※高城未来研究所【Future Report】Vol.376(2018年8月31日発行)より
今週は雄安にいます。
北京郊外に開発中のあたらしいハイテク都市雄安は、「次の深セン」と言われるほど、中国では近年稀に見る巨大「国家級新区」として大きな話題となっている新興地域です。
この「国家級新区」とは、国務院の批准を経て設立される「国家の重大発展と改革開放戦略の任務を受け持つ総合機能区」を意味し、1992年に国務院の批准を受けて設立された上海市浦東新区の成功を受け、千年の大計を持つ強大な都市計画として知られています。
実は、雄安新区は「国家級新区」としては19番目ですが、1980年8月に設立された広東省の深セン経済特区と1992年10月に設立された上海市の浦東新区の後を継ぎ、全国的な意義を持つ新区としては26年ぶりに国家が本腰を入れた都市開発となります。
つまり、雄安が「次の深セン」なのです。
雄安新区の特徴はいくつもありますが、僕が面白いと考えているのは「すべての土地のデジタル化」を謳っている点です。
まず、不動産投機を避けるために、不動産はすべて国家のものとし、土地に紐づくサイバースペースを作り上げ、その両方の資産を活用しようとしています。
この中心的かつ実験地区が「雄安新区市民サービスセンター」と呼ばれるエリアです。
「雄安新区市民サービスセンター」は、パッシブ・デザイン(特別な機械設備を使用せず、建物の構造や材料などの工夫により熱や空気の流れをコントロールして室内環境を創造する建築デザイン手法)で建てられた近未来都市で、エリア内を走る無人自動運転バスや無人コンビニエンスストアが、もう実現しているので驚きます。
域内を歩くと、まるで本物の街とバーチャルの街が融合しているような気分になり、言い換えれば、この街は「近未来」ではなく、世界のどこにもない「すでにSFを実現させた」都市とも言えます。
ホテルのチェックイン、レストランでの食事のすべてが、住民のクラウド情報に基づいた顔認証で決済可能。
オンライン通販で購入した商品は、無人自動運転ロボットカーにより、自宅の前までお届け。
物理的な空間は、サッカースタジアム14個分の面積にも相当し、公共サービスエリアと行政サービスエリア、生活サービスエリア、入居企業オフィスエリアの4大エリアで構成されていて、これらがサイバー空間でひとつにまとめられています。
また、この街がインテリジェント交通と無人運転が本格的に実施される中国初の都市になる可能性が高く、こうした先進都市は世界的に見ても類がありません。
もし、未来のスマート都市がどんな姿をしているのか知りたければ、ここに来れば良いのです。
まだまだ計画予定区域のほんの一部しか開いていませんが、三ヶ月前のオープン時には、1日5万人が押しかける本年中国随一の新観光名所ともなっています。
今後、中国経済が踊り場を迎える可能性は重々ありますが、その時、この最先端都市はどのようになっているのでしょうか?
もしかしたら廃墟同然になっているかもしれませんが、それこそ、デッドテックな近未来都市として再注目を集めるかもしれません。
いずれにしても、雄安は、世界でもっとも未来に近い街なのです。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.376 2018年8月31日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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