一方で楽天koboやソニーリーダーストアといった電子書籍マーケットをいくつか見ているところだが、そのサイトだけでは読みたい本を見つけるのに苦労する。目的の本が最初から決まっているなら速い。検索できるからだ。だが、こんな感じので他のタイプのはないかな、みたいな探し方ができない。中味を覗いて比較しようにもままならない。ストアお勧め書籍情報には、まったく心が動かない。
どうも今の電子書籍マーケットに欠けているのは、「本読み」の店員が手がける目利き的な何かだ。中味を読まずに、出版社から提供されるあらすじ的なものだけでお勧めされてもなぁ。
IT的なレコメンドとしては、たとえばこの本を買った人はこんな本を買ってますといった分析によるレコメンデーション機能も、ある程度の有効性は認める。しかし人は、本に関して単一の嗜好しか持っていないわけではない。必要な知識と娯楽の両方を本から入手している。たとえば僕の場合、著作権の本を買ったあとにSF小説を買い、そのあとカメラ修理の本を買って、さらに妖怪物の伝記を買ったりしているわけで、そんな購入履歴が人の役に立つようには思えない。
だがそれでも、Amazon並みに大量の、そして長い利用歴があれば、何らかの意味のある傾向を導き出せるかもしれない。だが新規参入の事業者にそこまでの蓄積されたデータはないので、すぐにモノになるのは無理だ。その点、AmazonのKindleは、俄然有利なわけである。
一方大手本屋は、電子書籍の台頭を機に、ネットへの進出を図っている。電子書籍のデータも従来同様取次経由で得られるので、展開するのに改めて入手ルートを開拓する必要がないというアドバンテージもある。場合によっては、出版社とダイレクトに協業することも、これまでの経緯から難しい話ではないだろう。
そしてそこで発揮されるべきは、「本読み」店員の目利きだ。ちゃんとしたレビューが載せられるか、テーマ別の特集レコメンドがどれだけできるか、そしてそれが市井の「本読み」の感性にヒットできるか。さらには、あらゆる電子書籍リーダーに対応できる多様なフォーマット対応、これまでの出版社との付き合いの中で生まれた信頼関係をベースにして、何度でもダウンロードできるような権利交渉など、やれることは多い。大手本屋が、ネット上でニッチな専門性と品揃えを兼ね備えたプラットフォームに化ける可能性が出てきている。
その他の記事
|
アジアの安全保障で、いま以上に日本の立場を明確にし、コミットし、宣伝しなければならなくなりました(やまもといちろう) |
|
あたらしいライフスタイルのひとつとして急浮上する「スロマド」(高城剛) |
|
吉野彰さんノーベル化学賞に想う、リチウムイオン電池と現代デジタル製品(本田雅一) |
|
中国発・ソーシャルゲーム業界の崩壊と灼熱(やまもといちろう) |
|
『戦略がすべて』書評〜脱コモディティ人材を生み出す「教育」にビジネスの芽がある(岩崎夏海) |
|
週刊金融日記 第291号【SegWit2xのハードフォークでまた天から金が降ってくるのか、日経平均は1996年以来の高値にトライ他】(藤沢数希) |
|
変化のベクトル、未来のコンパス~MIT石井裕教授インタビュー 後編(小山龍介) |
|
集団的自衛権を考えるための11冊(夜間飛行編集部) |
|
選挙だなあ(やまもといちろう) |
|
2015年買って良かった4つの製品(西田宗千佳) |
|
「あたらしい領域」へ踏み込むときに行き先を迷わないために必要な地図(高城剛) |
|
野党共闘は上手くいったけど、上手くいったからこそ地獄への入り口に(やまもといちろう) |
|
週刊金融日記 第269号 <性犯罪冤罪リスクを定量的に考える、日経平均株価2万円割 他>(藤沢数希) |
|
経営情報グループ『漆黒と灯火』というサロンらしきものを始めることにしました。(やまもといちろう) |
|
インドのバンガロール成長の秘密は「地の利」にあり(高城剛) |










