簡単に肌にしみこんだら世界は大変なことになる
そうだなあ、もしも皮膚がいろんな物質を簡単に透過させるとしたら…大腸菌その他が体内に入っちゃうから、うっかりトイレでオシリも拭けないよ? というか、トイレ掃除が命がけになるね。
入浴剤とか使うと、多分蛍光塗料で染めたみたいに全身が染まるよ? 口紅使うと、クレンジングでも落ちなくなるよ? そして、食器洗い洗剤を使って食器洗いとか絶対無理。シャンプーで洗髪も出来ないな。
まあというわけで…ほぼあらゆる物質は皮膚を透過しないんだけども、例外的に皮膚を透過するものもあるんだよね。ある条件を満たすと皮膚を透過するのです。インドメタシンやボルタレンの塗り薬が筋肉の痛みを緩和するのはそのせいだからね。
さて、ああいう薬はなんで皮膚を通り抜けられるのか。
まずは、分子量が小さいこと。正常な皮膚の場合は、分子量500が皮膚を透過するかしないかの分水嶺になります。分子量ってのはなんなのかというと。…コレもめんどくさいんだけども。簡単に言うと、分子量は、分子を作っている成分の元素の、原子量を全部足したもの、です。えーっと、例えば。H2Oで水、なんだけど、コイツの分子量は、
Hの原子量は1.01
Oの原子量は16.0
なので、
1.01×2+16.0≒18.0
となります。つーことで、水は皮膚を通り抜けられるんだわ。だから、お風呂に入り過ぎると水でふやけてくるでしょ。生きているカラダには、体液濃度を一定に保つ仕組みがあるから、ふやけきっちゃうことはないんだけどね。ちなみに、ヒアルロン酸は分子量100万前後、コラーゲンは30万前後。分子量が大きすぎて、皮膚は通り抜けられないよー。
次に、脂溶性と水溶性の両方の性質を合わせ持っている方が、皮膚を通り抜ける力が強くなります。これは、皮膚の一番表面を覆っている角質層は脂溶性のものが吸収されやすく、角質層よりも下は水溶性のモノのほうが吸収されやすくなってるからなのだ。
角質層を出来る限り取り除くと、皮膚の吸収力は強くなるそうで。ケミカルピーリングって聞いたことある? 弱い薬剤を使用して、角質層を溶かして、皮膚の新生を促す美容法なんだけど、ピーリングの弱いのを行ってからだと、いくらか皮膚へ化粧品の成分が吸収されやすくなるみたいです。
けれど、そのかわり、皮膚のバリア機能も破壊されているので、ピーリング施術後は刺激や異物に弱くなります。日光に当たるのもダメ。シミができちゃったりするからね。角質を取り除くのは皮膚を新生させるには良い方法だから、ごくたまによわーいピーリングを行なってやる程度が一番良いです。薬剤使わなくてもできるしね。月に一度くらい、シルクの布でかるーく顔をぬぐってやるだけでOKなのよ。
で、水溶性と脂溶性の両方の性質を持っているもので一番身近なものって、界面活性剤です。合成洗剤が一番最初に思い浮かぶかも知んないね。でも、石鹸も界面活性剤なんだ(参照)。
このページにある親油基と親水基って図を見てください。
親水基は、水に溶ける性質、親油基は油に溶ける性質を持ってんの。一つの物質が両方の性質を併せ持っているのです。 こういう性質を持っている物質は、水と油を混ぜることが出来ます。
境「界面」を活性させられるから「界面活性剤」ね。乳化剤って呼ばれているものも、界面活性剤です。水と油を混ぜあわせてコロイド化(平たく言えば油を細かいつぶつぶにして、液体が白く濁るようにすること)することを「乳化」って言うのだ。これをする薬剤が、乳化剤。やってることは同じでしょ、界面活性剤と。
こうやって作っているのが「乳液」ってヤツなのだ。だから、私は保湿にオイルを使うのです…乳液には「乳化剤」が使われているから。
水溶性ビタミンCって言われるアスコルビン酸ナトリウムは、分子量は198.11なんだけど、油に溶けないのだ。皮膚を通り抜けられる油溶性ビタミンC誘導体ってのがありまして。テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルってのが一般的なものらしく。油溶性なのはいいんだけど、分子量が1129.76なので大きくて皮膚を通り抜けられないと思う。もう一つがパルミチン酸アスコルビルで、こっちは分子量414.54。ギリギリ透過する大きさだけど、これ、親水性はどうなんだろ。調べてみたけど出てこなかったです。
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