藤沢数希
@kazu_fujisawa

週刊金融日記 第308号【日本の大学受験甲子園の仕組みを理解する、米国株は切り返すも日本株は森友問題を警戒他】

藤沢数希のメルマガ『週刊金融日記』第307号(2018年3月14日発行)より、冒頭部分をお届けします。

〘第308号 目次紹介〙

// 週刊金融日記
// 2018年3月14日 第308号
// 日本の大学受験甲子園の仕組みを理解する
// 米国株は切り返すも日本株は森友問題を警戒
// 麻布十番でフレンチ焼鳥
// MARCHの物理学科へ進学する学生にアドバイス
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 
 今週は花粉の飛散がピークのようですね。僕はこの花粉から逃れるために、ケアンズまでやってきました。綺麗な海と空気で最高ですね。しかし、日本の連休から外れていると、LCCで本当にめちゃくちゃ安いですね。5つ星ホテルに3泊して、航空券含めてひとり10万円とかですからね。盆や正月、ゴールデンウイークだと、信じられないぐらい高くなるんですが。さらに観光地は激混みで、有給を暗黙の了解で取らない日本人はやっぱりドMなんだな、と思う次第です。

 僕はその辺のブロガーや自己啓発本の著者と違って、会社を辞めろと煽ったりしませんが、自営業で自分で自分のスケジュールをコントロールできると、この辺はすごくいいですね。

★僕はスギ花粉がダメなんですが、ケアンズまで逃げてきました。いい天気ですねぇ。

 ところで、すこし前ですが、航空券やホテル予約はExpediaなどのサイトに人が集まり、ホテルはそういうブッキングサイトを使わざるを得なくなっており、いちいちこうしたプラットフォームに手数料を取られるのでやってられない、という記事がネットでバズっておりました。論調は、もちろんこういう中間搾取プラットフォームひどい!です。

 それで、ずいぶん昔なのですが、僕もよく行くホテルはこういう手数料を取られるのがかわいそうだと思ったというのと、さらに手数料をプラットフォームに払わなければいけない客とそうでない客だったら、当然、そうでない客のほうが大事に扱われるだろう、と思ってホテルのサイトで直接予約してあげていたんですね。しかし、あとになって、これは間違いだと気づきました。

 というのも、独自サイトはだいたい出来が悪く、そもそも予約するのが大変なんですが、さらに顧客情報もうまく管理できていないところもあって、ぜんぜん大事にされない。そうこうしているうちに、僕のExpediaアカウントは年間支払額が多いので最上級ステータスになっていて、むしろExpedia通して予約したほうがぜんぜん扱いがいいんですよ。これには笑いました。

 食べログと同じように、ホテル側はこうしたサイトでのレビューを引き上げることに必死なんです。それで、おそらく食べログ的なアルゴリズムで、レビューでは僕みたいな良い客のウエイトが高いんだと思います。だから、ホテルも必死でサービスしてくるんですよ(笑)。

 ということで、ホテル予約は力のあるプラットフォームを通してやるのがいまどきの正解です!

 さて、今週も面白い投稿がいくつもありました。見どころは以下のとおりです。

―大学生ですがAIベンチャーから休学を前提にフルタイム勤務のオファーをいただいています
―「対人能力の鍛え方、人的ネットワークの作り方」についてご教示ください
―兵庫県三ノ宮駅プロトコルを共有します
―日本橋個室焼肉からのラブホ搬送プロトコル
―彼女以外とアポを取るのに気が引けるのは非モテコミットの兆候ですか
―MARCHの物理学科へ進学する学生にどのようなアドバイスをしますか

 それでは今週もよろしくお願いします。

 

1.日本の大学受験甲子園の仕組みを理解する

 僕は教育についての本を書こうと思っていたこともあり、数年前にいまをときめく有名中高一貫校について調べていた。そして、こうした学校の説明会などに参加していたのだ。

 そこで出てくる先生たちは、うちはこういう教育をしていて、そのおかげで東大合格現役◯◯名です! 国公立医学部□□名です!というような説明をして、誇らしい数字をプレゼンしていた。それを受験生のお母さんたちはうっとりとした表情で眺めていた。

 当時の僕はといえば、海外で研究生活を終え、外資系の金融機関で働き、そのあとには作家業などに専念するために会社を辞めていた。しばらくベンチャー企業の経営者の人たちとよく遊んでいた時期だった。つまり、こうした日本で偏差値競争をして、いい大学に入り、いい会社に入ったり、難関国家資格を取ることこそが成功、あるいはそこまでいかなくても、コスパのいい勝ち組の生き方だ、という価値観からすっかり離れていたし、むしろ、社会に出て経済的に成功することと、日本の偏差値競争はぜんぜん関係ないんだな、と思っていた時期でもあったので、並々ならぬ違和感を感じた。率直に言って、非常に寒々しいと思った。日本の教育はもうダメなんじゃないだろうか、と。

 しかし、事情があって教育産業にしばらく関わっていると、まったく違和感がなくなった。慣れたからなのかどうかはわからないが、ああ、こういうスポーツなんだ!とわかったのである。そして、そのスポーツは、僕が当初思っていたような害もそれほどなく、見方によっては日本の高校生の学力が国際的に高い大きな理由になっていることもわかってきた。また、現実問題として、日本で子供を育てる場合、日本の教育産業は、まさにこうしたスポーツのために出来上がっており、良くも悪くも、この教育インフラをうまく使っていく以外の選択肢はほとんどないのである。

 ホワイトカラーを目指す家庭は、一言でいえば、いい大学に子供を入れる投資効率で塾や学校選びの意思決定をしているのだ。それは、面接で志望動機を聞かれて給料が多かったから、と言うようなもので、すこし下品な話であるから、一部の家庭や伝統校はあからさまに宣伝しなかったりする。しかし、僕が観察した限り、伝統校も含めて、すべての進学校がこれから解説するKPIを高めるスポーツをしていた。それは、ホワイトカラーというか、インテリのおっさんや教育ママたちが毎年とても楽しみにしている、さながら大学受験甲子園なのだ。

 さて、そのKPIとは何だろうか? 東大合格者数である。日本の教育を一言で語るならば、高校別に東大の合格者数を競り合うスポーツなのだ。

 しかし、よく考えればわかるように、数で勝負したら生徒数が多い学校のほうが有利だ。だから、本来は東大合格率で競うべきだ。もっと言うなら、学校の実力というなら東大現役合格率じゃないのか? しかし、関西では京大の合格者数も重要な指標になっている。そもそも、いまは地方の進学校は、東大よりも医学部である。また、東京のホワイトカラーの家庭だと、子供に慶應や早稲田に行ってほしい、というところもたくさんあるし、東工大や一橋はどうなんだ? 海外の大学は……?

 もちろん、上で挙げたような疑問はもっともだし、実際に教育産業に詳しい人たちはそのへんも気にして学校を評価している。しかし、一般大衆にとっては、なんといってもわかりやすい東大合格の絶対数である。よって、現浪含めた東大合格者数がやはり最重要なKPIということになる。また、統計の信頼性や速報性でも、東大の合格者数は一番いいのである。率だと、すべての学校の卒業者数を調べないといけなくなる。国公立医学部だと、全国にたくさんあり、集計するのがかなり大変だし、学校によっては細かなデータを公表していないところもある。慶應や早稲田などの難関私立大学は、複数の学科に合格した場合のデータの取り方で信頼性に欠けるし、学科間で偏差値にかなり差がある、という問題もある。

 そして、実際に東大合格者数を増やす効果は絶大である。私立の進学校にとって、東大にたくさん合格させる、これほど宣伝効果が期待できるものはないのだ。入り口の中学受験偏差値や志望者数をよく見ていると、テレビで学校が紹介されても、まったくと言っていいほど影響はないのだが、東大合格者数を増やした中高一貫校の翌年の偏差値(=日能研やSAPIXなどが算出する80%合格ライン)は目に見える形で上昇する。

 そして、これはポジティブフィードバックが発生する不安定なシステムである。東大合格者数が増える→人気化して入試難易度が上がる→偏差値の高い生徒が集まる→ますます東大合格者数が増える、という好循環が起こる。合格者数が減れば、当然その逆も起こり、一気に名門校から転落することもあるのだ。だから、高校の先生たちはみな必死なのである。東大合格者数が減ると、危機感を持って、必死にがんばるのだ。このように、日本の高校、とりわけ進学校はものすごく競争しており、ある意味でPDCAサイクルが非常によく回っているのだ。だから、高校までの教育は、最初に述べたように少々寒々しい基準ではあるのだが、結果として競争原理がよく働き、国際的な学力テストなどの指標で見ても日本の高校生はレベルが高いのだと思われる。

 それでは、今年の東大合格者数のランキングを見てみよう。ソースは教育総合サイトのinter-eduである。まだ、進学実績を公表していない、あるいは、inter-eduにデータを送っていない学校に関しては、サンデー毎日、週刊朝日の速報値、Twitterなどを参考に補完した。なお、筆者は、大学生のころに中学受験塾で講師をしていたことや、最近、教育関係の本を執筆している関係で、中学入試のある中高一貫校に関しては抜けがない自信があるが、名門公立高校に関しては、inte-eduにデータがないものに関しては、何校か抜けているかもしれず、その点はご了承願いたい。

【2018年 高校別東大合格者数ランキング 現役浪人合計】

 
(続きは藤沢数希のメールマガジン『週刊金融日記』第308号にてお読みください)


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藤沢数希・著『損する結婚 儲かる離婚』

男女双方とも、簡単に全財産以上の金額が吹っ飛ぶのが結婚という金銭契約です。 「結婚はデリバティブ取引と同じでゼロサムゲーム。こと金に関しては夫婦は食うか食われるかの関係にある」。金融工学と恋愛工学について研究を重ねてきた藤沢数希が、適切な結婚相手の選び方を具体的なケースを元に解き明かす!

藤沢数希
理論物理学、コンピューター・シミュレーションの分野で博士号取得。欧米の研究機関で教鞭を取った後、外資系投資銀行に転身。以後、マーケットの定量分析、経済予測、トレーディング業務などに従事。また、高度なリスクマネジメントの技法を恋愛に応用した『恋愛工学』の第一人者でもある。月間100万PVの人気ブログ『金融日記』の管理人。

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