やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

日本でも騒がれるNPOとマネーロンダリングの話


 巷では、著名ライターのヨッピーさんの正体が実は山本一郎であるという素敵な指摘があり、ついにバレる日が来てしまったかと寂寥感を覚える年末を送っておりますが、そのもとになっている事案が例の公金チューチュー問題におけるNPO法人フローレンスに対して、例の暇空茜さんが噛みついた一件にあります。

 もちろん界隈にはフローレンスを運営する駒崎弘樹さん美紀さん夫妻に対しては毀誉褒貶というか応援も批判も相当に渦巻いていて何かと話題になるところではあるのですが、すでに事業規模も40億円(22年度)に達する同NPO法人が本当に適切な運用がされているのかきちんと会計・監査されているのかという話は出やすい面があります。

認定NPO法人フローレンス 会計報告

 フローレンスの具体的な問題については別の機会に触れるとしても、むしろ金融当局がこれらのNPO法人の財務状況の適正性について気にし始めている大きな要因のひとつは国際的に問題となりつつあるNPO法人による悪質な経営操作とマネーロンダリングのハコとしての機能です。

 日本でも、公的機関からそぞろウォーニングは出ていますが、これ単体で読んで「なるほど、分かりました」とピンとくるような人はそう多くないでしょうし、具体的な内容はほぼゼロなので何だかよく分からんだろというのが正直なところだと思うんですよね。

NPO法人のテロ資金供与対策について

日本のNPO、マネロンに悪用懸念 テロ資金への低い危機意識指摘

 少し前は私立大学の裏口入学資金のプール金や相続対策などの資金を社会福祉法人や財団などの新設で福利厚生事業資金として海外に不法に送金するスキームが想定されていたとされていますが、正直分かっているところよりも分からないことの方がはるかに多いのもこの分野の問題でもあり、単純に盗難口座と偽造したマイナンバーカードなどでのなんちゃってeKYCで開設した仮想通貨取引口座があれば自在に海外に不審な金のやり取りはできてしまいます。宗教法人を使った違法取引で疑わしい取引(うたとり)を持ち出してきて追跡出来たケースについてはメルマガにも書きましたが、追跡しなければならない出所不明な資金がどこに消えるのかを追うことがアンチマネーロンダリングの世界では強く求められていることを考えれば海外送金の基点となる違法匿名口座の取り締まりと共にその母体を停めなければならないのも道理です。

人間迷路 Vol.426 ライドシェア問題をどうしたものかと思案しつつ、怪しい宗教法人売買の実態や生成AIと知財権利の有り様に触れる回

 また、ロシアや中国の組織が如何に効果的に研究機関やNPOなどに献金して人員を送り込むか、レピュテーションロンダリングやロビーイングをしてきたかについては、先進国間で情報交換が進み一定の網の目を駆けられるような状態になってきました。そんな中で、起きているのは「日本のNPOを標榜する(適正な)口座がマネーロンダリングの踏み台になっているのではないか」という点です。2024年はこの辺の話が明らかになると、割と大手で有名な日本のNPOが、騙されていたのではなく主体性を持ってマネーロンダリングに確信犯的に関与していたんじゃないかとか、他国の政治勢力の日本中枢への浸透に一定の役割を果たしているんじゃないかというような嫌疑が出てくることもあるのかもしれません。

 その中には、欧米では問題になることも多い環境保護団体が過激化する主張を正義と思い込み確信犯のようにテロ的な活動に対して資金と人員(新規募集も含む)を用意する事例があります。それ以上に個人的に気になるのは、女性の社会進出や、抑圧された民族への救済を掲げる団体に問題のある勢力が献金をトリガーに入り込み、単にマネーロンダリングの踏み台となるような問題口座の開設の手助けをすることだけでなく、日本人との戸籍上の縁談を進めて婚姻関係を結ばせて地方金融機関に口座を開設して外国人開業の助成金を得ようとしたり、取引の実態のない貿易商社に必要な物資を調達するなどという名目でNPO法人が支払いの細目を偽装する形で相応に大きな金額を発注したように装いマネロンをする手口がここのところ増えているように見える点です。

 海外ではクレプトクラシー(直訳すると泥棒政治)という名前で分断化された政治状況のあだ花を超えた具体的な問題を引き起こす各種政策的な問題として取り上げられることも多いのですが、我が国でも政治に強く関与し、レピュテーションを稼ぎつつ地域の貧困対策に食い込んでいるところが疑わしい取引を頻発している場合があります(宗教団体が持つ口座が出てくることもあるのでNPOだから駄目というわけではない)。

 一見、高齢者の見回りやこども食堂などの慈善事業を自治体からの嘱託を受けて実施しているとされるNPOが問題視をされても調査をする場合のハードルは高く、金融機関と当局の連携もまだそこまでは熟れていないため、具体的な調査をする頃には大玉を決済してしまって使い捨てられてしまっているケースが見られることから、さすがにこれはなあということで士気が下がるところではあります。ここ迄分かっておきながら止められなかったという事案もあるのですが、それもまた仕事と思いつつもそれによって高笑いしている犯罪者もいるのだろうと思うとなかなか忸怩たるところはありますね。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.428 NPOとマネーロンダリングの関係に触れつつ、民主主義の脆さを憂えたり電動キックボードの微妙さに思案したりする回
2024年1月1日発行号 目次
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【0. 序文】日本でも騒がれるNPOとマネーロンダリングの話
【1. インシデント1】「世界が右傾化している」よりは反グローバリズムによる経済混乱と見たほうが良い例
【2. インシデント2】電動キックボードという新興モビリティの可能性
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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