やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

初めての『女の子』が生まれて


 いろいろありましたが、ようやく落ち着いたので報告がてら。

 今年5月に、山本家の第4子となる長女が生まれました。令和の女だ。現在2か月を過ぎ、退院してしばらく経ったので、ようやく「ああ、女の子が生まれたのだなあ」という実感が湧いてきました。

 もっとも、出産までの道のりは平坦ではなく、血液の病気を抱えていた家内に妊娠が発覚した後に割と早く切迫早産の怖れということで完全安静を余儀なくされ、歯科医師・口腔外科医としてのキャリアを再開しようとしていた家内にとってはちょっと可哀想なことになりました。ただ、医師としてよりも母親として生きる決断をした家内の豪直さには素直に感動しますし、また、騒ぎ立てる面倒くさい男三兄弟が大暴れしている家庭内の惨状は別として淡々と妊娠生活を送っている家内の凄みは驚くわけであります。

 もちろん、私個人には家内が働きに出なくてもどうとでもなる経済力があるからこそ選択の余地があったんですが、いままで家庭内の問題も夫婦の協同でどうにかしてきたものが、義母やお手伝いさんもフル回転でお願いしてもなお騒々しいという事情もあって身動きが取れませんでした。仕事も幾つかキャンセルし(あまり積極的にそれらの仕事をしたくなかったというのもある)、日々の介護や育児・教育にも遜色なくやっていくには相当な肉体的な辛さはありました。

 何より、9歳7歳5歳と多感な時期を送る三兄弟が、初めてできる妹を向かえるための精神的な準備はいろいろと大変でありまして、下に妹ができてもお前らに対する愛情は減らないのだよという話もしつつ、でもママが恋しく、騒動を起こしているのは母親の気を引くためなんじゃないかと邪推したくなるような「事件」もあって、この辺は男だから、女だからというものではない別の何かを感じます。

 養生が良かったのか家内の体質が強いのか、理由は分かりませんが、ほぼほぼ出産は計画通りに進み、なんだかんだいっていままでの心配が嘘のように出産自体は安産でした。良かった良かった。無事に生まれて産科を退院し、家内とともに万感の思いで娘を抱えて家族の待つ自宅に戻ったのはいまでもいい思い出です。

 ただ、やはり新しい家族が増えるといろんなことが起きるのは仕方がないもので、家内も無理が少したたったのか体調不良をぶり返し、また、長女も山本家恒例の高熱を出して入退院を繰り返すことになりました。家族親族にも発熱や転倒で入院などが相次ぎ、出生後しばらくは、もっぱら健康面で落ち着かず、走り回る日々が続いておりました。

 ふと落ち着いてみると、ベビーベッドに乗って穏やかな寝顔で静かに寝ている長女と、そのベッドの周りで寄り添うようにいびきをかいている三兄弟の姿を見て、ようやく「長女がやってきたのだな」という実感が湧いてきました。男の子を育てることには経験値がそこそこあるはずが、やはり出産と新しい命を迎えるというのは常に新しい体験の連続であって、確かに赤ちゃんをお風呂に入れたりおむつを取り替えたりは何の造作もなくできるようにはなっているけれど、やはり四者四様、赤ちゃん、子どもの別を問わず人間には違った人格が備わり、異なる反応をするものなのだ、そしてそれは当たり前であり、受け入れていってこそ親なのだという想いを抱くようになります。

 女の子だからか家内の母乳の質が良いのか、ほぼ母乳で育っている長女は先に生まれた三兄弟よりも大きく育ってきています。また、ベビーバスももう用済みと言わんばかりに身体が大きくなったため、想像よりも早く入浴が困難になりました。何と言っても、父親である私や三兄弟と違って、あるべきものが股間にない。「娘が生まれたのだなあ」という問題を思い知らされるのは、この構造の違いに対する戸惑いと併せて「これはどうやって洗ってやるのが望ましいのか」という知識不足もあります。ベビーバスに張られたお湯の前でどうしたら良いのか分からず長女を抱えて右往左往する私。

 これも、女の子だからなのか、赤ちゃんとしては大人しい方ではないかと思います。ずっと寝ています。泣き止まなくて困る、いつまでも抱っこしている、ということがないのが長女です。これが三兄弟のころは各々それ相応に面倒くさかったんですけれども、女の子育成の経験値があるパパ友と話をしていると「最初『は』楽だよ」「女の子を育てるのは、男の子と違って『体力』を使うより『精神力』が削れるよ」というアドバイスとともに「山本さんの娘だから、似るとヤバいね」と笑って言われるあたりに怖さを感じるわけでありますが。

 まだ二か月ちょいですが、顔を視線で追うようになり、また、プーさんメリーで回っている習近平を見て泣き止むようになりました。ありがとう習近平。ベビーカーでのお出かけもするようになる一方、私を見て「あ、ミルクの出ないほうだ」と怪訝な顔をします。あなたの父親なんですけど。三兄弟ではあまり経験しなかった「赤ちゃんのうちから便秘」という洗礼も受け、家内と一緒に頭を悩ませながら対処法を編み出そうとする日々でございます。

 最後になりますが、ブログやFacebook、Instagramで出生記事を書いた際に、当メルマガの読者さんからも多数のおめでとうメッセージを賜りまして、本当にありがとうございました。長女に物心がついたら、こんなに多くの人から出産にあたってお祝いをいただいたのだから、そういう多くの人たちにとって喜ばれることをする人になりなさいという話をするつもりでプリントアウトしておきました。TwitterみたいにBANされて観られなくなると困るからね。

 引き続き、よろしくお願い申し上げます。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.269 韓国を巡って揺れる安全保障問題のあれこれをじっくりと掘り下げつつ、我が家の初めての『女の子』についての報告など
2019年7月31日発行号 目次
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【0a. 序文1】在韓米軍撤退の見込みで揺れまくる東アジア安全保障と米韓同盟の漂流
【0b.序文2】初めての『女の子』が生まれて
【1. インシデント1】韓国ホワイトリスト除外についてのエトセトラ
【2. インシデント2】計画的に企業や団体などを標的とするランサムウェアが増加している件
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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