若林理砂
@asilliza

自分で自分の体の声を聞く

『冷え取りごはん うるおいごはん』で養生しよう

人体実験でわかった食事の大切さ

——若林さんのメルマガの連載「養生予報」ってものすごく大切というのがわかりますね。ところで若林さんご自身はいまは食事を中心にして養生生活がすっかり身についていらっしゃいますが、若い頃は不養生生活だったと伺っていますが?

若林:そうなの。何も知らなかったから。何かしら調子が悪いんですよ、朝起きられないとか風邪ひきやすいとか色々ありました。でも、自分がやってることがそこまで悪いとは思わなかった。

——養生生活は鍼灸学校で習ったことがきっかけなんですか?

若林:いえいえ、学校は、鍼灸治療の勉強をしてるだけだから、自分で気がつかないかぎり養生の勉強なんてしません。養生は大事って教科書には書いてありますけど、養生法の勉強は国家試験にはいらないからやらないんです。

だから自分で養生を勉強し始めてから、このままじゃマズイなって思ったんです。まず冷たいもの食べるのをやめようって。

——それは何歳頃のことですか?

若林:人体実験しはじめたのは、鍼灸学校2年目くらいだから20とか21くらいですね。まずはアイスやめようから始まって。次は冷蔵庫で水を冷やすのをやめましたね。とりあえず冷たいものを排除しました。これはですね、東洋医学には体を一切冷やさないっていう派閥があるんですよ。温補派といいますが、それを信じてる人たちはコーラを温めて飲むんです。

——中国でビールは冷やさないって聞いたことがありますけど、それですか?

若林:そうそう。だからコーラやビールをあっためはしないけど、私はとりあえず冷たいものはやめようってことで。そうしたら毎年出ていて痒かったしもやけがでなくなったんですよ。冷えやすい体質なのに冷たいものを飲んでいたからなんですね。

——それで効果を実感されてから人体実験を深めていかれたんですか?

若林:はい。それで、ああそうか、食べたり飲んだりすることでやられてしまうことってあるんだなって。で、その後、色々試しましたよね。マクロビも西式健康法もいろいろやってみた結果、季節にあった食材を食べるのが一番大事だなってわかりました。

——東洋医学の文献を探りながら現代の日本にあうようにご自分で工夫されたりしているんですか?

若林:そうですね、その地道なものの集大成ですね。

——ご自分の体調が整ったなって実感されたのは人体実験をやりだしてからどれくらいかかりましたか?

若林:数年かかりましたよ。そんなに簡単には整わないですね。あっちこっち試しながらやりましたからね。マクロビは鍼灸師でやっている人に多いからまずはそこから試しました。その後、できるだけ火を通さない西式をやったりして肉食わないとダメだなってわかりました。

——この本の養生ごはんは、薬膳とはまた違いますよね?

若林:そうですね、薬膳となると生薬をいれるんですよ。薬膳と食養生って違うんです。薬膳は薬になる食材をスープとかに混ぜます。でも、食養生は普通に手に入る食材を使って毎日のごはんでやるものなんです。

だから薬膳の手前ですね。それでもやっぱり季節の変化にともなって体調は崩してしまうことがあるから、たとえば梅雨の時には小豆を炊いて体から湿気をとってみようかなってやる。ツボをおすとかお灸をすえるのも同じことですね。

この本はとっかかりはわかりやすいように書いてありますが、実際は自分の体をちゃんと把握しないと使えない本なんです。すぐに効果がわかるものじゃないですけど、続けていたら確実に効果が出るものなんですよ。

自分の体について詳しくなることと頭を使うことを厭わないことですね。それが一番いいたいこと。体の状態を把握する、体の声をきちんと聞くというのを怠けたら、何をやったって綺麗にも健康にもならないですから。そのための訓練の本ですね、これは。

——よく、葛根湯は風邪の引き始めじゃないと効かないっていいますよね。朝起きて「あれ? もしや」と思っていても「まあ、いいか」と会社にそのままいったら本格的な風邪を引くことになってしまうというようなことがありますが、そういうときの引き始めの感覚を磨くということでしょうか。

若林:そうそう、それです。どこで気がついて対処するか、なんですよ。どんな症状においても同じで、その瞬間を自分で把握できるかです。そこがわかったら悪化させないですみますからね。でもだいたい、悪化させちゃうんだよねー。

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若林理砂
1976年生まれ。鍼灸師・アシル治療室院長。高校卒業後に、鍼灸免許を取得し、エステサロンの併設鍼灸院で、技術を磨く。早稲田大学第二文学部卒。2004年、アシル治療室開院。現在3ヵ月先まで予約が埋まるほどの人気を集めている。

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