※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2016年6月24日 Vol.087 <ターニングポイントはどこだ号>より
娘が通っていた小学校で、今年も講演を頼まれた。すでに卒業したのに、ありがたいことである。
これまで多くの小中学校で講演させてもらっているが、たいていは先方からこういう内容で、という指定があることが多い。だが今回は通ってた小学校と言うことで、先生方もよく知ってるし、一緒になって講演の内容を相談しながら決めることができた。去年は小学生のインターネットの利用をテーマに、ゲーム機でのネット利用や文字コミュニケーションの練習方法などについてだったが、今年は主に大人、具体的には保護者のLINE利用についてお話しすることとなった。
2年間PTAと子供会をやっててわかったのは、役員のママたちと一番便利に連絡がやりとりできるのは、メールでも電話でもなく、LINEだということだ。2年前にはLINEは怖いから、スマホ使ってないから、というママも珍しくなかったが、この1〜2年で急速に事情が変わってきた。それだけスマートフォンへの乗り換えが進み、LINEのようなチャットアプリの利用者も増えてきたということである。
ところが多くのママは、ネットでグループチャットするなど、初めての経験のハズだ。TwitterやFacebookは元より、過去にmixiなどのSNSも使ったことがないという方も多い。LINEの設定や使い方など、大丈夫かなと思う部分も少なくない。
今回は講演資料を作る下調べ的なつもりで、ママがLINEを使う時の注意点を2つご紹介したい。
そのアイコン大丈夫?
現在筆者は、PTAや子供会役員のママたちおよそ30人とLINE上で「友達」になっている。自分の顔をアイコンに登録している人はゼロだが、多いのが子供の写真をアイコンにしているケースだ。こういうセンスは、ママならではだろうと思うし、TwitterやFacebookではまず見られない傾向である。メールやメッセージ並みのプライベートな連絡ツールという意識があるのだろう。
実際にママ友とは子供をキーに繋がっている仲間であり、そういった保護者間だけしかLINEを利用しないのであれば、さほど問題ではないかもしれない。だが実際には、たとえば筆者のような外部の講師といった人と連絡のために、LINEで「友達」になっているわけだ。
つまり、一時的な連絡のために「友達」になる相手に、子供の顔という個人情報を提供していることになる。こちらとしても、一時的に連絡するだけのかたの子供の顔というのは、知らなくても全然構わない個人情報なので、見せられる側としても辛いものがある。
自分の顔写真をアイコンに使わないのは、自分の容姿を見せたくないという意識があるのだろう。しかしいくら可愛くても、子供の写真をばらまいているような状況はマズいだろう。
アイコンは、LINEユーザーにとって個人を識別するのに重要なポイントだ。しかしながら花や風景といった汎用的な写真では、相手を間違う可能性がある。間違ったメッセージが送られてくるのは嫌なもので、人間関係がマズくなる可能性もある。
一方で、好きな男性アイドルやタレントの写真を貼られるのも、こっちが困る。著作権云々の前に、ああそういう趣味なんですか、という何アピールかわからない情報を押しつけられる側としては、辛いものがある。
じゃあどんなアイコンがいいかというと、特徴がわかる似顔絵がいいのではないかと思う。アイコンから計り知れる情報が、本人の顔に限定されるからである。似顔絵が作れるサイトはけっこうあるので、探してみるといいだろう。
ゲーム狂なの?
LINEは事業の柱としてゲームをたくさんリリースしており、どれもシンプルかつ短時間で遊べるものが多い。3年ほど前にソーシャルゲームがブームとなったが、今はよほど強力なゲームでなければ、なかなかLINEゲームに勝てない状況が続いている。
もちろんこの手のゲームは、子供達も大好きだ。LINEゲームはLINEのアカウントがないと遊べないので、子供達はママのスマホを借りて熱中することになる。
ママもママ友とおしゃべりするときに子供にうるさくされるのは嫌なので、ついついLINEゲームをさせて間を持たせるということはあるだろう。ゲームで子供を黙らせること自体に批判的な方も居るだろうが、筆者はその辺はある程度臨機応変にやればいいんじゃないかと思っている。
問題はそこではない。LINEでゲームをやると、順位や得点がタイムラインに標示される。ママ友のタイムラインを見ていると、時々ものすごいイキオイでツムツムの最高得点を叩き出している人が居る。これを見て、子供がやってるんだなと想像できる人は少ないんじゃないかと思う。
つまりタイムラインを見ると、本人が狂ったようにゲームやってるように見えるのだ。これはマズいだろう。たとえば職場の人が見たら、こんなにゲームやってる時間があるならもっと仕事がんばれと言われかねないし、ゲーム課金で家計が苦しいのかと思われるのも心外だろう。
タイムラインは公開範囲が自分で決められるのだが、ここの設定を気にしていない人は多いようだ。実質的にLINEのタイムライン機能はそれほど積極的に使われていないので、全員に非公開でも実害はないんじゃないかと思う。
もうひとつの懸念点は、ゲームをやらせている間、フルスペックのスマホを子供の自由にさせていることになるけど、それ大丈夫なんですかね? ということである。スマートフォンはメッセージの通知などが頻繁に行なわれるわけだが、ゲームをさせてるつもりでそういうものが子供に丸見えになって大丈夫だろうか。何もやましいことはないとかそういう問題ではなく、仕事上のやりとりも子供に見せていいのか、そこも考え処である。
たとえばポップアップしたメッセージを消そうと思って「いいね!」的な返信してしまった、といった事故は起こりうる。また、ゲームをやめてホーム画面に戻ったら、LINEもメッセンジャーもメーラーも、はたまたエロサイトも子供は見放題だ。
まだまだ子供にはスマホは使いこなせないと思っているかもしれないが、スマホのインターフェースは子供にでもわかるように作られている。2〜3歳の幼児でも、YouTubeを立ち上げて次々に動画を見るぐらいのことはできるのだ。小学生ぐらいになれば、もっと色々探求したいと思うだろう。
本来ならば、機内モードぐらいの簡単さで「子供モード」みたいなものがあればいいのだろうが、なかなかそうは行かない。サービス側も、親が子供に自分のスマホを渡して使わせるというケースは、まず想定していない。
少なくとも、渡したスマホでちゃんと「ゲームをしているか」ぐらいは、目を離さないでおいたほうがいいだろう。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
2016年6月24日 Vol.087 <ターニングポイントはどこだ号> 目次
01 論壇【西田】
今年のWWDCとE3を俯瞰する
02 余談【小寺】
ママのLINE、大丈夫?
03 対談【小寺】
フリーライターの健康保険サバイバル(2)
04 過去記事【西田】
電子書籍が日本にもたらす「本当の変化」
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。 ご購読・詳細はこちらから!
その他の記事
なぜアップルのユーザーサポートは「絶賛」と「批判」の両極の評価を受けるのか(西田宗千佳) | |
物議を醸す電波法改正、実際のところ(小寺信良) | |
「自信が持てない」あなたへの「行」のススメ(名越康文) | |
ひとりの女性歌手を巡る奇跡(本田雅一) | |
初夏のような沖縄で近づいてきた「転換期」を考える(高城剛) | |
国産カメラメーカーの誕生とその歴史を振り返る(高城剛) | |
幻冬舎、ユーザベース「NewsPicks」に見切られたでござるの巻(やまもといちろう) | |
Adobe Max Japan 2018で「新アプリ」について聞いてみた(西田宗千佳) | |
グアム台風直撃で取り残された日本人に対して政府に何ができるのかという話(やまもといちろう) | |
史上最高値をつける21世紀の農産物(高城剛) | |
ここまで使ってこなくてごめんなさい! 意外なほど実用的だった「TransferJet」(西田宗千佳) | |
クラウドファンディングの「負け戦」と「醍醐味」(西田宗千佳) | |
「iPad Proの存在価値」はPCから測れるのか(西田宗千佳) | |
古舘伊知郎降板『報道ステーション』の意味(やまもといちろう) | |
沖縄の地名に見る「東西南北」の不思議(高城剛) |