人間が椅子の気持ちを感じる日
宇野 そういう思想を抱いている加賀谷さんは、ニューロウェアプロジェクトを通じて実現されていく、人間の非言語的な感情や感覚がデータを通じて共有される社会に、どんなビジョンを持っているのでしょうか。
加賀谷 人間が常に環境とコミュニケーションするようになるのが、最終的な姿だと思っています。人と人から始まったコミュニケーションが、いまは人と情報になり、人と機械になっている。それが、やがては人と家、人とストリート、人と街、人と世界……というように、どんどん広がっていく。こういうことが、絵空事じゃなくなるというのが、一つあると思いますね。
それは、いわば「モノの気持ち」が理解できるということですよ。まだ僕はここにある椅子が何を感覚しているかは理解できないけれども、やがて非言語的にそれを感じられるようになる。
宇野 まさに本居宣長は「もののあはれ」で、そういう言語の発達によって切り捨てられてしまった感覚を指摘していたのだと思いますね。そして、加賀谷さんは実はそれを非言語的なものを通じて回復しようとしているわけですね。
加賀谷 まさに、そうです。でも、それって小説で「好き」ということを表現するときに、そのまま「好き」と書く人はいないという話と同じだと思うんですよ。むしろ風景描写のようなものに込めて、その感情を表現したときにこそ、ディープに伝わるじゃないですか。そういう意味では、情報技術による「もの」の表現が、そこに到達し始めているのだと思います。
実際、テクノロジーの発展によってCPUとセンサーのコストが劇的に下がってきているんです。そうすると……
(続きはメールマガジン「ほぼ日刊惑星開発委員会」でお楽しみください)
※この記事は、メールマガジン「ほぼ日刊惑星開発委員会 2014.7.9 vol.100
『もののあはれ』の実装は可能か――「necomimi」作者・加賀谷友典が師・江藤淳から継承した思想」からの抜粋です。全文はメールマガジン「ほぼ日刊惑星開発委員会」をご購読ください!
メールマガジン「ほぼ日刊惑星開発委員会」とは?
評論家の宇野常寛が主宰する、批評誌〈PLANETS〉のメールマガジンです。 2014年2月より、平日毎日配信開始! いま宇野常寛が一番気になっている人へのインタビュー、イベントレポート、ディスクレビューから書評まで、幅広いジャンルの記事をほぼ日刊でお届けします。 【 料金(税込) 】 864円 / 月 【 発行周期 】 ほぼ毎日(夜間飛行では月に1度、オリジナル動画を配信いたします) 詳細・ご購読はこちらから! http://yakan-hiko.com/hobowaku.html
その他の記事
成功を導くのは、誰からも評価されない「助走期間」だ–天才を育む「ひとりぼっちの時間」(ソロタイム)(名越康文) | |
虚実が混在する情報の坩堝としてのSNSの行方(やまもといちろう) | |
『心がスーッと晴れ渡る「感覚の心理学」』著者インタビュー(名越康文) | |
なかなか技あり、行列を緩和する「イベントアプリ」(西田宗千佳) | |
「テキストをwebで売る」のこれからの話をしよう(小寺信良) | |
ポストコロナ:そろそろコロナ対策の出口戦略を考える(やまもといちろう) | |
「本気」という無意識のゴンドラに乗るために(名越康文) | |
αショック:オートフォーカスカメラの登場(高城剛) | |
言葉で言い表せない不思議ななにかが起きるとき(高城剛) | |
オーバーツーリズムでニセコ化する草津(高城剛) | |
「科学」と「宗教」、あるいは信仰における「公」と「私」(甲野善紀) | |
自分らしくない自分を、引き受けよう(家入一真) | |
「5類」強行の岸田文雄政権が僕たちに教えてくれたもの(やまもといちろう) | |
揺れる「全人代」が見せるコロナと香港、そして対外投資の是非(やまもといちろう) | |
週刊金融日記 第291号【SegWit2xのハードフォークでまた天から金が降ってくるのか、日経平均は1996年以来の高値にトライ他】(藤沢数希) |