高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

社会が混沌に向かえば中国雑貨が大儲けする時代

高城未来研究所【Future Report】Vol.398(2019年1月25日発行)より

今週は、バルセロナにいます。

一時、独立運動が大きく騒がれたカタルーニャでは、世界的にニュースにはならなくても、引き続き運動と論争が日々続いています。

2017年10月、カタルーニャの独立宣言をスペイン中央政府が無効とし、自治権を一時停止したものの、12月に実施した州議会選挙で再び独立派が勝利して1年強が過ぎました。
現在、州政府は独立をめざす姿勢を変えていませんが、中央政府との対立も含め、解決への道が見えていません。

昨年、クリスマス直前にも独立支持派の抗議デモの参加者と警官隊が衝突し、62人が負傷したほか、13人が逮捕されました。
この要因は、あえてバルセロナで中央政府が閣議を行い、これを独立派から「挑発」と受け止められたのが、きっかけとなりました。

普段なら、スペイン政府の週例閣議は首都マドリードで行われますが、サンチェス首相率いる社会労働党は、カタルーニャへの融和姿勢を示すためバルセロナで実施。
これが裏目に出て、街頭デモにつながり「流血クリスマス」騒ぎとなったのです。

同じく昨年12月、スペイン南部アンダルシア州で、議会選挙の投開票がありました。
ここで、大躍進したのが、新興極右政党VOXです。「スペイン暗黒時代の独裁者」と言われたフランコ将軍が死去した1975年から民主化して以降、スペインで極右政党が議席を得るのは初めてのこととなり、欧州全体でも大騒ぎになりました。
この新興極右政党VOXは、カタルーニャの独立に反対の立場を取っていることでも知られています。

このように、スペインは分裂と対立が続くものと思われ、通りに面したアパートメントの窓から国旗を掲げて、各人意思表明をするのが、すっかり定着しました。
カタルーニャ独立なら、カタルーニャ国旗を、スペイン中央政府支持ならスペイン国旗を窓から掲げ、自ら意思を表明しています。

では一体、この国旗を各人どこで入手しているのでしょうか?

それは、この十年でバルセロナの街中に雨後の筍のように増え続ける中国雑貨ショップです。
この中国雑貨ショップは、いわゆる「100円ショップ」の様相で、狭い店内にあらゆる生活雑貨が安価で売られています。
これらの商品の大半は、上海から高速鉄道で2時間ほどのところにある浙江省の義烏周辺で作られており、それゆえ義烏は、「100均のふるさと」と呼ばれるまでになりました。
事実、日本の100均商品も、義烏周辺で作られたものが多く、また、この街には世界最大規模の雑貨市場があります。
数年前、義烏の雑貨市場に訪れた時、カタルーニャの国旗を見て驚いたことがありますが、最近では、フランスの政府抗議運動デモの象徴「黄色いベスト」もここで作らており、世界情勢を反映しているのが伺えます。

僕が義烏を訪れた数年前は、ちょうど米国大統領選真っ只中で、トランプの旗やグッズが大量に売られていました。
義烏の市場を見れば、トランプ勝利は予測できたと言い切るほどの識者もおりますが、あながち間違っていないのかもしれません。

さて、バルセロナ市内の中国雑貨ショップに訪れて店主に尋ねると、カタルーニャ国旗は、ここ数年の「大ヒット商品」だそうで、騒動が長引けば長引くほど、「売れる!」とハッキリ話していました。

かつて、戦争が起きれば、両陣営に武器を売る軍産複合体が大儲けしていた時代がありましたが、社会が混沌に向かえば、いまや、中国雑貨が大儲けする時代。

バルセロナの街を歩き、カタルーニャ独立国旗を見るたびに、高笑いする中国人の顔がよぎる今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.398 2019年2月1日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

その他の記事

「スルーする」ことなど誰にもできない――過剰適応なあなたが覚えておくべきこと(名越康文)
“コタツ記事”を造語した本人が考える現代のコタツ記事(本田雅一)
総務省家計調査がやってきた!(小寺信良)
改めて考える「ヘッドホンの音漏れ」問題(西田宗千佳)
なぜか「KKベストセラーズ」問題勃発と出版業界の悲しい話(やまもといちろう)
本当の才能は「何かに没頭した時間」が育ててくれる(名越康文)
「中華大乱」これは歴史的な事項になるのか(やまもといちろう)
エッセンシャル・マネジメント(本質行動学)とは何か(西條剛央)
週刊金融日記 第310号【教育工学も基本は恋愛工学と同じ、米中貿易戦争勃発、目黒駅の安くて美味しい立ち飲みビストロ他】(藤沢数希)
「道具としての友人」にこそ、友情は生まれる(名越康文)
格闘ゲームなどについて最近思うこと(やまもといちろう)
グアム台風直撃で取り残された日本人に対して政府に何ができるのかという話(やまもといちろう)
もし朝日新聞社が年俸制で記者がばんばん転職する会社だったら(城繁幸)
武術研究者の視点—アメフト違法タックル問題とは? そこから何かを学ぶか(甲野善紀)
アナログ三題(小寺信良)
高城剛のメールマガジン
「高城未来研究所「Future Report」」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回配信(第1~4金曜日配信予定。12月,1月は3回になる可能性あり)

ページのトップへ