今週も引き続き、打ち合わせと執筆のため(なかなか終わらずです)東京にいます。
そんなある夜、上海まで仕事で来たついでに、はじめて東京に立ち寄った友人のスペイン人カメラマンとの夕食時の会話。いつもと一風変わって、近況代わりにお届けしたいと思います。
日本は「裸の王様」のまだエンディングが来ない状態
スペイン人(以下J)「東京滞在三日目になるけど、浅草と皇居と新宿見て、あとはどこにいけばいいかな?」
高城(以下T)「東京は、世界三大ガッカリ観光地と言われるくらいだから、難問だね。だから皆すぐに京都に行くんだ。北海道や沖縄もお薦めだよ。日本のカントリーサイドは、素晴らしいよ」
J「いや、東京を見たいんだ。世界最大の都市だろう?」
T「じゃあ明治神宮はどうかな? 原宿と呼ばれるかつてのユースカルチャーの発信源とのコントラストは、面白いと思うよ。中野のブロードウエイもきっと好きだと思うな」
J「そういえば、もうじき震災から一年経つだろう? 原発事故はその後どうなったんだ? 日本のテレビでもニュースをまったく見ないぞ」(編集部注:この記事の初出は2012年3月9日です)
T「相変わらずテレビ好きだね。海外まで来てみてるなんて。日本は街中や電車のなかにもテレビがあって、すごいでしょ。でも原発に関しては、どこも詳しく放送しないんだ。実際、誰も現状がわからないんだよ。たとえば、飛び散った燃料棒がどこにあるとかね。わかってることは、火が消えるのに40年はかかるということ。それに、4号機には広島に落とされた原子爆弾の4000発分の放射性物質がまだ入ってて、不安定なまま宙づりでブラブラしてるから、次大きな地震があったらかなりヤバいね」
J「それは、日本人は知ってるの? それを報道してるの?」
T「一部では小さくしてるけど、大々的にはやらないよ。この国では、本当のことを言うと「危険を煽る」と言われて叩かれるんだ。本来、本当のことを言うと褒められるはずだけど、この国のルールは別なんだ。童話の「裸の王様」のまだエンディングが来ない状態。極端に言えば北朝鮮をイメージすればいいよ。情報統制具合。でも、強制じゃなく自主的なところがポイント。マスコミも国民も強制されているんじゃなくて、発言を控えるのはあくまでも自主的なところがポイントなんだ。お金がまだ少しあって、実質的な個人の自由は発言も含めあんまりないけど、経済活動の自由がある北朝鮮のような感じかな」
J「もうじきちょうど一年だよね?」
T「3月11日には、少し特別な放送をすると思うけど、きっと被災地の人にフォーカスをあてた悲劇と美談だけだと思うよ。原発の現状を探るようなことはしないよ。気分が滅入って、消費も落ちるし。ちなみに福島第二原発でも爆発があったらしいよ。見て来た人が教えてくれた。モチロン、マスコミがそれを追う事はないよ。事実だろうがなんだろうが「危険」な発言はしてはいけないんだ」

その他の記事
![]() |
Oculus Go時代に「Second Life」を思い出す(西田宗千佳) |
![]() |
付き合う前に「別れ」をイメージしてしまうあなたへ(石田衣良) |
![]() |
アップルの“あえて言葉にはしていない”仕掛け(本田雅一) |
![]() |
トランスフォーマー:ロストエイジを生き延びた、日本ものづくりを継ぐ者 ――デザイナー・大西裕弥インタビュー(宇野常寛) |
![]() |
夏休みの工作、いよいよ完結(小寺信良) |
![]() |
「リバーブ」という沼とブラックフライデー(高城剛) |
![]() |
中国マネーが押し寄せる観光地の今(高城剛) |
![]() |
『我が逃走』は日本版ハードシングス?(家入一真) |
![]() |
「小池百合子の野望」と都民ファーストの会国政進出の(まあまあ)衝撃(やまもといちろう) |
![]() |
「USB-C+USB PD」の未来を「巨大モバイルバッテリー」から夢想する(西田宗千佳) |
![]() |
もし朝日新聞社が年俸制で記者がばんばん転職する会社だったら(城繁幸) |
![]() |
銀座の通りにある歩道の意味(高城剛) |
![]() |
驚きとは、システムのほころびを愛でること(名越康文) |
![]() |
デトックス視点から魚が現代人の食生活に適しているかどうかを考える(高城剛) |
![]() |
人生に「目的」なんてない–自分の「物語」を見つめるということ(家入一真) |