岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海の競争考(その27)

苦手を克服する

苦手を克服できる人

苦手を克服できる人はどういう人か? それは、メタ的な思考の持ち主だ。そして、自分自身を疑うことができる人だ。具体的にいうと、「苦手」とはそもそも何か?――ということを理解できる人だ。「苦手」というのは、実は怠けるために設けられた「心理的バイアス」に他ならないのである。

人間が何かを習得するためには、努力しなければならない。しかし、努力には膨大な手間と精神力とが要求される。人は、それをかけることの困難さに挫けそうになる。そうしてやがて、努力をしなくても済む理由を探し始める。「苦手」は、その心の隙間に入り込むのだ。怠けたいと思っている人に、格好の「言い訳」を与えるのである。

人間には、そもそも「苦手」はない。人間のDNAはほとんど同じだし、生活形態もそっくりだ。人は多様である以上に一様である。人間同士の違いと、人間と猿との違いを見比べれば、人間同士がどれだけ同じかよく分かるはずだ。くり返すが、人間にはそもそも「苦手」がない。あるのは、単に「習熟度の差」だけだ。どんな能力も、習熟すれば――言い換えるなら努力をすれば――身につくのである。

だから、苦手を克服するためには、まずは自分の苦手意識を疑うところから始める必要がある。自分が苦手とすることは、心理的バイアスがかかった結果に過ぎない。怠けるための言い訳に過ぎないのだ。まずは、そのことを認識することから始める。

次いで、それを克服できると信じる。信じるに足る理由はいくらでもある。どんな能力でも、それを身につけている人がいるはずだ。まずは、その能力に習熟している人を見て、なぜ彼がそれを習熟できたかを考えるのだ。例えば、バスケットボールのディフェンスが苦手な人は、それが上手い人のところへ行って、なぜ彼がディフェンスを習熟できたかについて考える。言い換えるなら「なぜ彼には『ディフェンスが苦手』という心理的バイアスがかからなかったか?」を考える。

するとそれは、驚くべきことにこんな理由である。「オフェンスが苦手だったから」

何かに得意という人は、これもやっぱり心理的バイアスの結果である場合がほとんどなのだ。バスケットボールで「オフェンスを苦手」と思ってしまった人は、「ディフェンス」が得意になる。その逆に、「ディフェンスが苦手」と思った人は「オフェンスが得意」になる。なぜかといえば、等価交換の心理が働いているからだ。「苦手意識」の逆の「得意意識」を持つことができ、努力を厭わなくなるのである。

だから、苦手を克服しようと思ったら、まずはその能力に「得意意識」を持つことだ。それが無理というのなら、その逆の能力に擬似的に「苦手意識」を持つのである。そうして、等価交換の心理を働かせ、その能力への得意意識を持つよう自己暗示をかけるのである。
次回は「努力する」ということについて述べる。

 

※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!

 

岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」

35『毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。』 このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。

【 料金(税込) 】 864円 / 月
【 発行周期 】 基本的に平日毎日

ご購読・詳細はこちら

http://yakan-hiko.com/huckleberry.html

 

岩崎夏海

1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

1 2
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

その他の記事

厚労省統計問題の発生理由が“プログラムのバグ”とされていることに感じる疑問(本田雅一)
フースラーメソード指導者、武田梵声の大阪講演2017開催決定!(武田梵声)
今週の動画「切込入身」(甲野善紀)
狂気と愛に包まれた映画『華魂 幻影』佐藤寿保監督インタビュー(切通理作)
人間は「道具を使う霊長類」(甲野善紀)
身近な人に耳の痛いアドバイスをするときには「世界一愛情深い家政婦」になろう(名越康文)
実力者が往々にして忘れがちな「フリーランチはない」 という鉄則(やまもといちろう)
脱・「ボケとツッコミ的会話メソッド」の可能性を探る(岩崎夏海)
今の時代にパーソナルコンピューターは必要か?(本田雅一)
ロバート・エルドリッヂの「日本の未来を考える外交ゼミナール」が2017年8月上旬にオープン!(ロバート・エルドリッヂ)
会員制サロン・セキュリティ研究所が考える、日本の3つの弱点「外交」「安全保障」「危機管理」(小川和久)
自分をさらけ出そう(家入一真)
歴史と現実の狭間で揺れる「モザイク都市」エルサレムで考えたこと(高城剛)
なぜか「KKベストセラーズ」問題勃発と出版業界の悲しい話(やまもといちろう)
スウェーデンがキャッシュレス社会を実現した大前提としてのプライバシーレス社会(高城剛)
岩崎夏海のメールマガジン
「ハックルベリーに会いに行く」

[料金(税込)] 864円(税込)/ 月
[発行周期] 基本的に平日毎日

ページのトップへ