本田雅一
@rokuzouhonda

メルマガ「本田雅一の IT・ネット直球リポート」より

厚労省統計問題の発生理由が“プログラムのバグ”とされていることに感じる疑問

※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.037(2019年1月26日)からの抜粋です。



厚生労働省の「毎月勤労統計調査」についての特別監察委員会の報告書が出され、樋口委員長の記者会見が行われました。政府がまとめている就労者や実体経済などの統計データは、そのまま政策立案に用いられるものですから、言うまでもなく大切なものです。また、ここで「意図的に改ざんしようとしていたのでは?」とか、「実体経済とは乖離して日本経済が成長しているかのように見せかけているのでは?」などの意見も出ているようですが、この記者会見を見る限り、“プログラムのバグ”ということのようです。

実際、2004年からずっと誤りだったというんですから、まぁヒドいモノですよね。でも一番ヒドいのは、その理由でしょう。

当時の担当者は「外部業者等に委託することなく自前でシステム改修を行うが、毎月勤労統計調査に係るシステムのプログラム言語はCOBOLであり、一般的にシステム担当係でCOBOLを扱える者は1人または2人に過ぎなかった」ため、チェック体制が甘かったというのです。

いや、ちょっと待ってくださいよ。COBOLという言語は、システム全体の処理の流れは見にくいのですが、言語としてはシンプルで、しかも記号ではなく英単語を中心に論理構造を記述したり、データ構造を表現したりするため、必ずしもきちんと習得していないからといって読めないようなプログラムではありません。

統計データを計算し、何種類かの表やグラフにまとめるプログラムは、僕らの時代(30年近く前)は“情報系”というジャンルで、僕も銀行や都の不動産関連のシステムを構築する際に開発に携わったり、あるいはシステム設計を担当していたことがありました。しかし、当時はプログラマーそのものの数が少なかったこともあり、たいしてコンピューターを知らないような素人でもプログラムしているぐらいで、“言語”が理由でチェックできないというのは、おかしな話だなぁと思うのです。

ただし、COBOLを使った情報系業務では、さまざまなデータベースから中間ファイルを生成する細かなプログラムを組み合わせ、最終的なデータを生成するといったことがよく行われます。間違いがないよう、データ構造の設計や処理の流れを図で描いて、処理全体がわかるよう仕様書を残すことが一般的です。国の機関なのですから、そうしたドキュメントはすべて作っていたはずですよね。

最終的にいくつかのプログラムを、JCL(ジョブ制御言語)というスクリプトを書いて繋ぐことで“ジョブ(仕事)”が完了します。こちらもプログラムの仕様が正しく動作することを前提にするならば、比較的シンプルで可読性も高い(処理の流れだけなら把握しやすい)ので、これもやる気さえあれば問題なく読めるはずです。

そもそも、こうした情報系業務では“異常な値が出ていないか?”のテストを、単にテストデータを使って正しさを確認するだけではなく、本番データで処理してみた結果を過去のデータと比較し、あからさまにおかしい値になっているかどうかを確認するものです。なぜなら個々のプログラムの論理は合っていても、何らかの原因で結果が変化してしまう可能性はあるからです。

したがって、「COBOLを知らなかったから」という今回の言い訳? は、どうもしっくりこないなぁと思うわけです。そんな古いシステムを使うなよと言うかも知れませんが、実のところCOBOLはいまだに現役で、さまざまなところで使われています。AWSというアマゾンのクラウドソリューションでもCOBOLがサポートされているぐらいですからね。

2004年の段階で「読めなかったから」という理由は通用しません。純粋にシステム検証の手順や確認方法、評価方法に問題があったと陳謝するほうがずっといいと思います。

しかし、今回のことで「もしかすると、他の統計情報にも誤りがあるのでは?」という疑いが拭えません。今回のようなケアレスミスでさえ、テストで炙り出せないような開発体制で、しかも(おそらくセキュリティー上の問題?)インハウスでの開発ということですからね。ゾロゾロと誤りが連発で出てこないことを祈りましょう。

ところで、今日は僕の新刊『蒲田 初音鮨物語』の発売日です。ノンフィクション小説ですが、一方でAppleやAmazonにも通じる、普遍的な経営の鉄則、ビジネスのルールについて、改めて心に刻まれる、そんな本にしたつもりです。

Amazonでは、こちらから購入できますが、すでに書店には並んでいるので、お近くの書店で見かけたら手に取ってみてください。
https://amzn.to/2EC5QVf

ちなみにノンフィクション小説なんですが、たまに料理本や業界経済もの(外食産業もの)として置かれている場合もありますので、書店員さんに訊ねてみてくださいませ。Kindle版もございます。

そんなわけで、今回はこの新刊の主人公であり、鮨業界では知らない人がいないほどのスター職人となった中治勝さんへのインタビューをお届けしたいと思います。

テーマは「お鮨の値段」。近年、本格的なお鮨屋さんの価格がものすごく高騰しているのをご存知でしょうか? 以前ならば2万円ならかなり高いコースでしたが、今やおまかせで2万円は当たり前。4万円を超える店も増えています。

中治さんの店も、3年前までは1万5000円でしたが、今では4万5000円。しかし、値段をつり上げているわけではありません。鮨の値段は原価の値段次第。中でも大きな比率を占める、日本近海もののクロマグロの価格は高騰を続け、(初競りの縁起物価格は別として)1キロあたり5万円を超えることも少なくありません。

冬の訪れとともに出始める松葉ガニも、2万円は出さないと良いものには当たらず、それも年を越すと4万5000円まで跳ね上がることすらあるとか。白皮(シロアマダイ)もウナギも、1キロあたり3万円は出さなければ、本当にいい素材は入手できないそうです。

「しかも、値段なんてのはただの数字なんですよ。味じゃありません。“高いから美味しい”わけではなく、質が高い上に新鮮だから美味しいんです。1舟(およそ200〜250グラム)9万円の白ウニだって、その値打ちなのはその日だけなんです。翌日になれば味は落ちますからね。だからその日のうちに使い切らなければ、意味がないんですよ」

そう話す中治さん。しかし、なんでこんなことになってるんでしょう?


(この続きは、本田雅一メールマガジン 「本田雅一の IT・ネット直球リポート」で)
 

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2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。

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本田雅一
PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

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