1950年前後、ドードーとペンギンは混同されていた?
以上がジュリアン・ヒュームの論文に出てきたペンギンとドードーの物語。
ファン・ネックが「ペンギン」に言及をしたことと、50年後のこの「混乱」に直接の関係があるかはわからない。
ここからはぼくの考えであるが、少なくとも、「同根」ではないかと思う。
欧州の人々にとって、ペンギンもドードーも、いずれも遠い南海の生き物だ。
おまけに飛べない。
そういう情報だけあって、実物を見たことがない人にとって、混同するのはとても簡単だっただろう。
17世紀は、博物学の萌芽の時代で、体系だった記述をするすべも、充分には開発されていなかった。分類学や比較解剖学も未熟だった。
分類学の父、リンネは18世紀、比較解剖学の大家キュビエは19世紀である。
のちにドードーは、18世紀には一時、「忘れられる」憂き目に会い、19世紀に存在を再確認されたあとでやっと、鳩の仲間ということになった。発見から200年以上も後のことだ。
出島ドードーがペンギンだったという可能性
ここまで書くと、やはり検討せざるをえない。
1647年に出島にやってきたドードーは、本当にドードーだったのか、と。
この年代は、まさにドードーとペンギンの混同・置換が起きた頃だ。
ならば、出島のオランダ商館が、帳簿にドードーと書きながらも、実はペンギンだったということはなかろうか。
どのみち絵は残っていないし、今のところ確認するすべもない。
歴史上確認できるのは(ヒューム論文で確認できるのは)、「ドードーをペンギンと間違える」素地が、当時あったかもしれないということである。
頭の片隅に置いておこう。
ドードーを追ってペンギンを得るようなことがあったとしたら、それは残念……ではなくて、やはり大事件だ。
それが17世紀のことなら、日本の「ペンギン史」を書き換えるような発見なのだから。
もっとも、出島ドードーは、ジャカルタから台湾経由で長崎に来たことになっているから、極端に暑い気候にペンギンが耐えられたどうか、というのはやはり疑問なので(可能性があるのはケープペンギンかキングペンギンだと思うが、特にキングは熱帯の暑さはきついだろうし、ケープも怪しい)、ぼく自身は、出島ドードーは、ドードーだった、と確信してはいるのだけれど。
(川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!vol.012 より)
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