/)。
労働時間は世界一長く、効率性は他国同様ながら労働者が従順なため、いつまで経っても給与が上がりません。

つまり、日本は遊んだり住むには最高だけど、働くのは割りに合わない街だということがよくわかります。

海外から東京へ遊びに来た友人たちと、少し散りはじめた花見をしながら変わりゆく東京を感じます。

この街は、良くも悪くも5年前とは違うのです。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.670 4月19日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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