城繁幸
@joshigeyuki

城繁幸×竹田圭吾特別対談(その1/全3回)

日本の30代以上だけが気づいていない「ノーリスクのリスク」

 リスクが少ない世界で20代を過ごすリスク

 

187A6647sm:先日、イギリスの経済誌『エコノミスト』の東京支局長から取材で、日本の終身雇用について話をしたんです。「終身雇用というのは、日本型雇用の代名詞となっていますが、日本のすべての企業が守れているわけではありません。実際に守れているのは大企業や官庁だけです。そして相対的に高い能力を持った人は、失業リスクの少ない大企業や官庁に就職することを目指します」と話したら、こんな反応が返ってきたんです。「リスクの少ない環境で貴重な20代を過ごすことこそ、一番リスクが高い選択ではないですか」と。

本当にその通りで、実際、一部の学生は気づき始めていますね。東大生を見ても、大企業やキャリア官僚など「従来型のエリートコース」をあきらかに避け始めています。

日本も他の国々と同じように、否応なく「雇用が守られないことを前提とする社会」に変わりつつある。これは文句を言っても仕方がない。戦後のある一定期間があまりにもうまく行き過ぎていただけで、それは永遠に続くものではないということですね。ただ、それに気づいて今からどんな雇用状況になっても対応できるように準備を始める人と、社会の変化を「見ないふり」してただただ過去を懐かしみながら過ごす人では、それこそ「10年後の幸福度」に大きな差が出ると思いますね。

 

竹田:10年後の未来予測ということで言えば、「グローバル化」という言葉が死語になっていると私は思います。まず、「グローバル」と言えば、「外資が参入してくる」「輸出型の産業が有利になる」というように、「入ってこられる」か「こちらから出ていく」かの「一方向」の感覚で捉えられていましたが、これからは違うと思います。

一方向型ではなく循環型になる。キャリアという側面から考えても、日本人が海外でのキャリアパスを考えると同時に、海外の人が日本で働くことを考えるのが当たり前になる。「ドメスティックな仕事」と考えられていた職種についても、世界を舞台にした仕事だと考えることが当然のようになる。「グローバル化」とか「国際化」と呼ばれて注目されていたさまざまな現象がすべて「当たり前のこと」になってくるのが、これからの10年なんだろうと思います。

問題はそうした変化にどう対応していくかですが、僕は20代以下の人については楽観視しているんですね。なぜなら、若い彼らの意識は、周囲の状況に合わせて自然と変化しているからです。東大生と言わなくても、中堅レベルの大学の学生からも、「卒業したらマレーシアの会社で働きます」という話をわりと普通に聞く時代になっています。キャリアについて特別に意識が高い学生でなくても、彼らは自然と環境に対応してきている。

僕が心配しているのは、今すでに働いている世代が、「10年後の日本」に対応できるのかです。30代から40代の人たちの意識は変わるのか。彼らは今何をしなくてはならないのか。これは大きな課題だと思いますね。

 

40代以降の転職は即戦力として強い

 

竹田: それこそ40代にもなると、体力的に無理もきかなくなるし、意識の上で「人生の回収モード」になって、どうしても守りに入ってしまう人も多い気がします。それに、親の介護などプライベートのことも考えると、身動きが取れなくなる人もいるはずです。何より雇う側に「30代、40代に新しい仕事をしてもらいたい」というニーズはあるものなのでしょうか。「ニーズがないのであれば、個人的にいくら頑張っても仕方がない」とあきらめてしまう人も多いかもしれない。

 

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:「35歳転職限界説」という言葉があるように、確かに、いわゆる大企業や伝統的な企業は年齢を重視します。35歳以上で転職をしようするならば、マネジメントを経験しているかよほどの専門的技術をもっていないと厳しい。これは日本の大企業には、年齢給・生活給という概念があるからです。

本来は、こなした仕事の質・量に応じて、払われる給料は決められるべきだと思いますが、日本の大企業では「45歳大卒の人であれば、子どもを大学に行かせられるくらいの給料を払わないといけない。そうするとベースは年収800万円か。ちょっと負担が大きすぎるな……」と考えてしまう。だから、年齢が高くなった人の転職が厳しくなっているんです。

ただ、即戦力が必要な中小企業や新興企業は、むしろ40~50代の採用を増やしています。中途採用の面接をする人事の側からすると、40代というのはスキルや経験があって、不良社員でない限りは、新卒の学生なんか比べものにならないくらい優秀なんですよ。ですから、「中小企業やベンチャー企業でもいい」と覚悟を決めることができるならば、実は40代の転職は「強い」んです。

もっと言えば、ITバブルの頃までは、新卒採用が採用の究極の理想だったんです。だから成長している企業は、事業が軌道に乗ってくると、社長が必ずこう言うんです。「うちもそろそろ新卒採用をやってみようか」と。だけど、今は風向きが完全に変わってきていて、大手も中途採用に力を入れてきている。中小は昔から中途採用をやっていたので、ノウハウがたまっていて、むしろ大手以上にうまくいっているケースが多い。

 

竹田:なるほど、中小企業のほうがある意味で「先」をいっていると考えると面白いですね。

 

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城繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。

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