やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

いわゆる「パパ活」と非モテ成功者の女性への復讐の話について


 先日、こんな記事がネットで出ていて、私の友人が「これは私のことではないか」と連絡をくれました。

パパ活に潜む悪魔のような男

 あー。まあ、確かに彼のような気もしますね。

 読んでいただければ分かります、簡単に要約するならば、非モテが30代後半になり、経済的に成功したけど女性で自分の下半身を奮い立たせることも口説き落とす知性飛ばしもできず、ただ淡々と女性に貢ぎ、しかし女性は若いころから簡単にカネが稼げるようになって、いわゆる幸せな交際では満足できなくなる、と。

 私はパパ活はおろか、家内以外の女性と私的な交流を持つことは一切しませんが、仕事でご一緒する人たちのこともありましてこの界隈についてはある程度の知見を有しています。あまり良いことだとは思わないけど。同様に、女性が入れ込むホスト界隈についても、それ相応のトラブルを身近で相談されて関心を持ってきました。

 おそらくは、ここで書かれた記事の一部は事実なんでしょう。ただ、復讐とまでは言えるかどうか。

 というのも、女性って強いんですよ。幸せをつかむ力も、都合の悪い昔を忘れることも、男が思うほど、愛のない男性からの貢がれと比較して、好きな男性を下に見ることはほとんどない。

 買われた高級バッグもアクセサリー類も、下手をするとそのまま質屋やメルカリに流れるのです。好きではない男性からの貢がれの品であると。以前、クリスマス前後に大量の4℃のアクセサリー類が出品された話が出ていましたが、好きではない男性からの物品はカネに換えて、自分の好きなものを買う原資にするんです。

 関係している大学のコンプライアンスで、そういうパパ活男性から言い寄られて困っている女性の話はだいたい二カ月に一回ぐらい相談がありますが、金銭と引き換えに性的関係を強要してくる男性のあしらいのほうが簡単です。しかし、手も握らず、単に食事をするだけの男性というのは一定の割合おりまして、そっちのほうが実に面倒くさいケースが多いように感じます。

 それは、この記事にあるような「復讐」のようなものである可能性もあるのですが、35歳まで童貞であった私には痛いほどわかるんですけど基本的には「拒否される恐怖」とか、「性行為をしてしまうことで失われる自分」「または日常」のほうが怖ろしいのです。モテないのがデフォルトであるほど、近づいてくる女性が何を求めているのかを考えると安心できなくなります。カネかもしれない、知名度かもしれない、いわゆる健全な男女のお付き合いというのは30代も中盤になってくると存在しないことが分かり切っている分だけ、踏み込めない自分がそこにあるのです。

 恋愛も結婚も、ある程度若いほうが前のめりになって良いというのは間違いない。自分の若さなど、あっという間に劣化するだけでなく、次々と現れるより若くすぐれた同性の出現に脅かされることが大前提である限り、家庭を築いたり、子どもを儲けたりする人生の機微を味わえるのもそこそこ若いうちだけなのは間違いないのです。

 故に、パパ活系のサービスや、その周辺にいる人たちにとって、異性との出会いの意味を味わう間もなくさまざまな事件を起こしてしまうことは少なくありません。それは、取り返しのつかないこともまた往々にしてあり、同時に、いわゆるモテない中年男性が織り成すキモい事柄を、女性の側が金銭との釣り合いの中で呑み込むプロセスそのものを、相談された我々が見てしまうことに他ならないのです。

 少し前ですが、50代前半の男性が、パパ活で巡り合った、頼まれたら断れない感じの女子大学生に結婚を申し込んで、女性が悩んで相談に来たことがありました。話を聞くに、結婚指輪ももらってしまった、地方にある実家に挨拶に行くと言っている、と。

 ところが、男性から話を聞いても、この男女には性的関係は築けていないのです。あくまで、食事を頻繁にし、おカネを渡し、連絡をしあう間柄。ピュアっちゃピュア。さてこれは私のような子持ちのおっさんはどう捌くべきなのでしょうか。

 結論から言えば、そのまま入籍されました。今年、長男さんも生まれました。まあ、パパのほうは、とある上場企業の執行役員氏なわけですが、カネの面で不自由せず、女性の側は幸せに暮らすことができ、両親も納得しているのであれば、第三者である私たちからすれば反対する理由はありません。

 冒頭の記事において、この40代男性が、本当の意味で好きになる女性が現れ、復讐するまでもなくその非モテ中年男を愛し、家庭を築くことができるのであれば、生まれてくるであろうお子さんも含めて幸せな家庭を築く条件は揃います。

 ひょっとしたら、私もそういう「あれは復讐なんじゃないか?」と思われるようなパパ活をやる非モテ独身中年童貞だったかもしれないのです。幸いにして、家内と巡り合うことができて、お互いに愛し合って、4人の子どもを儲けて、今日も「愛してるよ」と言いながら家族で食事をしてますけど、ちょっとした運命の違いで、そうであったかもしれない。

 生物として、私たちはなるだけ子どもを作り次の世代に血を繋ごうとする本能があるのだとするならば、たとえ40代であれ50代であれ、生殖の能力があって、家族を養う経済力があるならば、あとは当人たちの問題なのだと割り切ることが私は正義だと思います。それが、例えば貧困地域の海外から伴侶となる異性と巡り合って結婚して日本で暮らすにあたり家族を呼ぶでもいいし、いろんな人生の形があってもいいんだと思うんですよ。

 だからこそ、パパ活でカネは渡すけどセックスもできない非モテ中年の行動が「復讐」という評価になるならば、私個人の人生を振り返るにものすごーーく重い十字架のようなものに縛られた未婚男性は凄く多いはずです。だって、経済力すらない独身の人は、パパ活さえもできないんですもの。そのまま血を残さず死んで行けという話になるわけでね。

 そのぐらい、男女関係のコンプライアンスで相談を受けるというのは辛い仕事です。

 生きてきた、価値観を揺さぶられるような。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.Vol.327 非モテ成功者にありがちな男女関係の話とか、例のヤフーニュース個人の件とか、深すぎる闇の中にあるLINEの件とか、あれこれ語る回
2021年3月28日発行号 目次
187A8796sm

【0. 序文】いわゆる「パパ活」と非モテ成功者の女性への復讐の話について
【1. インシデント1】ヤフーニュース個人のわたしの全記事が消された件での雑感
【2. インシデント2】簡単には幕を引きそうにないLINE情報漏洩の深すぎる闇
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
【4. インシデント3】最近あったムカついた話(でも見た目は笑っている)

 
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」のご購読はこちらから

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

これからのビジネスは新宗教に学んだほうがいい!(家入一真)
東京丸の内再発見(高城剛)
5年前とは違う国になったと実感する日々(高城剛)
PTAがベルマーク回収を辞められないわけ(小寺信良)
アカデミー賞騒ぎを振り返って〜往年の名優を巻き込んだ「手違い」(ロバート・ハリス)
『「赤毛のアン」で英語づけ』(4) 大切な人への手紙は〝語感〟にこだわろう(茂木健一郎)
今週の動画「切込入身」(甲野善紀)
人生初めての感動の瞬間(光嶋裕介)
夏の帰省に強い味方! かんたん水やりタイマーセット「G216」(小寺信良)
週刊金融日記 第291号【SegWit2xのハードフォークでまた天から金が降ってくるのか、日経平均は1996年以来の高値にトライ他】(藤沢数希)
ポスト・パンデミックのキューバはどこに向かうのか(高城剛)
「温かい食事」だけが人生を変えることができる #養生サバイバル のススメ(若林理砂)
「Kindle Unlimited」日本上陸でなにが起きるのか(西田宗千佳)
リモートワーク時代のエンタメを考える(本田雅一)
自分の「生き方」を職業から独立させるということ(紀里谷和明)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ