※高城未来研究所【Future Report】Vol.374(2018年8月17日発行)より
今週は東京にいます。
夏休みを利用して、東京に遊びに来ている海外ゲストにお目にかかると、皆一様に「お盆」について、説明を求めます。
そこで僕は、まず旧暦について、話をはじめます。
日本の旧暦は、一般的に太陽太陰暦と言われ、別名「天保暦」とも呼ばれており、この「天保暦」以前も日本では太陰太陽暦(寛政暦)を使用していましたが、天保15年(1844年)に、改めて精度の高い最新バージョンに置き換えられました。
「天保暦」の完成度は相当高く、現在、日本が採用しているグレゴリオ暦より太陽年の誤差がありません。
明治に入ってからグレゴリオ暦を採用した理由は、財政難に苦しんだ当時の為政者が、公務員の月給を一ヶ月分支払わずすむために導入したのは有名な話ですが、神事や祭事、そして占い等を司る人々は、現在に至るまで、太陽や月の動きを正確に表す「天保暦」を採用しています。
その旧暦に沿った夏の催事が、「お盆」です。
「お盆」は、日本の祖先の霊を祀る一連の行事で、日本古来の祖霊信仰と仏教が融合し、かつては太陰暦の7月15日を中心とした期間に行われていました。
この時期は、「地獄の釜の蓋が開く」とアジア全般で古くから言い伝えられたこともあって、死者が家に帰ってくる時期だと考えられていました。
日本語の文字どおり「お盆」は、霊に対する供物を置く容器「盆」を意味し、それが、供物を供え祀られる祖霊や行事全般を意味するようになります。
この最大の行事が、「盆踊り」です。
「盆踊り」が開催される旧暦7月15日は十五夜、つまりフルムーンで夜通し明るく、死者を迎えながら、一晩中楽しく踊り明かすことができました。
ここに、90年代からアジア全域で活況となる「フルムーン・パーティ」の源流があるのです(ここで僕の友人の外国人遊び人たちは一応に感嘆します!)。
さて、1844年に発表された「天保暦」が、西洋天文学を取り入れるなど当時の大金を持って研究され、いま以上に正確だったのには、理由があります。
1835年からはじまり、のちに「天保の大飢饉」として知られる原因となった大雨や気候変動に対応するために、「正しい暦」を見つける必要が、是が非でもあったのです。
しかしながら、気候変動の他にも、失敗した幕府の財政再建(天保の改革)や、民衆の不満を抑えるための言論統制や識者への弾圧が仇となり、黒船を機に明治維新へと連なります。
翻って現在、オリンピックが、放送権の都合から真夏になってしまって、サマータイム導入がささやかれ、資本とメディアによって「暦」が書き換えられようとされています。
歴史を見れば、暦や時間が時の為政者に書き換えられると、それまでの社会が崩壊することを教えています。
「暦」が変わる夏、それは社会変革の大きな合図となるでしょう。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.374 2018年8月17日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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