高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

素晴らしい地中海食

高城未来研究所【Future Report】Vol.741(8月29日)より

今週は、バルセロナにいます。

この夏は、数ヶ月にわたってバルセロナを拠点にしておりますが、人類の文明を育んできた気候と、そこから生み出される食の恩恵により、長期滞在しててもまったく不快感がありません。ここ最近は和食を食べることなどもなく、肉すらほとんど口にしていませんが、実に不思議かつ快適な体感があります。

地中海食はイタリアやスペイン、ギリシャなど地中海沿岸諸国の伝統的な食生活パターンを指し、オリーブオイル、魚、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、豆類などをバランス良く、多様に摂取するのが特徴です。
近年、地中海食は様々な国際的医学誌やレビュー論文で健康効果が科学的に証明され続け、その実践者は慢性炎症を含むさまざまな疾患リスクの改善や長寿を享受していることが明らかになっています。

まず、心血管疾患の予防効果が大きく注目されています。
スペインのPREDIMED試験では、約7500名の心血管リスクを持つ高齢者を対象とし、最低5年にわたる追跡を行いました。その結果、オリーブオイルやナッツを豊富に用いた地中海食を続けたグループは、従来の低脂肪食グループに比べて心筋梗塞や脳卒中、心血管死のリスクが約30%低下。その要因を探ると、オリーブオイルや青魚に多く含まれる一価不飽和脂肪酸やオメガ3脂肪酸が心血管系の健康維持に重要であることが示されており、血管の柔軟性の維持や血栓形成の抑制、善玉コレステロール(HDL)の増加などを通じた心臓保護作用が確認されました。

また、25年以上にわたるアメリカの大規模コホート研究では、長期間地中海食を実践している女性群で全死亡リスクが23%低下するとのデータが示され、世界最高の食事法として地中海食が世界中のメディアを飾りました。これは代謝や炎症、インスリン抵抗性のバイオマーカーが良好に変化したことと強く関連しており、がんや心臓病のみならず全体的な健康寿命の延長にも寄与していることが判明。フリースタイルリブレを装着するとわかりますが、地中海食は血糖値スパイクがほとんどありません。

そのため、糖尿病予防や血糖コントロールの観点からも地中海食の有用性が多くの研究で明らかにされています。今年2025年発表のメタアナリシスや介入研究では、地中海食を実践することで2型糖尿病の発症リスクが13~30%低減し、糖尿病や予備軍の血糖安定化にも効果的であるとされています。

さらに、脂肪肝を代表とする代謝性疾患の予防にも地中海食は重要な役割を果たします。2025年5月の最新研究(Frontiers in Nutrition)では、地中海食パターンを強く守ることで肝脂肪の蓄積が抑制されること、抗酸化・抗炎症成分がこれに寄与していると論じられています。肝機能指数の改善や脂質プロファイルの安定化が実証されており、肝臓疾患の進行抑制にも有望な戦略と評価されています。

いったい、なぜこのような多彩な健康効果が得られるのでしょうか。

第一に、オリーブオイルなどに含まれる一価不飽和脂肪酸、魚由来のオメガ3脂肪酸、豊富な野菜・果物に含まれる抗酸化ビタミンやポリフェノール、ナッツ類のミネラルや食物繊維といったバランスのよい栄養組成が、体内の慢性炎症や酸化ストレスを軽減し、生活習慣病のリスク因子を包括的に低下させているためです。
第二に、野菜や全粒穀物中心の食習慣による血糖値の急上昇抑制、腸内環境の改善といった点も生理学的なメリットとなり、人間の本来持つ回復力を高める食生活として科学的に証明されていますが、個人的には、穀物から環境まで、カビがないことが、解毒力が極めて低い僕のような体質に、身体や頭の軽快さをもたらしていると考えています。

地中海食は2024~2025年も米国ニュース誌「US News & World Report」のベストダイエットランキングで7年連続総合1位となっており、「糖尿病に良い食事」「心臓の健康な食事」「骨や関節にやさしい食事」など複数部門でもトップ評価を得ています。

人類の文明を長年育んできたカビなしの地中海沿岸。
行き過ぎた資本主義による変わり果てた食物と距離を置くため、チェーン店が極めて少ないこの地域に適宜訪れ、人間力を回復させたいと思う今週です。

なにより美味しいですね!
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.741 8月29日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

その他の記事

iliは言語弱者を救うか(小寺信良)
現代の変化に対応できず長期停滞に陥っている双子のような日本とイタリア(高城剛)
在留外国人の国民健康保険問題と制度改革への道筋とかの雑感(やまもといちろう)
【第5話】オープン戦(城繁幸)
大麻によって町おこしは可能なのか(高城剛)
発信の原点とかいう取材で(やまもといちろう)
今年は「動画ゼロレーティング」に動きアリ(西田宗千佳)
2つの日本式システムが内戦を繰り広げる成田空港の不毛(高城剛)
参院選で与党過半数割れしたら下野を避けるため連立拡大するよという話(やまもといちろう)
旅行者が新天地を探すことができるか試される時代(高城剛)
ゴジラGODZILLA 怪獣という<神>の降臨(切通理作)
「控えめに言って、グダグダ」9月政局と総裁選(やまもといちろう)
横断幕事件の告発者が語る「本当に訴えたかったこと」(宇都宮徹壱)
グローバル化の波に直面するイビサ(高城剛)
明石市長・泉房穂さんの挑戦と国の仕事の進め方と(やまもといちろう)
高城剛のメールマガジン
「高城未来研究所「Future Report」」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回配信(第1~4金曜日配信予定。12月,1月は3回になる可能性あり)

ページのトップへ