一度「仕事」を失ってしまうと、もう戻れない……。今の日本社会は、一度失敗してしまうと極度に再チャレンジしにくい仕組みになっている。『「10年後失業」に備えるために読んでおきたい話』の著者城繁幸氏と、『無業社会-働くことができない若者たちの未来』の著者西田亮介氏が、日本の「失業・無業」の厳しい実態と、社会的な対応策、そして、「私たちが今できること」を語り合った。
無業者とはどんな人なのか?
西田:新刊のタイトルにもした「無業社会」とは、字面としては、ただ単に「仕事がない社会」ということになります。でも、本書ではもう一歩踏み込んで、「仕事を失いやすく、誰もが無業状態になる可能性があるにもかかわらず、一旦その状態になってしまうと抜け出しにくい社会」のことを「無業社会」と呼んでいます。
15歳~39歳の若年無業者の数は、200万人にも上るわけですが、これはもう「一部の若者の問題」ではなくて、日本社会全体で解決に知恵を絞るべき「社会問題」だというのが僕たちの認識です。
城:無業状態に陥る人というのは、何か特徴があったりするのでしょうか。
西田:実は無業の人とそうでない人のあいだに明確な線引きはできません。「無業状態になった」と言うと、日本では基本的に「働かないあなたが悪い」という話になります。「ニート」が注目された時もそうでしたが、多くの人は「どうせ家に引きこもってゲームをしているだけだから仕事が見つからないんでしょう」と思っている。
でも、厚生労働省の統計を見ても、僕らが独自に2333人にアンケートした結果を見ても、無業状態になるきっかけとしては、病気とケガが主たる原因となっています。つまり、必ずしも自己責任で片付けることはできない理由によって無業状態に追い込まれている人が多い現状があります。
学歴の観点からみても、四大卒であっても無業状態に陥ってしまう事例はたくさんあります。対人関係の構築が苦手な人が営業職に配属されて何もかもうまくいかなくなってしまったり、就職してみたらブラック企業で、その会社を辞めたら次の就職が見つからなくなってしまったり……。予見不能で、誰にでも「無業状態」に陥る可能性はある。これは個々人の「怠け」や「やる気不足」で片付けていい問題ではないはずです。あと、僕たちの調査では、まじめで、しかし自己評価が低い人が多いという結果が出ています。これも不真面目さを追求する通説とは離れた、意外な知見ではないでしょうか。
城:無業状態に陥る可能性は誰にでもある、というのはよく分かりますね。考えてみると、私のまわりにも大企業に就職してバリバリ働いていたのに、ふとしたきっかけで会社を辞めたと思ったら、その後連絡がつかなくなった……という人が何人かいます。
そうなってしまう人たちと、そのまま働き続けている人たちの差がどこにあるのかと言われてもわからない。実は、私自身も20代の中頃に「もう仕事を辞めて、バックパッカーにでもなろうかな」と思った時期があるんです。それで週末に実家へ相談したら、月曜日の朝になって母親から泣きながら「今まで何のためにお前を育ててきたと思ってるんだ」と電話がかかってきて、一週間ブルーな気持ちで過ごした記憶があります。

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