最近気づいたことなんですが、僕ら日本人の心の中にある「他者への期待」っていうのは、その90パーセント以上が無意識のうちにあるものなんです。「もっと私のことを愛してほしい」とか「もうちょっと言うことを聞いてほしい」というように、きちんと言葉にして表現したり、自覚したりしているような「期待」というのは、その人が抱えている期待のほんの一部にすぎない。ほとんどの期待は、いわば深い無意識の底に沈んでいる(ふだん全く意識化されない)。
だからこそ、日本人の怒りというのは、ときに苛烈なものになる。「自分が何に対して、どのように期待しているか」という自覚がないために、その期待が裏切られ、怒りに転嫁してしまったときに、まったく歯止めがかからなくなってしまう。それは「自分がなぜ怒っているのか」がわからないから。無意識の期待に、気づいていないから。
もちろん、無意識の期待というのは、日本人だけが持っているものじゃありません。どこの国の人だって、程度の差はあれ、持っているものです。ただ、日本人は特に、「無意識の期待」の比重が高いんじゃないかと思うんです。それは結局、諸外国に比べて日本人の子育てが密接だから。
幼い頃から親があれこれ世話を焼いてくれて、非常に密接な身体的接触の中での「阿吽の呼吸」によって、言葉に出さなくても相手がやってくれる。そういう母子、もしくは父子が密着した子育ての中で育ってきた僕らの「期待」というのは、そのほとんどが無意識的なものにならざるを得ない。
つまり、「無意識の期待」の肥大化というのは、日本人の密な子育ての「副作用」だということです。
誤解のないように断っておきますが、僕は、日本人の子育てを、基本的には支持しています。「親が細やかに手をかけて子供を育てる」ということは、おそらくプラスの側面のほうが大きい。少なくとも、日本人が持つ繊細さや、高度なコミュニケーション文化というのは、こうした子育て習慣の中で培われてきたものだし、それは決して失われてはならないものだと思う。
しかし、そこには副作用もある。そのことは忘れてはならないだろうと思うんです。
名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」
00【イントロダクション】無意識の中にある「他者への期待」–その功罪
01【近況】善意のなれの果ての悪意/死に物狂いでやるということ
02【解説】観察力とは何か
03精神科医の備忘録 Key of Life
・共感せずに他者を認めることはできるか
04カウンセリングルーム
[Q1] 仏教に対して恐怖心を覚えています
05読むこころカフェ(34)
・他者がもたらす不快といかに付き合うか
06講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】
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本書で紹介する類人猿分類「GATHER」(Grate Apes Teach Human Eternal Relationships;類人猿が人間関係を教えてくれる)は、人間のタイプをオランウータン、チンパンジー、ゴリラ、ボノボの4タイプに分ける性格分類法です。グループメンバーの会社である株式会社エブリイホーミイホールディングス社内の人事研修に積極的に取り入れた結果、同グループ中核を担うスーパーマーケット事業株式会社エブリイは「15期連続2桁増収」「8期連続増益」「1㎡あたり売上高、1㎡あたり営業利益、在庫回転率全国1位」という大きな成果を上げることができました。
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