※高城未来研究所【Future Report】Vol.391(2018年12月14日発行)より
今週も、東京にいます。
毎年恒例、冬季執筆シーズンも、いよいよ大詰めになって参りました。
現在、書きあげようとしている一冊は、ここ2年ほど世界を周り、先端科学者から政治家までお話をお聞きして、今後30年で、地球と人類は、どのように変わっていくのかをまとめた一冊です。
この本は、今年の春に出版しました「分断した世界」の後編にあたります。
何年かに一度、未来予測の本を書いていますが、本書はいままでと違った三つの特徴を持ちます。
一つめは、前編となる「分断した世界」に記したように、前編で過去30年を徹底的に分析し、後編では今後30年を予測するという試みです。
1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西がひとつになって、いわゆるグローバリゼーションがはじまりました。
この大きなエンジンがインターネットと、その中を瞬時に移動する「デジタル化された情報」で、この動きに、どこよりも早く追従したのが金融業界でした。
瞬く間に資金を移動し投機することが可能になり、気がつくと、カジノ的資本主義がはじまり、マネーが世界を支配することが公的に認められました。
その合図が、製造業や重工業から金融およびITにシフトしたクリントン米大統領による「グラム・リーチ・ブライリー法」だったのです。
これ以降、民主主義の上位概念に資本主義の皮を被った新自由主義が置かれることになりました。
こうして、各国の社会が競争主義下に置かれ、法人税を安くし、企業誘致に努め、結果、一般国民が割を食う形になってしまっています。
いま、フランスで起きている騒乱の本質的原因も、ここにあります。
このような過去30年の世界動向から、次の30年を推察しています。
本書の二つめの特徴は、「僕に限らず、“未来を覗こう”と考える優れたフューチャリストや企業家、政治家や政府高官たちには、いったいどんな未来が見えているのだろうか?」という疑問から、世界中の賢人を訪ね、お話を伺うことにしました。
未来予測精度がもっとも高い元ブリティッシュ・テレコムのリサーチャーで未来学者のイアン・ピアソンや、IoTという概念を作ったひとりとして知られる元サン・マイクロシステムズのシニア・リサーチャーでフューチャリストのビル・エバンス、「クリプトバレーの父」と呼ばれるスイスのツーク市長ドルフィ・ミュラー。
そして、匿名を条件に話してくれたシンガポールや中国、インドの政府高官や起業家たち。
彼らとの対話のなかから、驚くべき未来を垣間見ることができました。
三つめの特徴は、多くの過去データを参照にしながら、実際に僕が現地に出向いた「肌感覚」に、かなりの重きをおいていることです。
当たり前ですが、すべての「データ」は、過去のものに過ぎません。
過去のデータから算出した数字は、誰が行っても大差なく、いまや数字にならない「次」を提案できなければ、市場から追い出されてしまう時代です。
近年、日本の大企業で改ざんが相次ぐのも、数字にならないものを信用できず、結果、業績が悪くなり、保身のために数字を書き換えたからに他なりません。
ゆえに今回は、いつも以上に恐れず、肌感覚で得たものを多く記すことにしました。
世界中を巡りながら浮き出てきた未来像は、「宇宙気候変動」、「ポスト・スマートフォンとしての人体」、「レイヤー化する貨幣」、「民主主義VS市場主義」、「創造的ホワイトカラー」、「世界政府」などであり、いかにもワケ知り顔で跋扈する未来ワードの「AI」や「ブロックチェーン」、「自動運転」などが、古く陳腐に聞こえてしまうほどでした。
まだ執筆中ですが、早々に書き上げられれば、来年2月後半から3月に、皆様のお手元に届けられると思います。
どんなSF映画より現実的な30年後の世界を、何卒ご期待くださいませ。
東京も冬到来。
室内でゆっくり過ごすには、良い時期です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.391 2018年12月14日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。