岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海の競争考(その27)

苦手を克服する

※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!

岩崎夏海の競争考(その27) 苦手を克服する

競争に勝つためには苦手を克服しよう

今回から、競争に勝つための具体的な方策について指南していく。まずは、「苦手を克服する」ということについて。

多くの競争について書かれた本が、「苦手を克服してはならない、その逆に長所を伸ばすべき」と書かれている。しかし、それは端的にいって誤りだ。苦手が克服されない人が競争に勝てた試しはない。勝つことは、苦手を克服した先にある。なぜなら、勝つことは以前にも述べたように「全てを兼ね備えた圧倒的なもの」であるべきだからだ。

例えば、バスケットボールのマイケル・ジョーダンは、シュートが得意だった。しかし、ディフェンスが苦手だったら、それは果たしてジョーダンといえるだろうか? 野球のイチローは、ヒットを打つのが得意だ。しかし、肩が弱く、ランナーを差すのが苦手だったら、それはイチローといえるだろうか? 将棋の羽生善治さんは、終盤の粘り強さに定評がある。しかし、序盤の駒組みが苦手だったら、それは羽生さんといえるだろうか?

圧倒的な勝利をする人というのは、オールラウンドプレイヤーである。長所が複数ありつつ、短所がないのだ。なぜそれが可能かといえば、「等価交換的な考え」に縛られていないからである。彼らは、「胸が大きい女性だからといって、頭が悪い必要はない」と思っている。胸が大きくても、頭が良くたっていいではないか、と考える。そういう二者択一、トレードオフ的な考え方に縛られない。どっちも取る――それが彼らの流儀だ。

苦手は、克服されなければならない。「苦手を克服するな」というのは、単に苦手を克服できない人への慰めか、あるいはまやかしに過ぎない。なぜこのような言説が広まったかといえば、苦手を克服する方法を知らないまま闇雲にそれをしようとしても、時間を浪費してしまうからだ。つまり、多くの人が苦手を克服する方法を知らないのである。それを伝授できないので、知らないものには取りかかるな、と言っているのだ。

「苦手を克服する方法」は、ほとんどの人が知らない。これまで方法論化されたこともほとんどない。なぜか?それは、とても難しいからだ。苦手を克服するには、メタ的な思考を持ち、自分自身を疑う必要がある。

 

1 2
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

その他の記事

季節にあわせて世界を移動する食のブローカー達(高城剛)
「美容手術後の合併症」と医師法改正、そして医療DXと医療提供体制改革(やまもといちろう)
変換エンジンを一新したATOK 2017 for Macが来た!(小寺信良)
高橋伴明、映画と性を語る ~『赤い玉、』公開記念ロングインタビュー(切通理作)
「+メッセージ」はBot時代への布石だ(西田宗千佳)
「常識」の呪縛から解き放たれるために(甲野善紀)
太古から変わらぬ人間の身体と変わりゆく環境の間を考える(高城剛)
突然蓮舫が出てきたよ都知事選スペシャル(やまもといちろう)
生まれてはじめて「ジャックポット」が出た(西田宗千佳)
「自己表現」は「表現」ではない(岩崎夏海)
そもそも国にGAFAなどプラットフォーム事業者を規制できるのか?(やまもといちろう)
“コタツ記事”を造語した本人が考える現代のコタツ記事(本田雅一)
「ブラック企業」という秀逸なネーミングに隠された不都合な真実(城繁幸)
冬の間に眠っていた体内の問題が目を覚ます季節(高城剛)
日本でも始まる「自動運転」(西田宗千佳)
岩崎夏海のメールマガジン
「ハックルベリーに会いに行く」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 基本的に平日毎日

ページのトップへ