城繁幸
@joshigeyuki

メルマガ『サラリーマン・キャリアナビ』より

人事制度で解く 「織田信長の天下布武」

織田成果主義が崩壊したワケ

ただ、彼のしがらみの無さは、家中に静かな動揺をもたらした。そして彼自身、想像もしなかったような形でそれは顕在化してしまう。そう、本能寺の変だ。

「このままいけば織田家の天下統一は間違いない。でも、仕事が無くなったら、戦自慢の俺たちはどうなるの?」という疑問は、光秀でなくとも抱いただろう。

「いやあおまえたち、これまでよく頑張ってくれたね。長年の年功に応じて所領を分配するから、これからはゆっくり茶でも飲んで暮らしなさい」なんてことを信長が絶対に言わないであろうことは、家臣ならみんなよく分かっていたはず。

こうして、中途採用エリートの出世頭である明智光秀の謀反につながるわけだ。

そして、もう一つ、彼の成果主義には負の影響があった。彼の死後、織田家は他に例をみないほどのスピードで崩壊する。一応、(あまり出来のよろしくない)子供をそれぞれ担いで派閥争いという形を取ってはいたが、その後の家臣の争いは完全な覇権争いだ。事実、その争いを制した羽柴秀吉は、名実ともに天下人としての道を歩むことになり、かつて担いだ信長の嫡孫は田舎にポイ捨てされてしまった。

織田家は、年功序列という価値観が全否定された稀有な組織だ。だから信長という最強のストッパーが外れた後、誰も彼の「年功の残り」を担ぐ人がいなかったのだろう。そういう意味では、本能寺で信長が死んだ瞬間に、織田家も滅んだと言えるかもしれない。

余談だが、筆者はユニクロの柳井社長を見るたび、なぜか信長を思い出してしまう。

1 2 3 4
城繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。

その他の記事

花粉症に効く漢方薬と食養生(若林理砂)
東京15区裏問題、つばさの党選挙妨害事件をどう判断するか(やまもといちろう)
喜怒哀楽を取り戻す意味(岩崎夏海)
ヒトの進化と食事の関係(高城剛)
今村文昭さんに聞く「査読」をめぐる問題・前編(川端裕人)
週刊金融日記 第302号【コインチェックで人類史上最高額の盗難事件が起こり顧客資産凍結、暗号通貨は冬の時代へ他】(藤沢数希)
時代の雰囲気として自ら線が引けてくれば……(甲野善紀)
上手な夢の諦め方(岩崎夏海)
フレディー・マーキュリー生誕の地で南の島々の音楽と身体性の関係を考える(高城剛)
うざい店員への対応法(天野ひろゆき)
なぜ今、「データジャーナリズム」なのか?――オープンデータ時代におけるジャーナリズムの役割(津田大介)
誰がiPodを殺したのか(西田宗千佳)
「犯罪者を許さない社会」っておかしいんじゃないの?(家入一真)
世界遺産登録を望まない、現代の隠れキリシタンたち(高城剛)
本気でスゴイ!手書きアプリ2つをご紹介(西田宗千佳)
城繁幸のメールマガジン
「『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回配信(第2第4金曜日配信予定)

ページのトップへ