英会話の勉強にしても、ダイエットにしても、私たちはなかなか、「自分を変える」ということができません。その一方で、私たちはすぐに「他人を変える」ことに心血を注ぎがちです。
思うように動いてくれない上司や部下。
社会や政治に対する怒り。
家族や友人からの関心を引きたいという焦り……。
私たちは人生の貴重な時間の多くを、自分ではコントロールすることのできない「他人のタスク」のために、浪費しているのです。
精神科医・名越康文氏の最新刊『ソロタイム(Solo Time) 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』より
人はすぐに、他人をコントロールすることで頭がいっぱいになる(イラスト:伊藤美樹)
人生は短くなどない。ただし……
古くから、多くの賢人たちが、人間という生き物がいかに、自分ではコントロールできない「他人のタスク」に心を奪われ、「自分のタスク」に使うための時間を失っているかということを、説いてきました。
「人生は短くなどありません。
与えられた時間の大半を、
私たちが無駄遣いをしているにすぎないのです」
これは、ローマ皇帝ネロの家庭教師を務め、後にネロに命じられて自死に追い込まれてしまったセネカ(ルキウス・アンナエウス・セネカ)という人の言葉です。私は四〇代の頃にこの言葉を聞いて、身につまされる思いがしました。
セネカはこんなふうに言っています。多くの人が、お金に換算すれば「ひと財産」といってもいいぐらいの膨大な時間を、あまり気の進まない相手との不毛なコミュニケーションに費やしてしまっている、と。
これは、精神科医として多くの人と接する中で見聞きしてきた事実と、完全に一致しています。
人生の貴重な時間を「他人のタスク」で浪費してはいないか
私たちはお金についてはほんの小さな額でも、他人に与えたり、浪費したりすることを躊躇(ためら)います。
ところがどういうわけか、時間については随分気前がいいんですね。多くの人が「人生の時間」というこの上なく貴重で限りある財産を、対人関係のいざこざの中で、浪費しているのです。
私たちの心は、気がつくと「他人のタスク」でいっぱいです。
上司や部下が、思うように動いてくれないことへのいらだち。
社会や政治に対する怒り。
家族や友人からの関心を引きたいという焦り。
私たちは人生の貴重な時間の多くを、自分ではどうにもならない「他人のタスク」のために、浪費しているのです。
自分のタスクに向き合うことから始める
ただし、誤解しないようにしてください。あなたが「身近な家族や友人が、より幸せになってほしい」「自分たちの住む社会がより良い場所になってほしい」と願うこと自体を、私は否定しているわけではありません。
私たちが他人の行動に関心を抱くのは、何も単なる支配欲求だけとは限りません。そこには「もっとこの人に成長してもらいたい」とか「もっとチーム全体の成果を高めたい」といった、心から相手を思いやる気持ちも、含まれているはずです。そういった、真摯な思いまで、否定する必要はまったくありません。
ただ、本当に心から他人の役に立ちたいと願うなら、まずは、自分を変えることから始めなければいけません。
なぜなら、私たちは油断するとすぐに、自分の思うように動いてくれない他人を責め立ててしまう生きだからです。自分のタスクに十分に向き合っていない人は、他人に貢献することができないのです。
自分のタスクに向き合うことは、自己中心的に、自分の殻に閉じこもることではありません。
それはむしろ、他人の視線を気にしたり、他人を自分の思うままに支配しようとしていつもイライラしている自分から卒業するための、第一歩なのです。
続きは本書で!
話題沸騰! 各所で絶賛!!
『ソロタイム(Solo Time) 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』
著者:名越康文
四六版並製、256ページ
ISBN:978-4906790258
定価1600円+税
夜間飛行 2017年6月12日刊
電子版(kindle、epub)→https://yakan-hiko.com/dc.php?no=12
honto→https://honto.jp/netstore/pd-book_28512870.html
■内容
他人の言葉や常識に振り回されず、
納得のいく人生を送るために必要な
新時代のライフスタイルの提案!
5000人のカウンセリング経験から得た精神科医の結論!
「会社や家族、友人や恋人といったさまざまな人間関係を維持していくことだけに、人生のエネルギーと時間の大半を注ぎ込んでいる人は少なくありません。しかし、そのことが、現代人の不幸を生み出しています。
人間関係は大切だけれど、それ自体は人生の目的ではないのです」
「日ごろの人間関係からいったん手を離し、静かで落ち着いた、ひとりぼっちの時間を過ごす。たったそれだけのことで、何ともいえないような虚しさが、ふっと楽になった、という人は、少なくありません」
(本書より)
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