※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2018年12月7日 Vol.200 <200号だよおっかさん号>より
発売されてちょっと時間が経ってしまったが、PFUのドキュメントスキャナ、ScanSnap iX1500を試用する機会に恵まれた。本機は10月12日発売で、現在ネットでの実売は4万円半ばといったところである。
・ScanSnapの新作、iX1500
実は筆者のScanSnap歴は古い。初代製品の発売は2001年まで遡るが、筆者は初代モデルの次、「4110EOX2」を購入した。当時から紙のデータ化には興味があり、ずいぶんと使ったが、とにかく大量の紙をスキャンしようとするなら、事前に紙を丁寧に捌いておかないと、すぐジャムって読み取りエラーになってしまうので、めんどくさくなって2〜3年使って捨てちゃったと思う。
その後2009年にS1500を購入、これは最近まで活用してきた。ほぼ10年ノートラブルで使えたのだから、立派なものである。紙のローディングもすごくよくなり、事前に必死に紙をバサバサと捌いておく必要がなくなった。ただ、パソコンとUSB接続は必須なので、使うにはそれなりの「気持ちの充実」が必要だ。スキャンアプリは常駐しているので、電源繋いでUSBに繋ぐだけなのだが、やっぱりそれでも「よし、やりますか」的な覚悟がいる。
これまでもScanSnapはほぼ毎年のように新モデルをリリースしており、順調に進化し続けてきたのだろうが、今回10年ぶりに新作に触って、ほぼ別物になっていたことを確認できた。
クラウドでスタンドアロン化を実現
新作のiX1500最大の売りは、クラウド対応だと思う。これの何が新しいかというと、ついにScanSnapは、スタンドアロン化したのだ。
本体をパカッと開けて紙をセットし、本体操作パネルでスキャンすればいい。パソコンやスマホでアプリを起動して、データを受け取るという下準備ゼロで、紙を処分できるのだ。これはデカい。
・展開するとこのサイズに
スキャンした紙情報はどこへ行くかというと、専用クラウドを経由して、Dropboxなどの汎用クラウドへと流し込まれる。ScanSnapのクラウドは、ストレージではなく、スキャナ本体を別のクラウドサービスに繋ぐためのパイプだ。スキャンし終わったデータは、次にパソコンに向かったとき、あるいはそのデータが必要になったときに、クラウドサービスから参照できる。
実際問題、紙に書かれた情報が今すぐ必要なケースは少ない。今すぐ必要であれば、紙のままで運用すればいいのだ。紙が邪魔だという理由は、その情報が必要になるのが2週間後とかだったりするからだ。
個人的に紙で来る情報の一番やっかいなものは、学校やPTAからくるお手紙の類だ。だいたい2週間後の話が紙で回ってくるわけだが、それまでその紙を、物理物としてどこかに忘れないように保管しておかなければならないというのが、筆者にとっては地獄である。
冷蔵庫に貼り付けておいたら、当日持っていくのを忘れる。仕事用のカバンに入れて置いたら、当日別のカバンを持って行ってしまう。だからいざ学校に着いたら、自分がどこに行けばいいのかさっぱりわからないという目に遭うのだ。
そういうものだからデータ化しておけばいいのだが、以前のモデルはパソコンを立ち上げてUSBポートにスキャナを繋ぎ、たった1枚の紙をセットしてスキャン、とかやらないと処理されない。それだったら、何枚か溜まったらやろう、と思って全部忘れるという悪循環から逃れられない。
だが新作のiX1500なら、下準備なしに本体を開けて紙をスキャンすれば、あとはクラウドでどうにかなるのだ。ファイル名で判別できないとかの問題はあるが、それは大した話ではない。紙に書いてあるイベントが終われば、そのデータもろとも不要になるからだ。ものすごくテンポラリ的なデータなのである。そんなものは、特にOCRも不要で、JPGやPDFになっていれば十分なのだ。
・本体液晶パネルがタッチ式となり、本体だけで操作が完結
ScanSnapは、いわゆる自炊マシンとして脚光を浴びたという経緯がある。紙をOCRすればテキストデータとなり、検索に引っかかるしアンダーラインやマーカーも引ける。分厚い書籍も、スマホやタブレットでらくらく参照できる。そういう未来を予感させてくれた。
もちろん、今もなおその役割は担っているのだが、個人的にはもっと刹那的な、物理物としての紙情報が1個しか存在しない状態を解消してくれるデバイスとして、多くの人が気付いていないメリットを与えてくれている。
未だ紙で情報を管理している人は、1つの情報をものすごく大量にコピーして持ち歩いている。例えば自治会役員名簿なんて、筆者は紙でもらうたびに毎回なくしちゃうか、必要な時に持ってないというのが常態化しているのだが、そのたびに毎回コピーをくれる。親切と言えば親切だし、オマエがもうちょっとちゃんとしろといわれればその通りなのだが、実態は個人情報もへったくれもない状態だ。だが案外紙管理の人たちのセキュリティ意識って、そんなものなのだ。ないと困るから、常に大量のコピーをカバンに入れている。
そんなことだから、関係ない別団体の名簿とかを、「ちょっと欲しいんだけどコピーしてうちのポストに入れといて」なんてリクエストを、平気でしてくることになる。
セキュリティ上の問題としても、紙情報は早くデータ化して、きちんと管理した方が良い。データ化すると情報漏えいが云々と言うが、紙管理の方が全然管理できてないし、そういう管理できない人が紙を使うのだ。
この変革をもたらすのが、iX1500なのである。前のバージョンからの小さい進化点はどうでもいい。スタンドアロン化で使い始めの敷居が大きく下がったところこそが、デカいポイントなのである。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
2018年12月7日 Vol.200 <200号だよおっかさん号> 目次
01 論壇【西田】
メルマガというメディアの将来
02 余談【小寺】
準備なしに手が付けられる、ScanSnapの新作、「iX1500」
03 対談【小寺】
機材から語る、アダルトビデオの栄枯盛衰(2)
04 過去記事【西田】
ATOK2013は? タッチ時代の機能は? ジャストシステム・ATOK開発陣の考える「今時の日本語入力」
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと
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