やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

そろそろ真面目に「クレジットカードのコンテンツ表現規制」に立ち向わないとヤバい


 某火鍋の妖精アカウントにこんな記述があったところ、いろんな方面から「これ何やねん」というお話を頂戴するようになりました。
 

 
 まあ文字通りの意味なんですが、カード会社が悪者だとか、検閲に当たるのでどうにかしろなどという受け手側の論理とは別に、クレジットカード会社も決済を担う重要なインフラとして日本でサービスをしている限りにおいては、公共性、透明性、納得性をきちんと担保してほしい思うわけです。

 ここには、最近憲法が定める私人間効力の延長線上に、デジタル立憲主義的な考え方も出てくる中で、政府は法の下の平等に対して障害となっているプラットフォーム事業者の実態に対して適切に対応するべきだという議論があります。私も、個人のTwitterアカウントをBANされたままなので裁判をやっているんですけど、これらは不法行為ではなく契約行為に当たる問題なのだから東京地裁からはカリフォルニア州の法律が適用されるのではという見解を出されて、日本人が日本で日本語のサービスを受けているのに日本の法律・消費者行政の枠内で対処されないというのはどういうことなのかという話を申し立てていて、これは最高裁判所まで行くべきものなんだろうなあと思っているところでした。

 同じような話は、日本で合法に流通しているコンテンツに対して、仮にそれがエログロ的な同人作品であったとしても、国内では表現の自由の元で決済されるべきはずなのに、クレジットカード会社の考課として不適切とされる文言や内容が含まれるものは決済しないのであると一方的にREJECTされたり店舗ごと決済BANされてしまうということが起きます。国内で合法であるからには、適法に事業を営んでいる事業者や流通せしめるべきコンテンツが海外の事業者の判断でキャンセルされ、これに対して、国内で制裁解除の申し立てもできないというのは日本国内の法が法として機能していない状態なのではないかとも思うのです。

 さすがに拙いでしょうということで、2019年からクレジットカード会社によって取引拒否されたコンテンツについての問題をずっと討議してきて、JILISでもこの問題を取り上げてきましたが、さすがに抜き差しならないことになってきたなあということで、立ち上がっていきたいと思っています。

日本のフェイクニュース対策と民主主義

 また、これと並行していま問題となっているのはフリーランス法が新しく立ち上がっているにもかかわらず、なおクリエイターなど文化的資産の構築に不可欠な仕事に携わる人たちが、粗悪な労働環境で放置されてしまっているという現実があります。適切な給料や健康保険などの社会保障を享受できずに低賃金長時間労働に従事させられたり、傷病で働けなくなった後で復帰しがたい社会環境のまま放置されている点についても充分に考慮される必要があると思っています。

 いわば、フリーランス、非正規雇用の人たちはもちろんこれからは諸契約や健康保険、年金にも守られる就業環境が整っていくことが期待される反面、いわゆる労働組合的な観点からはフリーランス、非正規雇用という扱われがたい属性であるがゆえに放置されてしまった面があります。ここをどうにかしたいということで、2020年ごろから知財本部やクールジャパン方面にはゆるゆると政策提言や働きかけをしてきたものの、何かあんまりそういう方面にはやる気が無さそうなので、これもまたできる範囲でちゃんと立ち上がろうかと思っているところです。

 これらの問題は、フリーランスや非正規雇用の人たちが置かれている現状が不利であるか、不利であることにそもそも気づいていない人たちもたくさんいる中で、ギルド的な互助組織が不在すぎてずっと放置されてきた面があります。こういう人たちは低賃金なうえに結婚することもままならず、未婚・少子化の割合が極めて高い属性であることも踏まえて、なんかできないものなのかなあとずっと思ってたんですよね。

 だいたいそういうことなので、いろいろと活動やイベントを立ち上げていきたいと計画をしていますので、ご関心のある方も興味本位の方もぜひお付き合いいただければ。

 よろしくお願い申し上げます。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.444 国内におけるクレカ規制の問題の深刻さを語りつつ、東京都知事選やeKYCが事実上終わりを迎えた件に触れる回
2024年6月19日発行号 目次
187A8796sm

【0-1. 序文】そろそろ真面目に「クレジットカードのコンテンツ表現規制」に立ち向わないとヤバい
【0-2. 代表質問】山本氏の『ボク言いましたよね』の真髄を知りたい
【1. インシデント1】告示前に終戦してしまった東京都知事選挙
【2. インシデント2】ようやくゴミeKYCがご臨終の件
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」のご購読はこちらから

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

気候変動がもたらす望まれない砂漠の緑地の皮肉(高城剛)
週刊金融日記 第304号【楽しいのはパーティーか読書か、世界の株式市場が大暴落、新大久保で美味しいネパール料理他】(藤沢数希)
武器やペンよりもずっと危険な「私の心」(名越康文)
『戦略がすべて』書評〜脱コモディティ人材を生み出す「教育」にビジネスの芽がある(岩崎夏海)
「立憲共産党」はなぜ伸び悩んだか(やまもといちろう)
揺れる「全人代」が見せるコロナと香港、そして対外投資の是非(やまもといちろう)
アカデミー賞騒ぎを振り返って〜往年の名優を巻き込んだ「手違い」(ロバート・ハリス)
日本保守党と飯山陽絡みで調査方としていつも思うこと(やまもといちろう)
DeNA「welq」が延焼させるもの(やまもといちろう)
執筆スタイルが完全に変わりました(高城剛)
ウクライナ問題、そして左派メディアは静かになった(やまもといちろう)
大きく歴史が動くのは「ちょっとした冗談のようなこと」から(高城剛)
過去17年間のAmazon依存度を振り返る(小寺信良)
ロシア人が教えてくれた人生を楽しむための世界一具体的な方法――『人生は楽しいかい?』(夜間飛行編集部)
開発者会議で感じた「AWS」という企業の本質(西田宗千佳)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ