人生をいかに生きるか
ニーチェが生きた19世紀は、西欧諸国がその圧倒的な軍事力で世界に覇を唱えた時代である。しかし、ヨーロッパがまさにその最盛期を迎えていた時代に、ニーチェは強い危機感を感じていた。科学や産業の発展を通じて、長い間人々の世界観を形作ってきた宗教の力が少しずつ後退し、これまでの社会の枠組みや常識が解体していった結果、「人間は何のために生きるのか」「この世界で何が確かなことなのか」といった根源的な問いに対する答えが、分からなくなってしまったのである。
ニーチェが牧師の家に生まれながらキリスト教を痛烈に批判し、「神は死んだ(Gott ist tot)」という過激な言葉を用いたのも、その切実さの表れと言える。 生きる意味や確かなものが見えなくなるという問題は、ニーチェの死後も多くの思想家や哲学者が言及してきた。しかし、根本的な部分については21世紀の今もなお未解決のままであり、ニーチェの思想も、この問題に「正解」を用意してくれるわけではない。
そもそも彼の思想には、矛盾している点や言い過ぎている部分、誤解を招くような表現も少なからずある。それゆえ、プロパガンダに利用したナチスのように、歪曲されてしまう危うさも持ちあわせている。そのような不完全なものであるにも拘わらず、あるいはだからこそ心に響くのは、彼の言葉が、悩みや苦しみを超越した高みから語られる「説教」ではなく、「無意味にも見える人生を、いかに生きるか」という問題に向き合い続けた当事者だけが語り得る、生きた声だからであろう。
『日めくりニーチェ』翻訳協力者:吉野恭一郎
『日めくり ニーチェ』
http://amzn.to/1TjVxD4 毎朝、名言にふれる習慣を作ることで新たな自分が目覚める! いつからでも使用できる万年カレンダー、卓上、壁掛けのどちらでも使えます。哲学者の生きた言葉に学ぶ、人生の乗りこなし方!
「愛も憎しみも人生の必修科目」 「あなたは不完全だからこそ魅力的なのだ」 「たまには弱みを見せる」 「他人の言葉の奴隷にならない」 「善人面をしている者こそもっとも有毒なハエである」 「世界はあなたである」
仕事で理不尽な思いをしたとき、家族や友人、 恋人との関係で問題が生じたとき 自分を不運と感じたとき、運命の流れを受け入れられないとき…… あなたを励まし、勇気づけます。プレゼントにも最適。
フリードリヒ・ニーチェ: ドイツの哲学者。牧師の子として生まれる。 ギリシア悲劇などの古典文献学を学んだ後、24歳の若さで大学教授となった。 ニーチェはギリシア古典に関する深い造詣を背景に、 ギリシア哲学における主知主義やキリスト教的世界観など、 西洋思想の根幹部分をラディカルに批判し、 近代ヨーロッパ世界のあり方そのものに、根本的な問い直しを迫った。 しかし40代半ばに精神に変調をきたして哲学者としての活動が困難となり、55歳で死去。
2015年7月7日刊行
定価本体1,300円+税
その他の記事
|
インド最大の都市で感じる気候変動の脅威(高城剛) |
|
ロシアの対日不安定化工作に利用される文春の誤報と、文春を支える詐欺広告(やまもといちろう) |
|
2018年は誰もが信じていたことがとても信用できなくなる事態が多発するように思われます(高城剛) |
|
野党共闘は上手くいったけど、上手くいったからこそ地獄への入り口に(やまもといちろう) |
|
アップルの“あえて言葉にはしていない”仕掛け(本田雅一) |
|
睡眠時間を削ってまで散歩がしたくなる、位置情報ゲームIngress(イングレス)って何?(宇野常寛) |
|
PlayStation VRを買ったら買うべきコンテンツ10選(西田宗千佳) |
|
菅直人さんVS橋下徹さん&日本維新の会を「ヒトラー」と指弾し揉めるの巻(やまもといちろう) |
|
大きな社会変革と技術的飽和点の第一歩はそう遠くない(高城剛) |
|
田端信太郎氏の侮辱罪容疑書類送検から考える「株主論評」罵倒芸の今後(やまもといちろう) |
|
スターウォーズとレンズとウクライナ紛争(高城剛) |
|
人はなぜ働くのか(岩崎夏海) |
|
なぜNTTドコモは「dポイント」への移行を急ぐのか(西田宗千佳) |
|
暦から社会と自分の未来を読み解く(高城剛) |
|
「天才はなぜチビなのか」を考えてみる(名越康文) |











