「変わらないものが尊い」わけではない
赤ん坊に限らず、成長、変化の早いものは見ていて面白い。成長、変化の早い人間というのは、周囲から注目、評価されやすい。それゆえ、周囲から注目、評価されるためには、成長、変化のスピードを「早く」するというのも一つの方法だろう。成長、変化を早くしていくことに主眼を置けば、さまざまな問題を解決していけるようになる。
その逆に、成長しないもの、変化しないものは面白くない。それは「夕陽的」ではなく、だからこそ、間違っているし、美しくないということができよう。よく「変わらないものは尊い」と表現したりするが、それは言葉の言い回しで、本質的な意味ではない。なぜなら、この言葉は「夕陽」にも当てはまるからだ。夕陽だって「古代からずっと変わらずに美しい」ということができるのだ。
しかしながら、夕陽そのものが変わらなかったことは、有史以来一度もない。そこで変わらないのはあくまでも「夕陽の美しさ」だけであって、夕陽は常に違う顔を見せ続けているのだ。その意味で、変わらないことが必ずしも尊いわけではない。変わらないものが尊いのは、唯一、夕陽のように「変化し続けるという意味において変わらないケース」のみであろう。
次回からは、話題をがらっと変えて、実践的な話をしていきたい。そこでは、競争にあたるうえでのマインドなどについて語っていく。「勝つ」ということのシンプルで原初的な欲動とは何かということについて、掘り下げていく。
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岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
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岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。


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