高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

健康と自然のリズム

高城未来研究所【Future Report】Vol.690(9月6日)より

今週も東京にいます。

日本全国不安定な天気が続きますが、先週もお伝えしましたように、日本の農業暦や伝統的な生活文化において「二百十日」(本年は8月31日)や「二百二十日」(本年は9月11日)は、特別な意味を持つ日として古くから知られています。
二百十日と二百二十日は、いずれも立春から数えてそれぞれ210日目と220日目に当たる日を指し、これらの日は古来から台風や災害がおきやすい特異日(実際は厄日)だと考えられてきました。
1923年9月1日に起こった関東大震災も「二百十日」の出来事です。

二百十日は、この日が台風襲来の時期と重なることから「風祭り」や「風鎮祭」といった風の神を鎮める祭りや、「八朔祭」などが各地で行われてきました。
農民たちは、「厄」が「大厄」にならないよう神に祈りを捧げ、この日を特別な日として過ごしてきたのです。

続く二百二十日は、二百十日からさらに10日後、つまり立春から220日目に当たります。
この日も台風や災害が多く発生する時期と考えられ、二百十日を起点に彼岸(本年は9月19日から9月25日)までは、災害に重々注意し、極力移動なども避けねばなりません。

また、台風や震災だけでなく、四方を海に囲まれた日本では潮も見極める必要があり、台風が発生すると強風や低気圧の影響で海水が陸地に押し寄せる「高潮」になります。
台風の勢力が強いほど(hPaが低いほど)高潮の規模も大きくなり、新月や満月の時期に発生する「大潮」だと月と太陽の引力が強まるため、海面が通常よりも高くなります。
つまり、台風と大潮が重なると高潮がさらに増し、沿岸部での浸水被害が深刻になるのです。

古来より、人類は「自然のリズム」に従い、生活のリズムを作り上げてきました。自然現象、季節の変化、月の満ち欠けなどは、人類が地球上で生きていくための「OS」とも言えるものです。
しかし、現代社会では、この自然のリズムを無視し、利便性や効率性を追求するあまり、多くの人たちが大切な自然のルールを忘れ去ってしまっているように見受けられます。
Googleカレンダーなどのデジタルツールは、人々の生活を効率化する一方で、自然とのつながりを切り離してしまい、これにより季節や自然現象に対する感受性が鈍くなって、自然災害への対応や準備も遅れてしまっています。

また、自然のリズムを無視した結果、精神的なバランスを崩し、多くの人たちがストレスや不安を感じやすくなるという側面が年々強くなっているのも否めません。
8weeks.aiを始めて、全員のデータを拝見し、実際に多くの方々ともお会いしましたが、不調を起こすスタート地点は、大半の方がバイオリズムを崩してしまうことにあると感じています。

その鍵を握るのが、交感神経と副交感神経のスイッチングです。

交感神経は、ストレスや緊急時に身体を「戦うか逃げるか」状態=昼に活発なのに対し、副交感神経はリラックスや休息を促進する「休息と消化」の状態=夜に優勢になります。
ところが、自然のサイクルを無視した結果、過緊張や生活の乱れ、慢性的なストレスや消化器系の障害、心血管系の問題、日光を避けて室内ばかりにいるなどにより、交感神経と副交感神経のスイッチングが崩れ、免疫機能が低下したり食いしばりや睡眠障害が引き起こされています。
こうして、「人間が持つ自然のリズム」も狂いはじめ、不定愁訴がはじまるのです。

現代社会において、健康を取り戻すためには、まずは自然のリズムを再認識することが重要です。
そのためには、農業暦や季節の節目を意識した生活を取り戻すことが求められます。
けっしてオーガニック食品を食べることではありません。
人類は、もし気候変動や環境の悪化を問題とするなら、二酸化炭素排出量ではなく、地球の「OS」としての自然を尊重し、抗うのではなくサイクルに従うことからはじめなければならないのだろうな、と考える今週です。

夜風も涼しく、暑さが随分と和らいできました。
どうか体調管理と「厄日」にご注意を。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.690 9月6日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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