岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海の競争考(その19)

夕陽的とは何か?(後編)

「変わらないものが尊い」わけではない

赤ん坊に限らず、成長、変化の早いものは見ていて面白い。成長、変化の早い人間というのは、周囲から注目、評価されやすい。それゆえ、周囲から注目、評価されるためには、成長、変化のスピードを「早く」するというのも一つの方法だろう。成長、変化を早くしていくことに主眼を置けば、さまざまな問題を解決していけるようになる。

その逆に、成長しないもの、変化しないものは面白くない。それは「夕陽的」ではなく、だからこそ、間違っているし、美しくないということができよう。よく「変わらないものは尊い」と表現したりするが、それは言葉の言い回しで、本質的な意味ではない。なぜなら、この言葉は「夕陽」にも当てはまるからだ。夕陽だって「古代からずっと変わらずに美しい」ということができるのだ。

しかしながら、夕陽そのものが変わらなかったことは、有史以来一度もない。そこで変わらないのはあくまでも「夕陽の美しさ」だけであって、夕陽は常に違う顔を見せ続けているのだ。その意味で、変わらないことが必ずしも尊いわけではない。変わらないものが尊いのは、唯一、夕陽のように「変化し続けるという意味において変わらないケース」のみであろう。

 

次回からは、話題をがらっと変えて、実践的な話をしていきたい。そこでは、競争にあたるうえでのマインドなどについて語っていく。「勝つ」ということのシンプルで原初的な欲動とは何かということについて、掘り下げていく。

 

※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!

 

岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」

35『毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。』 このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。

【 料金(税込) 】 864円 / 月
【 発行周期 】 基本的に平日毎日

ご購読・詳細はこちら

http://yakan-hiko.com/huckleberry.html

 

岩崎夏海

1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

1 2
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

その他の記事

地上で幸せになるためには、絶対に手に入らないものについて考えるのが良い(茂木健一郎)
世界は本当に美しいのだろうか 〜 小林晋平×福岡要対談から(甲野善紀)
日本でドラッグストアが繁盛する理由(高城剛)
2021年のベストガジェットから考える新たなステージ(高城剛)
意外に簡単に見られる新4K放送。だが課題も…(小寺信良)
「文章を売る」ということ(茂木健一郎)
夜間飛行が卓球DVDを出すまでの一部始終(第1回)(夜間飛行編集部)
人はなぜ働くのか(岩崎夏海)
4月4日自民党党内処分云々の是非と今後(やまもといちろう)
「テレビに出ている若手ロシア専門家」が古典派ロシア研究者にDISられる件(やまもといちろう)
突然出てきた日本維新の会4兆円削減プランって実際どうなんだよ(やまもといちろう)
交渉の天才としての桃太郎(岩崎夏海)
PTAがベルマーク回収を辞められないわけ(小寺信良)
中学受験に思う(やまもといちろう)
99パーセントの人が知らない感情移入の本当の力(名越康文)
岩崎夏海のメールマガジン
「ハックルベリーに会いに行く」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 基本的に平日毎日

ページのトップへ