※高城未来研究所【Future Report】Vol.365(2018年6月15日発行)より

今週はロンドンにいます。
いまから10年ほど前、ロンドンに住んでいた際に日々感じていましたが、その10年前の1998年のロンドンと2008年のロンドンは、僕には、まったく別の街のように見えました。
ロンドン中心地は歴史的な建物が多く、至る所に掲げられる広告と現代的なファッションに身を包んだ人々が闊歩していなければ、「いまは18世紀です」と言われても、なんら違和感を感じません。
言い換えれば、広告と人々のファッションが、「現代の街」を作り上げています。
1998年当時のロンドン中心部は、いわゆるイギリス人が大半で、街中で目にする広告も、イギリス企業といくつかの日本の企業しかありませんでした。
2008年のロンドンは、街中を闊歩する50%程度が外国人で(僕もその一人でした)、広告はグローバル企業に変わりつつあり、日本企業の広告が徐々に追いやられ、その位置には韓国企業が進出していました。
そして2018年現在、街の中心地を歩く90%程度が外国人(非アングロサクソン)で、広告の多くは動画となり、街そのものがメディアへと変貌しています。
その代表的な場所が、ピカデリー・サーカスです。
東京渋谷駅前スクランブル交差点のように、近代的な建物に大型ビジョンを設置するのは、いまやアジアの中規模都市でも見られる光景ですが、およそ200年前の1819年に作られた人々が交差する場(これが「サーカス」の意)であるピカデリー・サーカスは、歴史的建造物を照らすように大型ビジョンが設置され、その中を(しかも天気が悪くて有名)、もはやどこの国の人だかわからない人たちが、所狭しと動き回っています。
この光景は、映画「ブレードランナー」そのものです。
1982年に公開された映画「ブレードランナー」は、イギリス人SF作家フィリップ・K・ディックのSF「アンドロイドは、電気羊の夢を見るか」原作の映像化で、イギリス人リドリー・スコットが監督したため(と僕は考えてます)、好天が多いLAなのにいつも雨が降っていて、昨年公開された「ブレードランナー2049」は、カナダ人のドゥニ・ヴィルヌーヴが監督したため、雪が多かったのが印象的でした。
日本人や東南アジア人が監督したら、きっと高温多湿のブレードランナーの世界になったんだろうな、と感慨深く昨年ロンドンのIMAXシアターでリバイバル上映した前作と新作を鑑賞しました。
1970年代後半からプロジェクトが進められ、およそ40年経って「ブレードランナー」の光景が、雨の日の夜に街灯以上に明るい広告に照らされるロンドンの中心部の現実的光景となりました。
現在、僕は30年後の世界を想起しながら、いくつかの仕事を手がけており、もし、なにかをきっかけに広告が一切ない世界が目の前に現れるとしたら、いまとは、まったく別の世界が現れると夢想します。
テレビドラマが嘘くさく感じるのは、スポンサーの意向に沿うだけでなく、実際の街中には過度な広告が溢れているのに、ドラマ自体をスポンサードしている広告主がいるので、街中の広告を排除するあたりの不自然感にも現れています。
また、日本各地で町おこしが騒がれ、自然保護も過度に叫ばれるる昨今ですが、人々の心を乱す広告規制に歯止めがかかる様子は、どこにも伺えません。
時には、自然保護を謳う企業広告が氾濫する場所もあるほどで、先日シンガポールで行われた米朝会談の際には、コカコーラが特別仕様のパッケージを出したことも話題になりました。
もはや、政治すら広告ツールなのが、現代社会なのです。
広告が一切なく多人種がうごめく街。
ここに、誰もが見たことがない未来の光景があるのではないか、と広告に溢れるピカデリー・サーカスで考える今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.365 2018年6月15日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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