津田大介
@tsuda

津田大介のメルマガ『メディアの現場』より

福島第一原発観光地化計画とはなにか――東浩紀に聞く「フクシマ」のいまとこれから

2013年4月5日に配信されたメルマガの「メディア/イベントプレイバック」から抜粋したものです>

(2012年10月16日 J-WAVE『JAM THE WORLD』「BREAKTHROUGH!」の内容を再構成した『ゲンロンエトセトラ #6』[*1] の記事を転載)

出演:東浩紀(作家、批評家)、津田大介
企画構成:きたむらけんじ(『JAM THE WORLD』構成作家)
文章構成:ゲンロン [*2]

※本記事用に元記事のレイアウトを変更し、脚註を追加しました。

 

◇なぜ「観光」なのか

津田:今日は作家・思想家の東浩紀さんをお迎えして、東さんが先ごろ提唱して物議を醸している「福島第一原発観光地化計画」[*3](以下「フクイチ観光地化計画」)を通して、福島県のいまとこれからについて、一緒に考えてみたいと思います。東さん、こんばんは。よろしくお願いします。

東:こんばんは、よろしくお願いします。

津田:フクイチ観光地化計画については、公表されるまえに東さんから直接伺っておりまして、僕もコアメンバーとして参加しております。東さん、この計画の構想は、そもそもいつぐらいに思いついて実行に移そうと考え始めたんでしょうか?

東:僕がやっている会社で『思想地図β』という本を毎年出しているんですね [*4] 。今年7月には『日本2.0』という題名で出版しました [*5] 。「新しい日本のかたちを考える」という壮大なテーマだったので、編集をしながら次は何をテーマにしよう、次のキーワードはなんだろう、と悩みました。その時、僕としてはずっと「観光」というテーマが頭に浮かんでいました。

僕の元々の関心として、人間の低俗で軽薄な欲望を使っていかに世の中を良くするか、ということがあります。観光は、まさにそういった欲望を原動力にして、世界中の人を大量に動員し、繋げている。子どもが生まれてから国外のリゾートによく行くようになりましたが、世界中どこに行っても、日本にいる僕たちと全く同じような服を着て、同じような振る舞いをしている人たちに出会います。政治や宗教では分断されていても、「欲望」を中心に見ると世界がかつてなくフラットになりつつある、ということを実感するわけです。そういった視点から1冊作ってみようかと考えていました。

津田:そういうものが昔からテーマなんですね。

東:被災地の問題にしても、人を助けるって言っても、ただ助けなければという義務感だけでは人はなかなか動かない。そこに行ったら自分が楽しいとか、面白いことができる、という期待があってはじめて動き出す。そういった「軽薄」な欲望を使って何かできないだろうかということで、社会を良くするために観光が使えるんじゃないかな、と考えました。これは、福島とは関係なく、前からのテーマだったんです。

津田:僕も東北を中心にずっと取材してきましたが、いろいろ話を聞くと「外からお客さんが普通に来て普通にものを買ってくれるのが一番うれしい」という反応が多いですからね。

東:そういうなかで『思想地図β』で次何をするかを考えたとき、福島第一原発をどうやって歴史に残すのか、どうやって未来に継承していくのかというと、観光がひとつのキーワードにならないか、と思い当たりました。ただ、最初に「福島第一原発観光地化計画」というフレーズを考えついたときは、「何を馬鹿なことを言っているんだ」と怒られると思っていたんです。ところが、まわりの人に聞いてみたら、みなすごく反応が良くて、それこそが復興への鍵だと言ってくれたので、これは真剣に動いてもいいのかなと。

津田:たぶん、みんな原発事故が何らかのかたちで解決しない限り、なかなか福島に人を連れてくることができないと思っているんじゃないでしょうか? あの事故と直接的に向きあうことで福島への注目を絶やさない――そのとき、「観光」がひとつの鍵になると思った人が多いのかな、と思うんですけど。

東:いろいろ調べ始めてみると、興味深い事実も出てきました。例えば、チェルノブイリ事故 [*6] から四半世紀が経っているんですが、いまどうなっているかというと、なんとけっこう観光地化しています [*7] 。爆発した4号炉の前まで普通の観光客が防護服なしに近づき、写真を撮ってくるツアーがある [*8]

津田:処理ができないから石で固めてしまえ [*9] ってなっている、あのチェルノブイリが、ですか。

東:そうなんです。まさにその石棺の数百メートル手前まで近づいている。日本語でも英語でも、「チェルノブイリ 観光」と検索すればどんどん情報が出てきます。25年経つというのはそういうことなんだな、と。いま僕たちは、福島のあの悲劇を目の前にしてしまっているので、1年2年といったスパンでしかものを考えられない。だから、あんな危険なところには行けないよ、と反応してしまう。あそこは封印し永遠に放置するしかないんだ、みたいな話まで聞きますけど、でも25年という時間はとても長くて、ちゃんと除染をしていけば人が見に来るところになるんですよ。

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津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

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