ロバート・ハリスメールマガジン『運命のダイスを転がせ!』Vol.002より
アカデミー賞を受賞した作品を振り返って
みなさんは先日のアカデミー賞の授賞式の模様、テレビで観ましたか?
ぼくとしては、去年観た映画の中で一番気に入っているジョージ・ミラー監督の『マッドマックス 怒りのデスロード』が衣装やプロダクション・デザイン、ヘア&メーキャップや編集や録音などの賞を次々と受賞し、今年観た映画の中でダントツにすごいと思ったアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『レヴェナント 蘇りし者』が主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)と監督賞を受賞したので、個人的に嬉しかったです。
イニャリトゥ監督とは、彼が『バベル』のプロモーションで来日した時に会ってインタビューしました。彼もラジオのDJとしてキャリアをスタートさせたこともあり、話が盛り上がりました。自分は情熱的過ぎる性格で、時として物事に取り憑かれることがあるので困る、と言っていましたが、軽やかなウィットと自嘲的なユーモアのセンスでうまくバランスを取っている人だなと思いました。
<ジョージ・ミラー監督『マッドマックス 怒りのデスロード』>
<アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督『レヴェナント 蘇りし者』>
『レヴェナント 蘇りし者』の凄さは何と言っても、その生々しさと激しさです。これは開拓時代のアメリカの荒野が舞台のドラマですが、ぼくは今まで、インディアンに襲撃される怖さだとか、野生動物に襲われる恐ろしさとか、何としてでも生き抜いて復讐を果たそうとする男の執念とかを、これほどまでに生々しく、激しく見せつけられた作品に遭遇したことはありませんでした。映画が始まってから終わるまで、椅子にしがみつき、画面に釘付けになって物語の中に引き込まれていました。とにかく凄まじい映画です。
ジョージ・ミラーと出会ったのは
あるテレビシリーズの制作現場だった
『マッドマックス 怒りのデスロード』の監督のジョージ・ミラーとは友達で、ぼくは彼の制作会社『ケネディー・ミラー・プロダクションズ』で1年ほど働いたことがあります。
1984年のことです。当時、ケネディー・ミラー社は太平洋戦争で起きたある事件を題材にしたテレビのミニシリーズを制作していて、ぼくはこの制作チームの文化アドヴァイザーとして採用されました。
事件とは太平洋戦争の末期、南方前線で捕虜になった日本兵が、収監されていたオーストラリアのカウラ収容所から大脱走を試み、300人近くの日本兵と数人のオーストラリア人の看守が命を落とした、というもの。ミニシリーズはこの実話を背景に、一人の日本兵と一人のオーストラリア人の看守との友情を描いていく内容です。
監督は二人いて、ひとりは後に『今そこにある危機』や『ボーンコレクター』、『ソルト』などで有名になったフィリップ・ノイスと、もうひとりは後に『ベイブ』で注目を浴びたクリス・ヌーナン。日本人の主役は『愛と平成の色男』でブレイクする前の石田純一。
この作品でぼくは資料の翻訳から日本人の俳優やエキストラの通訳、日本語のシーンの脚本の執筆、撮影現場での監督の演出アドヴァイザー、撮影終了後のポストプロダクションでの編集と英語/日本語の字幕翻訳を務める他、石田純一の戦友役として俳優もやりました。
制作には丸1年を要したんですが、この間、プロデューサー兼制作総指揮のジョージ・ミラーとは毎日のように会い、物語について話し合ったり、脚本や演出の指示を仰いだりしていました。そんな彼との付き合いの中で、3つのシーンが今でも脳裏に焼き付いています。
ひとつ目は……(続きは『運命のダイスを転がせ!』Vol.002にてお読みください)
ロバート・ハリスメールマガジン
『運命のダイスを転がせ!』2016年3月配信スタート
<運命のダイスを転がせ!Vol.002<近況:ジョージ・ミラー監督のもとで働いた時のこと:連載小説『セクシャル・アウトロー』2章「よっちゃん」>
既存のルールに縛られず、職業や社会的地位にとらわれることなく、自由に考え、発想し、行動する人間として生き続けてきたロバート・ハリス。多くのデュアルライフ実践家やノマドワーカーから絶大なる支持を集めています。「人生、楽しんだ者勝ち」を信条にして生きる彼が、愛について、友情について、家族について、旅や映画や本や音楽やスポーツやギャンブルやセックスや食事やファッションやサブカルチャー、運命や宿命や信仰や哲学や生きる上でのスタンスなどについて綴ります。1964年の横浜を舞台にした描きおろし小説も連載スタート!
vol.002 目次
01.近況
02.カフェ・エグザイルス:ジョージ・ミラー監督のもとで働いた時のこと
03.連載小説『セクシャル・アウトロー』:2章「よっちゃん」
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