
個人的に参政党はたまたま既存政党への不信感をベースとした「自民党や立憲、共産維新などではない、新しい何か」を求める国民有権者の考え方に依拠して風を受けて伸長したものだと考えていて、本来はアンチテーゼの受け皿になるほどのものではないと思っているんですが。
地方選挙はともかく、先般の都議選、参院選においては特に参政党のネットでの評判はロシアからの工作が奏功してきた側面が強いでしょうし、私が記事を書いて、ロシア製ボットファームのアカウントをプラットフォーム事業者と共に大量削除させてからは、参政党を元から応援してきた特定の人たち以外からのヨイショが綺麗に消え失せました。もちろん、参政党が陰謀論オリジンで、反ワクチンからジャンボタニシまで与太話を繰り広げて支持を拡大してきたというのも、いままで政治を担ってきた自由民主党と公明党さんVS左派野党の皆さんという構図にうんざりしてきた有権者に「この構図自体がいやだ」という選択肢を提示したというのが大きいんじゃなないかと思っています。その意味では、参政党にはまともになってほしいし、本当に自民党政治のオルタナティブを志向するならいろいろ脱皮していって希望の持てる政党になればいいとも願っています。
んで、梅村みずほさんと豊田真由子さんの一件が、文春や新潮に報じられ、党運営を巡る女性同士のバトルに発展して耳目を集めました。普段なら「勝手にしろ」と申し上げるべきところですが、いまいろいろと参政党対策もやりつつ「もしも、彼らがまともな政党・政治勢力になっていくのなら」という期待感も込みで情報収集をしている矢先のことだったので、起きた事象とそれにまつわるウォッチャーの皆さんのレポートなども横目で見つつ考えをまとめたいと思っている次第であります。
まず、梅村みずほさんは紛れもなく参政党躍進の功労者です。今年25年4月に行われた日本維新の会さん党内の予備選で敗北したあと、同月に“維新のガバナンス不全”を理由に離党。そして、参院選を控えた6月30日付で参政党に入党したことを発表しました。この梅村さんの入党によって、参政党は所属国会議員数が5人以上と定める政党要件を満たすことで日本記者クラブ主催の討論会にも出席することが可能になるなど、メディアでの参政党の政党としての取り上げが増えて露出することで躍進を支えた形になります。この点では、あのタイミングで維新に残っていたら再選もむつかしかった梅村さんが、参政党の躍進と共にひとつの足がかりを作ったのは功績そのものと言えます。
その点で、恨み節も含めていろいろ文句も言われている梅村さんですが、うまくやったことは事実として認めたほうがいいと思うんですよ。とはいえ、維新さんから離脱する際のすったもんだも政党としての日本維新の会代表予備選にいたるあれこれが原因で、報じられていない変な事情も伝え聞く中で言えば、私としては「梅村みずほさんは政治家としての能力はともかく、政治勢力を率いたり、自分の考えをトップとして実現せしめたりするのにこだわる、かなり野心的な人」という認識を持っています。個人的には、実は一度しかお目にかかっていないのですが、言い方としてはアレですが露骨に「こういうことをしたいので、ぜひ協力してほしい」という非常にストレートな物言いで来られたので、今日初めてお目にかかった私にそういうことを言えてしまう人なんですねという印象を強く持ちました。
また、21年に名古屋出入国在留管理局で死亡してしまったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんについての国会質疑でもそうでしたが、政策通ということもなく、全体的に話題に乗っかっていく風見鶏陣笠的性質の強い人でもあって、その点では参政党というこれといって進めたい政策がハッキリしない政党にとってはもってこいの人材だったとも言えます。社会保障に関する議論は維新さんご在籍時代に一度した限りでは、レクの内容はご理解いただいていたもののその後の政策主張は何だこれという感じでしたのでまあそういう人なのかなと思います。
そこへ、そう遠くない将来の衆議院選挙での候補者ダマ含みで連れてきたのが俺たちの豊田真由子さんでありまして、今回の騒動の当事者でありますが、これがまあ難物であります。こっちはこっちで基本的に仕事ではものすごく感情的な対応を取る人で、現場やロジをやる私どもからすると無能というか有害な感じの人です。落ち着いて喋っているときであればなんかそれっぽい感じのことを仰るわけですが、後から話が変わってきて、もう手配が済んでしまったものに対してそう伝えると激怒して言うことを聞かせようとするので、まあ誰も相手にしません。本当に使える人だ、将来の自由民主党を担う逸材だと思うのであれば、仮に「このハゲーッ」で一時的に叩かれたとしても、掻いた頭を低くして温存することもあったでしょうが、原則として誰も拾いに行かず、そのまま離党になってテレビでの政治評論家に活路を見出そうとしたわけですからこれは厳しいわけです。
ところが、議員経験者で官僚との窓口もできると信じ込んだ神谷宗幣さんが参政党さんのボードメンバー兼政調会長補佐に据えるという、謎抜擢というか人を見る目がないというか妙なムーブをかましたために、当時を知る人たちはみんな椅子から落ちました。いや、さすがにそれはどうなんだと思いましたし、今後、振り回されるであろう参政党さんのロジ担当のことを思うと同情しかありませんが、とにかく党要職にいきなり連れてきてしまったわけです。
当然、組織を牛耳りたいと思っている梅村みずほさんからすると面白くないレベルの話であって、なんか地下に封じ込めるのかと怒る豊田真由子さんもなんか人類を滅ぼそうとして最後は負けた魔王みたいなことを言って騒動を起こしているのも「まあ当然そういうことは発生しますよね」という感じのものです。ですよねー感しか覚えません。どっちも駄目な人なのは周辺の事情からして折り紙つきですが、いろんな経緯の結果、梅村みずほさんが金星を挙げてしまい、明らかに能力に見合わない野心と承認欲求をマキシマムに振り撒いてしまった結果、どういうわけか、梅村みずほさんがこのタイミングで豊田真由子さん追い落としのため、あろうことか党内事情を週刊誌サイドにモロバレの形でタレコミしてしまいました。本人は行けると思ったのかもしれませんが、ある意味で曲がりなりにも党要職に鎮座まします豊田さんに対してゴミのようなネタで中傷させて事実上のクーデターをやらかすというのは前代未聞です。
当然、こちらとしても参政党さんの中にいる人たちやウォッチャーの皆さんとは頻繁に連絡を取り合いつつ面白く参政党さんを見ているわけですけど、さすがにこれは中で働く人たちには同情しかありません。衷心より深くお悔やみ申し上げます。主張している政策は馬鹿の極みだけど政党としてもっとよくしていきたいと思う現場の人たちの気持ちをここまで丁寧に分子レベルまで分解するように踏みつける事案は久しぶりに見ました。やはりインディー政党はこうでなければならないと揶揄したい気持ちもないでもありませんが、どう見てもたいして働いていないボードメンバー兼政調会長補佐に置かれた豊田真由子さんはこんなことしないでもいずれ組織の中核で自ら起爆し大惨事を起こすことは確定した未来だったはずなのです。炉心が制御不能な核分裂を起こす前から仕掛ける必要など、どこにも無かったのです。
梅村さんのこの焦りというのも、突き詰めれば参政党さんの代表選に不出馬も噂される神谷宗幣さんの後釜に座り、伸びやかな新興勢力である参政党さんのトップに座りたいという野望以外の何物でもありません。明らかに能力不相応ですが、いまの参政党なら神谷さんが出ないなら議員経験や功労からしても次の代表は梅村さんで、となったかもしれません。少なくとも、いま議員ですらない豊田さんとバトってまで追い落とす必要すらなかったろうと思います。でも、そういう理知的なムーブができる人ではないから維新さんの代表選予備選の落選でキレて離脱して迷惑を掛けたり、ネットの与太話を信じて国会で質問してしまったり、いろんなことをやらかすわけです。どっち転んでも党としてはろくでもない事態しか起こさない人物なのはみんな分かっていると思いますので、損切をするとしてもこの程度のところでできて良かったというのが正直なところではないでしょうか。
で、蛇足ながら最近参政党さんが党運営でいろいろと行き詰まるなかで政権与党との協議を進めたいという話が出てくるようになってきました。私は個人的に参政党さんの政策主張の核となる反ワクチンほか非科学的かつスピリチュアルでマルチ商法まがいのノウハウを駆使する組織運営に対して嫌悪感があり、また、話の通じない地方議員候補をわざわざ選んできて参政党さん公認でひとりだけ出馬させ、敢えてトップ当選させて営業せしめるような手法は好みではありません。早く潰れて解体されないかなと思う気持ちが95%ですし、その極端な政治主張がマーケティング的に腹立たしいのでどうにかならねえのかなと思うわけですが、ただ、繰り返しになりますが彼らが突いてきた国民有権者の皆さんの政治不信こそは政権与党の落ち度そのものであって、信頼回復のためにどう頑張るのかやっぱり考えていかないといかんと思います。
責任ある与党としてポピュリズムに走ってはいけないという当たり前のことを真顔で議論しなければならないほど、我が国の政治への信頼は失墜してしまっているのだということはよく理解しておかなければならないと思うのです。
中堅政党へと発展していこうとする参政党さんが風に乗り切らず微妙な感じになっているのもこの辺の話含みだと思いますし、なんだかんだ神谷さんも疑心暗鬼になって人間性というか器のおちょこぶりが心配されますが、まあまたそれは別の話として今回の件は面白案件として楽しんでいきたいと思います。
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」
Vol.496 参政党の梅村VS豊田紛争を面白く傍観しつつ、日本でも跋扈する国際的中華詐欺グループや生成AIによるディープフェイクの問題などを濃密に語る回
2025年12月1日発行号 目次

【0. 序文】参政党「梅村みずほVS豊田真由子」紛争勃発が面白すぎる件について
【1. インシデント1】例のカンボジア関係の暗黒中華ニキ方面の話経由から見た日本を舞台にしたマネロン問題
【2. インシデント2】生成AIの作り出す虚構の出来栄えがそろそろ無視できない領域に達しつつあるのはどうしたものですかね
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
【4. インシデント3】岸田文雄政権ぐらいから頑張ってきた外国人不動産所有のデータ管理政策がひとまず着地に
【5. インシデント4】世の中、意外とこんなものなのかもしれない
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