名越康文
@nakoshiyasufumi

SOLO TIME 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である

本当の「ひとりぼっち」になれる人だけが、誰とでもつながることができる

なぜ「ひとりぼっちの時間」が必要なのか

6月に『SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』という本を出しました。ツイッターでの反応を見ていると、「他人とのつながりが大事」と口にしつつ、その一方で「ひとりになりたい」と願っている人が少なからずおられる、ということに、改めて気付かされます。

若いみなさんの間で、「ひとりの時間」を満喫しようと試みる方が増えているというのは、大変素晴らしいことだと思います。ただ、「ひとりの時間を過ごしたい」という気持ちの中に、「他人と関わりたくない」「傷つきたくない」と言った、ネガティブで、暗い感情がつきまとってはいないか、ということには、ちょっと注意が必要だと思っています。

新刊の中で私が繰り返し、強調して述べたのは、いかに、ひとりぼっちで過ごす時間を、明るく、充実した時間にしていくかということが、大きな課題であるか、ということについてでした。

家族、友人、同僚、恋人……私たちは、さまざまな「つながり」の中で生きています。もちろん、身近な人との人間関係というのは、それ自体は、決してネガティブなものではありません。むしろ、豊かな人間関係というのは、その人の人生を、基本的には豊かにしてくれる要素と言っていいだろうと思います。

しかし、私たちが「つながり」を意識する時、そこには往々にして、ネガティブな感情が結びついています。

「実は自分は、同僚から嫌われているのではないか?」
「彼との関係は、この先も同じように続くのだろうか?」
「私はいつまで、この人と一緒に過ごさなければいけないのだろう?」

ただ単に、人と会わずに、一人の時間を過ごすだけでは、私たちはつい心の中で「誰か」との会話を始めてしまいます。そんな状態では決して「明るく、充実した時間を過ごしている」とは言えないでしょう。それに、「心の中の他人と会話している」のであれば、それは「ひとりぼっちの時間」ですらないと私は思います。

「ひとりぼっちの時間」を過ごしたければ、私たちはまず、ネガティブな感情を伴った「つながり」から、手を離す必要があります。そうすれば、ひとりぼっちの時間というのは必ず、明るく、爽やかで、充実した時間になるはずなのです。


心の中に「他人」がいる限り「ソロタイム」は過ごせない
イラスト:伊藤美樹

 

つながり依存は「確認」の病

ネガティブな感情を伴う「つながり」から手を離し、明るく、充実した「ひとりぼっちの時間」を過ごすこと。今回の本の中で、私はこれを「ソロタイム」と呼ぶことにしました。

「つながり」へのこだわりが強くなればなるほど、私たちは無意識のうちに、他人とのつながりを「確認」するようになります。挨拶を交わした時の相手の表情、スマートフォンのメッセージの表現やタイミング、電話の声のトーン……相手と自分とのつながりを無意識のうちに確認しようと神経を尖らせている。そんな「つながり依存」に陥りがちな私たちに、ソロタイムは、どのような効用をもたらすのか?

それは実は、「つながりの実感」を取り戻す、ということなのです。

つながりを手離すことで、私たちはつながりの実感を得ることができる。

非常に逆説的なのですが、実際にやってみれば、これは、多くの人が実感することができることだと思います。

「つながり」を確認しようともがいている間、私たちはどんどん、「つながりの実感」から遠ざかります。それに対して、ひとりぼっちで充実した時間を過ごし、「他人からの評価」や「嫌われるかも知れないという不安」から手を離すことができてくると、いつも喧嘩ばかりしていた家族や、分かり合えない相手としか思えなかった同僚に対する感謝の念が、ふっと湧いてきます。

つまり、私たちから「つながりの実感」を奪っているものの正体は、おそらく、私たち一人一人の心の中にある、他人への過剰な依存心なのです。ひとりぼっちで充実した時間を過ごすことによって、私たちはより深く、「つながりの実感」を再獲得することができるのです。

 

ソロタイムを過ごすコツは、対象に没頭すること

どうすれば、自分一人で、充実した時間を過ごすことができるのか? それには浅いレベルから深いレベルまで、様々な方法論があります。詳しくは新刊『SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』をご覧ください。

ただ、明るく、爽やかなソロタイムを過ごすためのポイントを一つ挙げるなら、それは、<「対象」を見つけ、そこに没頭する>ということに尽きると私は考えています。

ただ、ぼんやりとひとりぼっちの時間を過ごすことができる、という人は、それほど多くはありません。手持ち無沙汰になると、私たちはつい、「つながり」に思いを馳せてしまいます。そうならないよう、何か、没入する対象を作っておくのが、ソロタイムのポイントです。

読書でも、映画でも、散歩でも、没入する「対象」は何でも構いません。とにかく「ふと気づくと、1-2時間経っていた」というぐらい、何事かに没頭した時間を過ごすようにする。

たったそれだけのことで、私たちは「つながりの実感」を取り戻し、心の奥底にある寂しさを払うことができるのです。

 

Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である

著者:名越康文
四六版並製、256ページ
ISBN:978-4906790258
定価1600円+税
夜間飛行 2017年6月12日刊

アマゾン→http://amzn.to/2raktov

ヤフーショッピング→http://store.shopping.yahoo.co.jp/yakan-hiko/906790258.html

■内容

他人の言葉や常識に振り回されず、
納得のいく人生を送るために必要な
新時代のライフスタイルの提案!

5000人のカウンセリング経験から得た精神科医の結論!

「会社や家族、友人や恋人といったさまざまな人間関係を維持していくことだけに、人生のエネルギーと時間の大半を注ぎ込んでいる人は少なくありません。しかし、そのことが、現代人の不幸を生み出しています。
人間関係は大切だけれど、それ自体は人生の目的ではないのです」

「日ごろの人間関係からいったん手を離し、静かで落ち着いた、ひとりぼっちの時間を過ごす。たったそれだけのことで、何ともいえないような虚しさが、ふっと楽になった、という人は、少なくありません」
(本書より)

<<<人生を変える、ソロタイム活用法>>>

部屋を片付ける/旅に出る/古典やSFを読む/大きな決断の前には気分転換をする/他人を変えず自分が変わる/仕事や勉強よりも大切なのは「落ち着く」こと/小さな怒りを払っていく/姿勢を整えてしっかり息を吐く/拭き掃除をする/小さいことから習慣を変える/夕飯ヌキのプチ断食をする/家族や友人、同僚に対して毎回「はじめまして」という気持ちで接する/いつもと違うキャラになる/夜中にひとりで散歩をする

<目次>
第1講 あなたは群れの中で生きている
第2講 本当の自分の見つけ方
第3講 自分の心に打ち勝つ
第4講 身体に秘められた知恵と出会う
第5講 人生を変える習慣の力
第6講 もう一度、人と出会う
(目次より)

 


<著者プロフィール>
名越康文(なこしやすふみ)

1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。
専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)、『『男はつらいよ』の幸福論 寅さんが僕らに教えてくれたこと』(日経BP社、2016)などがある。

夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中。
公式サイト
http://nakoshiyasufumi.net/

名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学、龍谷大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:現:大阪精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『「鬼滅の刃」が教えてくれた 傷ついたまま生きるためのヒント』(宝島社)、『SOLOTIME~ひとりぼっちこそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)『【新版】自分を支える心の技法』(小学館新書)『驚く力』(夜間飛行)ほか多数。 「THE BIRDIC BAND」として音楽活動にも精力的に活動中。YouTubeチャンネル「名越康文シークレットトークYouTube分室」も好評。チャンネル登録12万人。https://www.youtube.com/c/nakoshiyasufumiTVsecrettalk 夜間飛行より、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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