日本は「最先端」の物語を生きる国
家入:そういった意味でいうと、僕は日本が世界中で先端をいっているような気がしています。今の発展途上国は、まだ追い求めるものがあるじゃないですか。でも日本はもう全部追い求めた結果の、これからのストーリーがない時代を生きようとしている。そのストーリーは、ほかのどの先進国もまだ描けていないと思うし、日本から始まる物語があるんじゃないかと勝手に妄想したりするんですけど。
上祐:それは非常に興味深い視点ですね。アジアのなかではいち早く軍事大国になって失敗し、いち早く経済大国になってバブルが崩壊し、しかも原発事故で技術大国としても揺らいでいる。そして、いち早く超高齢化社会に入っていく。そういった先進国のなかの先進国みたいな、これまでアメリカとかヨーロッパがリードしてきた文化というものを、日本が新たに切り開いってもいい条件があると思います。
家入:そうなんです。で、これからの生き方を考えるときに、やっぱり「宗教」は避けて通れないと思っています。日本では「宗教=カルト」という反応があるじゃないですか。もしかしたら海外も同じなのかもしれないですけど。
上祐:あるじゃないですかもなにも、私自身が、まあ20世紀、日本戦後史上最大のカルト、オウム真理教というものに……
家入:あの、オブラートに包もうと思ったんですけど。
会場:(笑)
上祐:皆さんには、いろいろご迷惑をかけました。この場を借りて、当時の教団の幹部として、皆さんにご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げたいと思います。
実は、都知事選に立候補された宇都宮健児先生は、オウム真理教犯罪被害者支援機構の理事長で、オウム事件の被害者遺族の方々の賠償のお世話をされています。その関係上、何度かお会いさせて頂いています。舛添さんも、オウム事件のときにテレビであったり、教団施設に取材に来たりされていました。細川元総理は、麻原元教祖の出身地の熊本に教団が進出した時にちょうど熊本県知事で、教団と地域住民が対立する中で、細川さんに刑事告発を受けたりなど、いろいろありました。
家入:それは何年前の話ですか?
上祐:舛添さんに会ったのは、事件が起きた1995年の時ですから、もう19年くらい前ですね。細川さんが熊本県知事として教団と対立したのは1990年ですから、もう24年くらい前。そういった方々が20年後の都知事選に出ていくなかで、若手で目立っていた家入さんには期待しました。でも、当日は私は名古屋にいて、雪で帰ってこれなかったので、どなたにも投票できなかったという。
家入:オウム事件ってもうそんなに前なんですね。僕はもちろん記憶ありますけど、ここにいる若い人はどうなんだろう?
上祐:今30代前半の人は、当時中学生だから明確に覚えていると思いますが、それより下の20代の人はわからないかもしれないですね。
家入:全然わかんないと思いますよ。で、上祐さんは今は「ひかりの輪」という活動をされていますが、これは宗教ではない?
上祐:ひかりの輪は、何かを絶対視したり、崇拝せず、宗教ではありません。仏教などの東洋哲学や西洋に始まった心理学を含めて、主に心の幸福を目的として、東西の思想・哲学を学習する団体。教室です。だから宗教を扱うときは、幸福になるための哲学として扱っています。それによって、過去の宗教の盲信からくる問題を乗り越えようと志向しています。宗教のど真ん中からは距離を置き、幸福の思想・哲学としてやっていこうというのが、私たちの試みです。
家入:へえ……。だから、宗教法人ではなく団体という形なんですか。
上祐:そうですね。
いつの間にか教祖ではなく、自分自身を信じてしまう
家入:ひかりの輪が、上祐さんを中心とした集まりにならざるを得ないところもありますか? 僕自身もいろんな発言をしていくなかで、僕だったら何とかしてくれそうって考える子が集まってくる。そういった子たちに何かしてあげたいとは思いますけど。
上祐:人の集いっていうのはご縁でできるし、何かの団体っていうのは宗教であろうとなかろうと、求心力のある人が立つっていうのは自然なことだと思います。ただその一方で、集まった人たちがその人を絶対視すると過剰に依存するし、絶対視できる人にめぐり会った自分を絶対視していく。自分の経験から、信者というのは、教祖を絶対視しながら、気づかないうちに、他人から見れば、あたかも自分を絶対視しているような状態になると思います。唯一の存在にめぐり会った自分はすごい存在っていうことで。そこが宗教の一番の問題であり、麻薬的なところです。
信者がいつの間にかに、教祖ではなく、自分自身を信じちゃう。教祖が絶対だと信じながら、自分はその絶対の人にめぐり会えた存在だという風になっていくってことがある。いわゆる共依存関係です。教祖は信者に信じてもらい、信者は教祖を信じることによってお互いが絶対になり、その教団全体が絶対的な存在になっていって、いわゆる自尊心の渇きを満たす。そういった問題があると思う。
家入:男女関係みたいですね。
上祐:うん、まあ、「あなただけよ」「わたしだけよ」っていう。そういった教祖と信者の関係は、恋愛関係の一部分と微妙に似ているところはある。だから、こういっていいかわからないけど、恋愛で「あなただけよ」っていうのが本当かどうか疑う人いるよね。今オウム公判とかやってますけど、同じように教祖と信者の関係においても寝返る人もいるし、いろいろある。
とにかく、宗教っていうのはひとつの特徴として、教祖の絶対視を通した信者の自己絶対化という一面があります。そういうのに人が集まる理由には、自己存在価値が見当たらない不安というのが、やっぱりあるみたいですね。それを埋め合わせるために宗教に入れば、自分たちが選ばれた民になれる。そういう面に惹かれるというのはあるかもしれない。
でも、そういう風にやっていくと、最初はいいが、あとからだんだん毒がまわってくるという問題がある。だから、教祖と信者の関係っていうのはバランスが重要だと自分は思います。教祖の存在が強すぎれば、それによって教祖も信者も自滅するが、全く同じだったら求心力がない。絶対的な関係だと自滅してしまうし、そのバランスがすごく重要だと思います。
家入:なるほど。ダメな男との共依存関係の恋愛が、悲惨なことになるのと同じですよね。
上祐:まぁ、そうでしょうね。過剰な支配欲を持った男性と、依存的な女性がセットになると、最初はお互いよくても、だんだん思いもよらぬ展開になる。ちょっと暗い話になったかな?
※この記事は、去る3月13日ロフトプラスワンにて行われた家入一真×上祐史浩『リアルお悩み相談室 vol.3』をもとに再構成したものです。全文は家入一真メールマガジン「家入学級」でご覧いただけます。
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