(続)日本は二等国でいいの?

アーミテージ報告書の件で「kwsk」とのメールを多数戴いたので

周辺国から舐められる可能性

日本が二等国で良いよと日本人がなかば諦め、悲観的な現実を受け入れるのもまた一興ではあるのですが、そうだとすると、アメリカは日米同盟を維持する意欲を失い、日本は貴重な軍事同盟国を失って、文字通り民主陣営の中では安全保障のパートナーがいなくなるという、結構重要な節目に来ているのだとも言えます。もちろん、これがアメリカからのブラフであることも考えられると共に(じゃあなんで国力で乏しいフィリピンとアメリカは同盟を結んでいるのかなど、整合性の取れないアジア政策が色濃く残っている)、より包括的なアジアの安全保障を考える(インド、オーストラリア、ロシアといった関係諸国との関係を強化しながら対米依存を減らしていく)人たちも出てくることでありましょう。ただ、アメリカ以上に、インドやロシアは国力衰退局面を受け入れた日本と組む必要がなくなってしまうのも事実です。

日本が二等国となる事実を受け入れるかどうかはともかく、客観的にも国威の衰退は明らかであるという話になれば、当然のように韓国や中国が領土問題等で日本の主権を脅かす動きを取ってくることは間違いないでしょうし、同様に韓国や中国に進出している日本企業の権益を否定したり略奪したりすることで躊躇なく国益を削りに来る可能性は否定できません。事実、ベトナムでは中国から侵食された件で抗議したその上からさらに外交面で圧力をかけられてしまっており、またフィリピンも長年実効支配されていた無人島を文字通り中国軍のサラミ戦術で占領されて中国領となってしまった経緯があります。これらは、一流国、つまり国際的な責務を負った国に対しては、中国といえどやってこないのは、中露国境問題や、昨今の尖閣諸島問題でも明らかです。フィリピンやベトナムに対してとる態度と、日本やロシアにとる態度は現段階では違うのです。

二等国であることを認めれば、国際的な責務から逃れられ、肩の荷が下りるのかといわれると、そうではなく、むしろ周辺国から舐められて、不必要な領土問題を炊きつけられる可能性が高まるのだ、ということは理解しておいたほうが良いでしょう。

1 2 3
やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

「2分の1成人式」の是非を考える(小寺信良)
身近な日本の街並みが外国資本になっているかもしれない時代(高城剛)
経営情報グループ『漆黒と灯火』というサロンらしきものを始めることにしました。(やまもといちろう)
人は生の瀬戸際までコミュニケーション能力が問われるのだということを心に刻む(やまもといちろう)
都民ファースト大勝利予測と自民党の自滅について深く考える(やまもといちろう)
ついにアメリカがペンス副大統領の大演説で対中対立の道筋がついてしまう(やまもといちろう)
「嫌われJASRAC」が地裁裁判で無事勝利の報(やまもといちろう)
シアトルとアマゾンの関係からうかがい知る21世紀のまちづくりのありかた(高城剛)
国産カメラメーカーの誕生とその歴史を振り返る(高城剛)
同調圧力によって抹殺される日本式システム(高城剛)
「政治メディア」はコンテンツかプラットフォームか(津田大介)
TPPで日本の著作権法はどう変わる?――保護期間延長、非親告罪化、匂いや音の特許まで(津田大介)
アマチュア宇宙ロケット開発レポート in コペンハーゲン<前編>(川端裕人)
虚実が混在する情報の坩堝としてのSNSの行方(やまもといちろう)
なぜ僕は自分の作品が「嫌」になるのか–新作『LAST KNIGHTS / ラスト・ナイツ』近日公開・紀里谷和明が語る作品論(紀里谷和明)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ