高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

グルテンフリー食について個人的に思うこと

高城未来研究所【Future Report】Vol.454(2020年2月28日発行)より

今週は、トロントにいます。

あまり知られていませんが、カナダは、グルテンフリー食品大国です。

以前、Q&AコーナーでオススメしたこともあるMade Good(https://www.madegoodfoods.com)もカナダ製で、街中はもちろんのこと、空港のニューススタンドでも購入可能で、さらにエアカナダの機内でも無料で配られているほど浸透しています。

また、カナディアンウォーターで作った話題のウォッカ「Blu Frog Vodka」もグルテンフリーを掲げており(https://blufrogvodka.com)、現在、カナダではグルテンフリーの「ヘンプビール」が、人気急上昇中。

それもそのはず、「Agriculture and Agri-Food Canada」によれば、カナダ人の約1/3の1000万人がグルテンフリー製品を求め、人口の1%以上いるセリアック病患者にはグルテンフリー食品に税金控除があり、人口の6%以上は、グルテン過敏症だと言われています。

でも、問題ないと思われる人までグルテンを除去する必要が、本当にあるのでしょうか?

個人的な経験からお話しすれば、YESです。

僕は、遺伝子的にグルテン不耐性ではありません。
また、最新の遅延フードアレルギー検査を見ても、小麦は問題ある食品として上がっていません(やや、問題あり程度)。
それなのに、グルテンを排除したほうが、遥かに調子がいいのです。

グルテンは、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンという2種類のたんぱく質が絡み合ってできたもので、小麦粉に水を加えてこねると、グルテニンの「弾力はあるが伸びにくい」性質と、グリアジンの「弾力はないが粘着力が強くて伸びやすい」性質が結びつき、こねればこねるほど弾力と粘り気のある生地ができあがります。
こうして、人々が求める「美味しい食感」が誕生しました。

しかし、小麦は第二次世界大戦後の「緑の革命」によって、それ以前とは別の食品になってしまったのです。

ロックフェラー財団主導による1940年代後半から60年代にかけて起こった「緑の革命」は、高収量品種の導入や化学肥料の大量投入などにより穀物の生産性を向上させた農業革命で、これにより地球規模の食糧不足を解消しました。

一方、まるで時限爆弾のように、いつ爆発してもおかしくない人類にとって隠された大問題があったのです。

そのひとつが体内に溜まる残留農薬であることは言うまでもありませんが、実は、品種改良された「あたらしい小麦」のグリアジンも、大問題でした。

「あたらしい小麦」は、グリアジンを大量に含み、化学肥料と農薬を残留させる機能を持たせることで天候や疾病に強い品種として生まれ変わりましたが、そのため腸壁や血液脳関門を壊してしまう問題を孕んでいました。

ミリオンセラーになった「小麦は食べるな!」を執筆したウィリアム・デイビス医師は、我々が食べている小麦は「もう小麦とは呼べない」と断言しています。
デイビス医師は著書の中で、奇跡の種子からつくられた小麦製品は、グルテン過敏症だけでなく、血糖値を急激に引き上げ、1型糖尿病や、リウマチ、多発性硬化症(MS)を引き起こすと書いています。

だからといって、情報だけを鵜呑みにし、小麦を「悪」と一方的に決めつけるのも問題です。

そこで数年前、僕自身がグルテンを数ヶ月断ったところ、明らかにそれ以前より調子がよくなったのです、しかも驚くほどに。
その後、再びグルテンを食べはじめると、不調になることもわかりました。

このようなことから、グルテンフリー大国カナダに来るたびに、あたらしい食品を探すことが常になり、新製品を少数買って、気に入ったものをあとでオンラインでオーダーするようになりました。

昨年、英国で発表された研究では、大半の人にとってグルテンフリー食は必要ないと報告されていますが、一方、世界市場は2025年までにグルテンフリー市場が、420億ドル以上になると予想されています。

この時代、何が正しいのかわかりませんし、個々の体質が違うことは確かであり、「XXXは健康に良い」と言った「大雑把な言説」ほど疑ってかかるべきなのは、間違いありません。
なにより、食の選択肢が増えることは、誰にとっても好ましいはずで、人間の基本となる食こそ、個々の主張と多様性を認めるべきです。

個人的な体験をもとにお話しすれば、数ヶ月、徹底してグルテンを除去してみる価値は大いにあります。
でも、グルテンフリーだからと言ってなんでも良いわけではなく、他の食品同様、製品選びは重要です。

こうして、彷徨える「グルテンフリー食品の狩人」は、今日もトロントで大人買いに明け暮れる日々を送っているのです。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.454 2020年2月28日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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