やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

可視化されているネットでの珍説や陰謀論に対するエトセトラ


 選挙関連の調査でずっと泡沫政党の動きはチェックしていて、立花孝志率いる(クビになった)旧N国党がほとんど支持を霧消させる一方、共産党系の支持者らを巻き取る形で台頭したれいわ新選組が社民党を完全に抜いて政党としての規模を確立するに至りました。

 さらに、陰謀論界隈ではもはや定番となりつつある参政党がついに「次回衆院比例での投票予定先」で2%を安定的に超え始めて浸透が進み、百田尚樹さんや有本香さんがフロントに立って結成された日本保守党も初動としてはそこそこ支持者が見え隠れしている、という構図です。ごぼうの党はどの調査でも圏外になりましたが、本来泡沫政党とはサンプル数を増やしてもレーダーに映らないぐらいの存在であるものも多かったことを考えると、それはそれで健闘したんじゃないのと思うところもあります。

 で、元からの変な泡沫政党の動きと合わせて、古き良き陰謀論界隈やネトウヨ、極左といった政治的にはノイズとされてきたグループが、これらの泡沫政党の支持者と連動して可視化されることが多くなってきました。ニュース的には杉田水脈さんが筆頭ですが、他にも原口一博さんや和田政宗さんのように、安倍晋三政権時代に左右極触れ支持を集めた論客が賞味期限切れと共に失速し見向きもされなくなるというのは「政治は水物」とはいえびっくりです。いわば、この手の極論も票になればいいと温存してきた自由民主党や立憲民主党がなんだかんだ自浄作用を発揮してノイジーマイノリティをスポイルし、このあたりの極論を集約する団体として泡沫政党がゴミ箱として機能するようになったというのはゴミが散らからなくなって良かったと評するべきなのでしょうか。

 ただ、これは人間社会の体感ですが、特に利害関係のない40人の学級でさえ、二人三人は変なのがいましたし、定型発達でもそうであるからには変わった人がいる世界ではより変な人の割合は増えていきます。ましてや、社会に不満があり、荒唐無稽な主張でも政治に意見を反映させたいモチベーションを持つ層は一定の割合存在することを鑑みれば、ざっくり400の議席があったらその3%ぐらい、12議席ぐらいは「変な人代表」が座を占めることはあり得るわけですよ。

 そこへ、岸田文雄政権の支持率が低下しています、政府批判が大手を振ってネットで乱舞していますとなれば、不定愁訴を抱いた人たちがネットで同好の士を見つけてクラスターを形成して騒ぐのもまた当然の成り行きであって、既存政党に対する支持が減るほどにこれらのノイジーマイノリティが一時的に結集して議席を確保してしまうことも充分にあり得ます。その点では、まだ浜田聡さんで良かったね感のある旧N国党の議席獲得のようなことは今後もどんどん起きると思いますし、さらには泡沫政党対策のような何かも講じなければならなくなる可能性はあります。

 そのようなノイジーマイノリティの荒唐無稽な陰謀論的主張も、民主主義においては真正面から国民の権利として取り上げていかなければならないのは、間違いなく定番の「民主主義のコスト」です。これはこれで、必要なことであることは間違いありません。他方で、特に根拠のないワクチン陰謀論や5Gシェディング禁止のようなゴミネタで質問主意書が乱発される事態は容易に想像できることを考えれば、行政開示請求も含めて変な人の盲動を適法な範囲内で抑え込む手段を社会的に何らか考える必要が出てきているように思います。

 最近では、特に目立っていることとして秋田県などでクマが大量に出没し、人里に降りてきてクマが暴れて人が死傷する事件が頻発しているため、降りてきたクマは罠に入れたり射殺したりする必要に迫られていることに対し、クマからの被害の何たるかを知らない人たちが秋田県などに大量のクレーム電話を入れている類の話があります。もちろん、クマに限らず昔からあった馬鹿による電凸が業務妨害になってしまう事例はあるわけですけれども、これらも一般的な「民主主義のコスト」としつつも令和の世にもなったのだから何か個別に方法を考えていかないと人手不足で生産性が低いところで特にどうにかしないといかんのではないのと思うところです。

 ある意味で「不必要なコンタクトをスルーし拒否する権利」のようなものを何らか構築しないといかんのではないの、という。で、このような議論こそ少数意見も尊重しましょうという民主主義の建前と正面からぶつかる面もあるので、なんだかなとも思うわけなんですが。はい。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.421 ネットでの珍説や陰謀論をどうしたものかと思案しつつ、緊迫する国際情勢の中で日本人が取るべき立ち位置や無人ロボットタクシー迷走などを語る回
2023年10月30日発行号 目次
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【0. 序文】可視化されているネットでの珍説や陰謀論に対するエトセトラ
【0-2】私の経営情報グループ『漆黒と灯火』の会員を募集したら一日で枠が蒸発した
【1. インシデント1】ガザ地区とイスラエルの関係で困惑を覚えるワイら日本人の取るべき立ち位置
【2. インシデント2】夢のロボットタクシーが悪夢で終わってしまいかねない件
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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