高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

インド最大の都市で感じる気候変動の脅威

高城未来研究所【Future Report】Vol.436(2019年10月25日発行)より

今週は、ムンバイにいます。

今週、南アジア最大の放送機器展「ブロードキャストインディア」が開催さたこともありまして、およそ二年ぶりにボリウッドの製作会社をまわっていますが、インドの映画産業の進展は、目を見張るものがあります。

もともと、世界最大の制作本数を誇るインド映画界ですが(第2位は、アフリカのナイジェリア、第3位が米国)、近年は数十億円をかけた大作が次々と制作されており、なかでも特撮と呼ばれるVFXスタジオの勃興は目覚ましく、いくつかの企業は、まるで下克上のように米国や英国のVFXスタジオを買収しようとする動きを見せるまで巨大化しています。

もともとインドのVFXスタジオは、人件費が安いことから米国や英国のVFXスタジオの下請けを長年請け負ってきました。
しかし、インド経済の成長に合わせるようにインド映画産業も著しく伸びたことから、かつての発注元を飲み込む勢いがあるのです。
製作本数だけでなく、映画興行の市場規模を見ても英国や日本を抜くのは時間の問題で、すでに数年前、「インセプション」や「エックスマキナ」、「ブレードランナー2049」などのVFXで知られる英国のVFX会社「ダブルネガティブ」は、インドの「プライムフォーカス」に買収されています。
このような動きを見ると、今後、VFXの世界的中心地のひとつは、間違いなくインドになるでしょう。

さて、今週のムンバイは雨ばかり。
昨年の同じ時期にも訪れましたが、日々降り続く雨は明らかな異常気象で、地球全体が2019年を境に、まったく別の気象環境に突入したように、あちこちまわって感じています。

国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の先月のレポートによれば、2100年には海面上昇により、ムンバイは水没すると発表されています。
彼らが唱えるCO2の排出との関係はさておいても、海面上昇は2005年以降、20世紀の2.5倍の速さで進んでいるのは確かです。

また、すでにモンスーンが去ったこの時期の大雨により、膝丈まで水かさが上がっている街角もあります。
このままでは、水陸両用車が登場する日も、遠くないかもしれません。
そしてその次には、車は宙に浮かねば、移動できなくなる日もやってくることでしょう。

膝丈まで冠水した水中道路と、その中を多数の人々が行き交う街角。
まるでVFXを見ているように思える、酸性雨が降り続く今週のムンバイの現実です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.436 2019年10月25日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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