※高城未来研究所【Future Report】Vol.407(2019年4月5日発行)より

今週は、エルサレムにいます。
この街は、紀元前1000年頃ダビデ王により古代ユダヤ王国の聖都とされ,その後イエスの処刑と復活の地としてキリスト教の聖地となり、 638年にはアラブの支配下に入り、メッカ,メジナに次ぐイスラム教の第3の聖地となったことから、現在も、みっつの宗教が主権を主張しています。
実際はもっと複雑で、例えばキリスト教だけをみても、ギリシャ正教、ローマ・カトリック、アルメニア正教が各々の主権を主張しており、近年もキリストが埋葬されていると言われる聖墳墓教会内(かつてのゴルゴダの丘)で、ギリシャ正教の司祭とアルメニア人が乱闘を繰り広げました。
また、ユダヤ人と言っても、もともと中東にいたアラブ系ユダヤ人とは別に、改宗したハザール王国系の東欧系ユダヤ人や、ソ連が崩壊した時になだれ込んできたロシア系ユダヤ人、さらに世俗派や正統派などが入り組み、「ユダヤ人」と一括りにできません。
人数が多いことから、ポーランド系ユダヤ人が政治的に力を持ち、モロッコ系ユダヤ人は、アラブでありながらイスラエルでもある不安定なアイデンティティを持つことから愛国心が強く、それゆえ軍隊に大勢います。
観光客がタクシーに乗るにしても、ドライバーの「素性」を理解する必要があり、もし、チェックポイントを通過してパレスチナに行くなら、ユダヤ人ドライバーでは行くことができませんので、アラブ人ドライバーのタクシーに乗らねばなりません。
わずか0.9平方キロメートルしかないエルサレムの旧市街も、ユダヤ教徒地区、イスラム教徒地区、アルメニア正教徒地区、キリスト教徒地区に分かれており、アルメニア人はキリスト教徒ですが、歴史的な問題から「別の宗教」と考えられています。
エルサレムの中心地にある「岩のドーム」は、様々な宗教の聖地でありますが、現在はイスラム教徒が管理しており、異教徒は立ち入ることができません。
南西の壁の外側の一部「嘆きの壁」だけ、ユダヤ教徒の管理下にあります。
また、全体の警備はイスラエルが受け持っており、このような複雑かつ不安定な状況から、現在は「世界遺産」であると同時に「世界危機遺産」に認定されるようになりました。
しかし、現実的な話をすれば、インフラから補修、および警備に至るまで、イスラエルなくてはエルサレムは、もはや街として成立しません。
実際、パレスチナ人を含むほとんどのイスラム教徒もアルメニア正教徒もキリスト教徒も、口にはなかなか出せませんが、イスラエルを頼りにしているのが伺えます。
チェックポイントを超えて、パレスチナに出向くとわかりますが、そこには強い目的と高い意識があっても、職がありません。
それゆえ、多くのパレスチナ人は、日々イスラエルに出向き、仕事をして対価を得て生活している現実があります。
少し穿った見方をすれば、パレスチナ難民をいつまでも救えないのは、歴史の足かせ所以なのです。
モザイク都市エルサレムは、歴史と現実の狭間で揺れながら、複雑なパズルを各々がより複雑にしています。
この決着は、誰もが現実を受け入れない限り、当面見えません。
歴史的に正しいことと食えることを、人々はどのように整理しなければならないのか。
「モザイク都市」エルサレムで考える今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.407 2019年4月5日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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