お金はもらわないけど、ボランティアでもないリバ邸
ひでつう:普段僕は「家ちゃん」って呼んでいるので、あえて普段通りに、雑談みたいな感じで、進めていきます。
家入:あの、さっきの説明で(僕のこと)わかってもらっているのかな?
ひでつう:みんな予習復習しているから大丈夫だと思うんですけど、足りなかった部分、「こういうこともやってるよ」とかがあれば。
家入:うーん、起業だけの話をしちゃうとビジネスビジネスした人なんだって思われるんですけど、実際には、例えば「リバ邸」というシェアハウスを日本中に展開していたりもしてます。そっちはどちらかというとNPO的な動きですね、利益は出さない。
ひでつう:リバ邸は本当に面白い仕組みで、シェアハウスなんですけど、普通のシェアハウスじゃないですよね。簡単に説明してもらってもいいですか?
家入:シェアハウスと一口に言ってもいろんなシェアハウスがあると思うんですけど、ま、テラスハウスみたいにお洒落な感じではないですね。僕らがやっているシェアハウスは。
ひでつう:ああいう素敵なサムシングが生まれる感じは、
家入:全くないですねえ。なんか、イタすぎる。炎上する奴がうちは多いっていう(笑)。
(スクリーンでサイトを見る)
http://liverty-house.com
家入:はい。全国に今こんだけありますと。
ひでつう:ええビバリーヒルズとかにもあるんだ。
家入:うん。プノンペンとかもあったりして。
ひでつう:まず、リバ邸とはなんぞやからお願いします。
家入:リバ邸は、「現代の駆け込み寺」と呼んでいるんですけど、要するに誰でも来ていい場所になっています。もちろん住むのは限界があるので、住人の数は決まっているんだけど、基本的にリビングを開放しています。で、実際集まってきている子たちはどういう子かというと、例えば学校に行かなくなっちゃってどこに行ったらいいかわからない子とか、会社で働いていたけどうつになって辞めてしまった子とか。いわゆるメインシステムみたいなところからこぼれ落ちてしまった人たちが集まってくる場としてリバ邸をやっています。なぜかというと、僕も中2から学校に行かなくなったので。僕学歴では中卒になっちゃうんですね。で、僕自身が「こういう場があれば行きたかったなあ」という場を作っています。最初は六本木だけでした。
ひでつう:初めの六本木は、いつ頃作ったの?
家入:2年前かな。そこを卒業していった子たちが、またいろんな場所で作ったりして、どんどん数が増えていった。僕らは「居場所」って言ってるんですけど、居場所は日本中にあったほうがいいだろうと。ということで、今日本中に居場所が増えているということですね。これ、増え方がまた面白くて、僕が主導で「次はどこどこに作ろう」とやっているわけではなくて、気づいたらできてるんですね。
ひでつう:勝手にできているんだ。いちいち許可取らなくていいんでしょ。
家入:まあ、そうですね。立ち上げたい子が例えば鳥取で立ち上げたいって言えば鳥取に立ち上がる。
ひでつう:立ち上げ方というページもあるね。
家入:はい。で、ただ住むだけだと何も生まれないので、住みながら何かを探る。一人では何もできない子も、何人かとならできるかもしれない。実際ここに住んたり、通ったりしていた子たちが、起業したりもしています。例えば以前写真家志望の子が住んでたんだけど、その子は、この前チベットで一年間写真撮って帰ってきた。みんながそこでいろんな生きる道を探している。
ひでつう:ただのシェアハウスじゃなくて、テーマがあるんですね。
家入:リバ邸は、月に2〜3万くらいの家賃で住めます。東京は特に家賃が高いので、一人暮らしをすると、その家賃を稼ぐために忙しくなる。最低限生きるために稼がなくちゃいけない。そうなると・・・
ひでつう:手段と目的が入れ替わっちゃう。
家入:そうそう。月2〜3万だったら、まあなんとかなるじゃないですか。週2とかでバイトすれば。
ひでつう:本当ですね。リバ邸は、世の中の枠組みや空気に苦しくなった人たちの居場所。
家入:まあそうですね。そういう人もいますし、普通っていうとあれですけど、普通の子もいて、まあいろんな子がいますね。
ひでつう:なるほど、立ち上げ中のところもいろいろツイートしてるんだね。
家入:そう、立ち上げのときからツイッターなんかを通して仲間をどんどん集めている。
ひでつう:リバ邸ビバリーヒルズがめちゃめちゃ気になる。
家入:なんかね、セレブのお姉さんが場所を提供してくれているんですよね。セブ島ももうすぐできるらしいですよ。
ひでつう:沖縄も。
家入:沖縄も超いいみたいで。手作りで作った建物らしくて、屋上はカフェっぽくしているのかな。鎌倉にもありますし、いろんなところにありますね。
ひでつう:僕、夢があって、50歳までに100人の出世する人を作ってですね、その人から毎月1万円もらおうと思っているんですよ。それでスカイプでいつでも連絡をとって、年に2泊3日ずつ泊めてもらって、自分のランニングコストをゼロにしようと思っているですよ。リバ邸ってあちこちにあるじゃないですか。家ちゃんは、ぷらっと行くとか、寅さん的なことができちゃう?
家入:そうですね。日本全国は網羅していないですけど、例えば大阪とか京都行ったときにフラっと行ったりしてますね。泊まればホテル代も浮きますね。
ひでつう:ちなみにこれって、ビジネスでやっているわけじゃないんですか? すみません。授業なので知っていることもあえて聞きます。例えば月にいくら看板代で収めるみたいなことはしていないの?
家入:ああ、そういうのは全くやっていなくて、家賃と光熱費をそこに住む子たちでわける。それだけですね。
ひでつう:パリーグ、セリーグじゃないですけど、リバ邸っていうシェアハウスの中でリーグがあって、それで家ちゃんがビジネスしたりっていうわけではない?
家入:僕がこれで稼ぐことはないですけど、かといってボランティアで無償でやっているかというと、それもまた違うんですよね。人を助けたいという気持ちはあまりなくて、面白いからというのがベースにある。何が楽しいかって、ここを卒業していく子たちがどんどんいろんな仕事を始めるわけですよね。そこに僕も絡ませてもらう。
ひでつう:今聞こうと思ったことを見事にスパっと言ってくれて、超うれしい。そうなんです。普通に見たら、もっと儲けることができるじゃない。売り上げの何%か納めてもらうとか、そういう話になると思うんです。けど、家入君はここから人が出ていって、例えば起業とかで絡めればいいと。
家入:そうですね。BASEもリバ邸六本木に住んでた子たちが立ち上げたサービスで、急成長しています。そういう、緩やかなつながりをどんどん日本中に作っていくという要素がリバ邸にはありますかね。
だからリバ邸をやることで稼いでいるわけでも、無償でボランティアでやっているわけでもなくて、マネタイズという言葉でいうとすれば、マネタイズのタイミングを頭からずらしているということですね。
ひでつう:みんなわからないかもしれないので説明すると、マネタイズという言葉とは、いわゆるお金に変える。ビジネス化するということです。
家入:例えば自分で作品を作っている人で言えば、その作品を売って、お金に変えることをマネタイズと言いますね。で、それがリバ邸では、単純に「家を提供します、仲介料を家賃に上乗せしてください」っていうマネタイズではない。「もうそこは完全にいらないです。お金はいりません」と。ただ、後でどういった子が生まれてくるか、というところで僕は関わらせてもらう。それがお金になることもある。
ひでつう:家ちゃんて目先のことにガツガツしないじゃないですか。
家入:そうなんですかね。
ひでつう:そこがいつもすごいなあって思っているんですよね。僕なんかもこれまで商売は失敗してきている。目先のことにガツガツしたりとか、「いくら予算があるからなんかやって」みたいな案件をやって、結局うまくいかなかったりして。家ちゃんって、何を基準に自分のビジネスをしているのか、哲学っていうと少しあれなんだけど、それが“人”なのか、なんなのか、教えてもらっていいですか。
家入:物を売ってお金をその場で受け取るっていうわかりやすいビジネスの形態、商売ってあるじゃないですか、例えば飲食店で料理を出します、お会計でお金をいただきますっていうのがシンプルな商売の形だと思うんですけど、僕はあえてそこを崩してみたいんですよね。
ひでつう:なるほど、あえて崩すんだ。
家入:そう、例えば料理を出すけど、お金は要りませんと。ただ、「このままつながって、後々なにかしら一緒にやりましょうね」というところで、後々お金をいただく。結局、その場でお金を受け渡すっていうのは、信用がないからなんですよね。飲み屋でキャッシュオンデリバリーでお酒を提供して、ワンコインで500円貰うっていうのは、信用がないからなんですよ。だけど、その店の常連になって信用ができていれば、ツケがきいたりするわけです。「あの人に奢っておいて」とか、「あの人にツケておいて」とか。信用があれば、そういうことが生まれてくるわけですよね。
ひでつう:なるほど、「クレジットカード」の「クレジット」って日本語にすると「信用」って意味ですからね。
家入:お金自体がもともと信用を形にしたようなものなので。そう考えると、信用みたいなものを一方的に信用してみる。「お金はとりあえずいいです」と。
ひでつう:お金は信用っていうのは家ちゃんをはじめいろんな方々が言っていて、僕もすごく腑に落ちるんですけど、それをさらにワンステップ踏み込んだ感じだね。信用から始めてみる。
家入:そう。で、その信用っていうのは最終的に裏切られるというか、踏み倒されることも覚悟のうえでの信用です。リバ邸に住んでいた子がいきなり夜逃げしても、僕はもう何も言えないわけですよね。けど、「そんなことはしないだろう」と信じてはいるわけですよね。いろんな物事って、信じてみる所からしか始まらないなと思っていて。