※高城未来研究所【Future Report】Vol.477(2020年8月7日発行)より
今週は、仙台にいます。
およそ4ヶ月ぶりの本州は、降り続く酸性雨のなか、煌々と輝くネオンのなかを人々は暗い雰囲気でマスクをして足早で歩く、映画「ブレードランナー」のような世界になっていることを想像しましたが、好天が続き、暑さは沖縄以上だと感じる、眩い日本の夏らしい日々を送っています。
この時期の仙台といえば、「仙台七夕まつり」。
東北三大祭りの1つに数えられ、仙台藩祖の伊達政宗が婦女に対する文化向上の目的で七夕を奨励したことからはじまった日本一の七夕の季節です。
例年200万人以上の人が訪れる一大イベントゆえ、今年は新型コロナウィルス感染拡大防止のため中止となりましたが、なんの予告もなくゲリラ花火が夜空に上がり、古くから中央政府にたてつく仙台らしいひと時がありました。
この仙台の「反骨」の基礎を築いたのが、奥羽の大名・伊達政宗です。
伊達“独眼竜”政宗は、信長・秀吉・家康と同世代であれば天下を狙えるほどの器であったと称されたビジョナリストにして、戦国時代から江戸時代を生き抜いた屈指のサバイバーです。
大坂の陣の際に、支倉常長をヨーロッパに派遣してスペインのフェリペ三世の艦隊を派遣しようとしたのは有名な逸話ですが、僕が政宗公のアイデアで大変興味を持ったのが、町そのものをエディブルガーデン=「食べられる庭」にしてしまう構想です。
明治後期から現在まで「杜の都」と呼ばれる仙台は、伊達政宗が自給自足可能な地域づくりを推進するために、武家屋敷に多様な樹木の植栽を奨励したことからはじまりました。
天災や飢饉に備えて屋敷内に果樹(ウメ、モモ、カキ、クリなど)の植樹や菜園づくりを進め、屋敷まわりにはケヤキ、 スギ、マツなど、用材や燃料材となる樹木を育て、そのが今日の「杜の都」のベースとなります。
この街づくりは「一木一草、無駄なものなし」といわれる程に自給的な空間であり、暮らしに必要なものはすべて調達できたと言われるほどでした。
当時の日本は、寒冷化によって飢饉が頻繁に起きており、その度、エディブルガーデンに植えた「救荒植物」=飢饉の際に食べることができ、飢えを凌ぐに足る野生植物が、多くの人々の命を救いました。
古い文献には、500種を超える「救荒植物」の利用法が記載されています。
有名なのは、米沢藩主上杉治憲が天明飢饉の時、藩医に命じて野草の食べ方を調べさせた「飯粮集」や、一関藩医・建部清庵が著した日本初の救荒書「民間備荒録」、そして、明治から大正期の農業指導者であった石川理紀之助による救荒食の調理法本「草木谷庵の手なべ」(前編・後編)です。
これらの知識は、太平洋戦時中においても知識が盛んに再活用されていました。
仙台の町中から少し離れると、田畑だったと思われる新興住宅地の片隅に、かつては「救荒植物」だったヒガンバナを、いまも目撃します。
別名、曼珠沙華。
そのまま食すと有毒ですが、水にさらせば食用となる多年草です。
まるで花火のようにパッとまず花が咲き、後から葉っぱが伸びるという通常の草花とは逆の生態をもっている実に不思議な植物で、名前の通り怪しい魅力が漂います。
夏の七夕の夜空に咲く花火に、秋の彼岸に花火のように咲くヒガンバナ。
感染拡大が少しづつ広がる仙台ですが、春夏秋冬は、いまも昔も変わらず移り変わっていると感じる今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.477 2020年8月7日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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